魔法使いが迫害される世界で賢者の弟子になります!
第3話『別れ』
「おはようございます……」
「やけに元気が無いな。どうした?」
「いや、今日の特訓が心配で」
「大丈夫、お主なら出来る!」
「んな無責任な……」
「ほら行くぞー!」
「何であんなにテンション高いんだ……?」
  それから俺は木刀を持たされた。
  気のせいか昨日のより重たい。
「何か重くありません?」
「気のせいだろう。さ、まずは剣を振りながら省略詠唱だ」
「灯火となれ、ふんっ、トーチフレア、ふっ!」
  俺は言われた通り、剣を振りながら省略詠唱する。
  しかし、魔法は発動しない。
「省略詠唱は魔力を動かせと言っただろ?  身体強化ばっかりに気を取られてはいかんぞー」
「これ結構集中力がいるな……」
「当たり前、だが身体強化は無意識レベルで使えるようになっては欲しいがな」
  身体強化を無意識で?  そんなん無理だろ……
「とりあえず反復練習あるのみ!」
「ふぅ……集中して……」
「灯火となれっ!  トーチフレアっ!」
  するとポッと目の前に小さな火が現れた。
  しかし、剣の風圧ですぐに消えてしまった。
「消えちゃった」
「さすがだな。とりあえず慣れるまでやってみなさい」
「はい!」
  俺はそれからひたすら練習を続けた。
  もう剣を振りながらでも人の顔位の火は出せるようになった。
  身体強化もそこまで気張らなくても維持できるようになった。
  今日だけで俺めっちゃ成長したんじゃね?
「よし、じぁ次は無詠唱だな。これはそもそも出来るやつが少ない。魔法使いが沢山いた事でもそうおらんかった」
「そんなに難しいのか……」
「ああ、ただ魔力をイメージで変換するだけなんだがこのイメージが大変でな。明確なイメージを持たないと成功しない」
「イメージ……やってみます!」
  俺は魔力を外に出し、それが燃えるイメージを持つ。
  しかし、何も起こらない。
  もっと明確なイメージか……
  俺は学校の林間学校で見たキャンプファイヤーを思い出した。
  確か燃えやすい新聞紙とかでまず火をつけて、それから薪に引火させてたな……
  引火……そうか!
  俺は魔力をガスと見立ててそれを火を付けるイメージを持つ。
  すると、ボッ!  とかなり大きい炎が現れた。
「出来た!」
「おおっ!?  まさか無詠唱魔法をこんな早く習得するとは……」
「なんかいつもより威力高い気がするな」
「無詠唱魔法の利点だよ。詠唱魔法や省略詠唱には変換ロスみたいな物が存在する。しかし、無詠唱魔法はそれがない。だから魔力が多ければ多い程より高威力の魔法が撃てるのだ」
「なるほど……」
  つまり、無詠唱魔法の威力は魔力量で自由に調整出来るのか。
  これは一番使える技術だな。
「まぁ魔法名くらいは言うとちょうど良いがな」
「フレア!」
  俺はトーチフレアより高位の魔法をイメージする。
  思い浮かべるのは火炎放射器……
  すると、俺の目の前に魔法陣が現れて、それから炎が吹き出た。吹き出た炎は目の前の木を焼く。
「おおっ!  これ凄いや!」
「お主は無詠唱魔法の方が得意だったのか……」
「イメージ力には自信があるんでね!」
  俺は地球でずっと魔法が使えたらどうしようかと想像していた。
  ずっとそんな事考えてたから友達いなかったんだなぁ……
  おっと、悲しくなってきた。
「よし、ならひたすら実戦練習だな!」
「はい!」
  それからずっと魔法を使いながら剣を振り続けた。
  もはや何も考えなくても魔力を思い通りに操作出来るようになった。
――1年後――
  この世界に来てもう一年が経った。
  一年も経つとこの世界にも慣れてくるもので結界の中はもう俺の庭だ。
  師匠との生活にも慣れ、もう祖母と孫のように接している。
  師匠はもう家族同然の存在だ。
  かなり長命だがもう700歳を軽く越えているので師匠がいなくなったら、と考えて不安になる時もある。
  だが、俺はいつか独り立ちしようと思う。
  ずっと師匠にお世話になる訳にはいけないからだ。
  そんなことを考えながら俺は森の奥に来ていた。
  それはあの俺を追っかけ回した因縁の相手と戦うためだ。
  因縁の相手って?  アイツだよ、そうグレイベアー。
「どこにいるんだ、グレイベアー?」
  俺が森をどんどん移動していくと、大勢の人の足音や金属の音、話し声が聞こえてきた。
  その音はどんどん近づいて来るのでとりあえず草むらに隠れる。
「いいか、最後の魔法使いがここらにいるはずだ!  絶対に見つけ出すのだ!」
  隊長らしい人が大声で仲間にそう言った。
  最後の魔法使いって絶対師匠の事だ!
  早く知らせないと!
  俺は気づかれないように急いで家に戻った。
  俺は勢いよくドアを開ける。
「師匠!  魔法狩りがすぐそこまで!」
「分かってる。ダイゴ、お主は逃げなさい」
「でも師匠……!」
「ここはすぐにバレる。お主は魔法使いだとはバレていない。だからお主だけは裏から逃げなさい」
「俺も師匠と一緒に戦います!」
「馬鹿おっしゃい!!」
「……アイツらはね、数々の魔法使いを殺してきたんだよ?  まだ魔法を使い始めて一ヶ月のあなたに敵う訳がない」
「だったら……師匠も一緒に逃げましょうよ!」
「私はここに残る。ここからは離れたくないんでね。ダイゴ、最後に言わせておくれ。お主と過ごしたこの一ヶ月、とても楽しかった。ありがとう」
「師匠……」
「見つけたぞ、賢者アンドレ!  さぁ、捕らえよ!」
  とうとう騎士達が家の目の前にまで来てしまった。
  俺には……何も出来ないのか……?
「さぁ、行きなさい!」
「くっ!」
  俺は結局どうする事も出来ず、裏口から森に逃げ込んだ。
  俺は何も出来ない事が悔しくて仕方がない。
  師匠は魔法と剣で応戦するが数に押されてかなり劣勢だ。
  すると、隊長が出て来て、師匠に斬り掛かる。
  師匠は剣で受け止めようとするが師匠の剣が一瞬で折れ、師匠は頭から斬られてしまう。
  その後、師匠は次々と魔法を放つが何故か全て無効化されてしまう。
「ふっはっはっはっ!  賢者でもこの力の前では無力か。哀れだな、アンドレ。――――」
  そう言って隊長は師匠に何かの魔法を使った。
  呪文も魔法名も聞き取れなかったが、師匠がその場に倒れ込んだ。
  
  意識はありそうだけど身動きが取れていない?
  師匠は状態異常耐性がかなり高いって言ってたけど何故だ?
「この者を捕らえよ!  さっさと殺したいところだがこいつには聞かなければならない事があるんでな」
  俺は師匠の元に駆け寄ろうと身を乗り出したらこちらを振り向いた騎士の一人と目が合ってしまう。
  まずいっ!  このままじゃせっかく師匠が逃がしてくれたのに台無しになってしまう!
  俺は急いでそこから逃げようと走り出す。
「待て。ここで何をしている」
  すると、目の前に目が合った騎士が立っていた。
  こいつ、一瞬でここまで?
「ちょ、ちょっと散歩を……」
「そんな嘘が通じると思うのか?  お前はあの魔法使いの隠し子か何かか?」
「……弟子だ」
「弟子か。ならかかってこい。俺達が憎いだろう?  ほら、来いよ」
  頭の中では戦う意味も勝ち目も無いことは分かっていた。
  それでも俺はこの気持ちをどうにかしたくて剣を抜いた。
「うおおおおぉ!!」
  俺は身体強化で力を上げ、一瞬で騎士との距離を詰める。
  そして低い体勢からの斬り上げ。
  騎士はそれをいとも簡単に受け止める。
「くっ!  フレア!」
  俺は騎士に向かって火魔法を発動する。
  俺の目の前に魔法陣が現れ、炎が勢い良く吹き出す。
  この至近距離だ、絶対に当たる!
「無詠唱魔法か……」
  騎士は魔法が発動する直前に横に飛び、炎を避ける。
  今のも避けられるのか……強い、強すぎる……!
「今度はこっちの番だな。【紫電】」
  騎士はいつの間にか俺の背後に移動していた。
  その直後、電撃が俺を襲う。
「何が……起きた……?」
「スキル【紫電】だ。勝負あったな、賢者の弟子よ」
「くそぉ……こんなところで……!」
  俺は立ち上がろうとするが体が全く言う事を聞かない。
  くそぉ!  動けよ!  こんな所で負けてらんねぇんだよ!
「今回は見逃す。アンドレ=ウェルナードを捕まえろとしか言われてないからな」
「くそぉ!  師匠……」
「じぁな。賢者の弟子よ」
  そう言って騎士はその場から去っていった。
  俺は朦朧とする意識の中、奴の背中を睨む。
「絶対に、強くなってやる……!」
  俺はそう決意して意識を手放すのであった。
「大丈夫?  酷い怪我だけど……」
  気がつくと目の前に見知らぬ女性がいた。
  女性は心配そうにこちらを見ている。
「うっ……!」
  俺は起き上がろうとするが痛みでそれが出来ない。
  ダメだ、全く動けない……
「無茶しちゃダメよ!  えっと……我が体に満ちる聖なる魔力よ、今彼の者の傷を癒せ、ヒール」
  女性が呪文を唱えると淡い光が俺を包む。
  すると、傷の痛みが少し和らぐ。
  痛みが少しマシになったので俺は起き上がる。
「ありがとう……君は?」
「私はミリア。あなたは?」
「俺はダイゴ」
「ダイゴ、どうしてこんな所で倒れてたの?」
「……」
  俺は何も言わず、目を逸らす。
「理由は後で聞くとして、とりあえず日も暮れるし私の家においで」
  それから俺はミリアに肩を貸してもらいながら森を出て、街に来た。
  そして、ミリアの家に連れて行って貰えたのだが……
「でっけぇー……」
  ミリアの家は豪邸だった。
  それも街で一番大きな家だった。
  木造建築でかなり昔のものらしく木の色とかが歴史を感じさせる趣のある家だ。
  見たところこの街では唯一の三階建てでこの街の町長か何かの役職にあることは見てわかる。
「とりあえずここで寝てて。医者を呼んでくるから」
  俺はベッドと机があるだけの小さめの部屋に案内された。
  机には見たこともない花が花瓶に挿してあった。
  しばらくベッドに横たわっていると部屋にミリアと白衣を着た男性が入ってきた。
  恐らく医者的な人だろう。
「お嬢様、この方ですね?」
「えぇ、そうよ」
  その後ミリアが連れてきた医者が俺に回復魔法を掛けてくれて傷はほぼほぼ治った。
「ありがとう。あなたは自分の仕事に戻っていいわ」
「わかりました。では」
  医者が出ていくとミリアが俺の手を強く握った。
「あなた冒険者?」
「違うけど……」
「冒険者になる予定は?」
「まぁ一応……」
  師匠が冒険者になるのが良いって前に言ってたし……
  それに、冒険者だったら自由に世界を移動出来るらしいから連れていかれた師匠を助けに行ける。
「じぁ私を仲間にして!」
「へ?」
「やけに元気が無いな。どうした?」
「いや、今日の特訓が心配で」
「大丈夫、お主なら出来る!」
「んな無責任な……」
「ほら行くぞー!」
「何であんなにテンション高いんだ……?」
  それから俺は木刀を持たされた。
  気のせいか昨日のより重たい。
「何か重くありません?」
「気のせいだろう。さ、まずは剣を振りながら省略詠唱だ」
「灯火となれ、ふんっ、トーチフレア、ふっ!」
  俺は言われた通り、剣を振りながら省略詠唱する。
  しかし、魔法は発動しない。
「省略詠唱は魔力を動かせと言っただろ?  身体強化ばっかりに気を取られてはいかんぞー」
「これ結構集中力がいるな……」
「当たり前、だが身体強化は無意識レベルで使えるようになっては欲しいがな」
  身体強化を無意識で?  そんなん無理だろ……
「とりあえず反復練習あるのみ!」
「ふぅ……集中して……」
「灯火となれっ!  トーチフレアっ!」
  するとポッと目の前に小さな火が現れた。
  しかし、剣の風圧ですぐに消えてしまった。
「消えちゃった」
「さすがだな。とりあえず慣れるまでやってみなさい」
「はい!」
  俺はそれからひたすら練習を続けた。
  もう剣を振りながらでも人の顔位の火は出せるようになった。
  身体強化もそこまで気張らなくても維持できるようになった。
  今日だけで俺めっちゃ成長したんじゃね?
「よし、じぁ次は無詠唱だな。これはそもそも出来るやつが少ない。魔法使いが沢山いた事でもそうおらんかった」
「そんなに難しいのか……」
「ああ、ただ魔力をイメージで変換するだけなんだがこのイメージが大変でな。明確なイメージを持たないと成功しない」
「イメージ……やってみます!」
  俺は魔力を外に出し、それが燃えるイメージを持つ。
  しかし、何も起こらない。
  もっと明確なイメージか……
  俺は学校の林間学校で見たキャンプファイヤーを思い出した。
  確か燃えやすい新聞紙とかでまず火をつけて、それから薪に引火させてたな……
  引火……そうか!
  俺は魔力をガスと見立ててそれを火を付けるイメージを持つ。
  すると、ボッ!  とかなり大きい炎が現れた。
「出来た!」
「おおっ!?  まさか無詠唱魔法をこんな早く習得するとは……」
「なんかいつもより威力高い気がするな」
「無詠唱魔法の利点だよ。詠唱魔法や省略詠唱には変換ロスみたいな物が存在する。しかし、無詠唱魔法はそれがない。だから魔力が多ければ多い程より高威力の魔法が撃てるのだ」
「なるほど……」
  つまり、無詠唱魔法の威力は魔力量で自由に調整出来るのか。
  これは一番使える技術だな。
「まぁ魔法名くらいは言うとちょうど良いがな」
「フレア!」
  俺はトーチフレアより高位の魔法をイメージする。
  思い浮かべるのは火炎放射器……
  すると、俺の目の前に魔法陣が現れて、それから炎が吹き出た。吹き出た炎は目の前の木を焼く。
「おおっ!  これ凄いや!」
「お主は無詠唱魔法の方が得意だったのか……」
「イメージ力には自信があるんでね!」
  俺は地球でずっと魔法が使えたらどうしようかと想像していた。
  ずっとそんな事考えてたから友達いなかったんだなぁ……
  おっと、悲しくなってきた。
「よし、ならひたすら実戦練習だな!」
「はい!」
  それからずっと魔法を使いながら剣を振り続けた。
  もはや何も考えなくても魔力を思い通りに操作出来るようになった。
――1年後――
  この世界に来てもう一年が経った。
  一年も経つとこの世界にも慣れてくるもので結界の中はもう俺の庭だ。
  師匠との生活にも慣れ、もう祖母と孫のように接している。
  師匠はもう家族同然の存在だ。
  かなり長命だがもう700歳を軽く越えているので師匠がいなくなったら、と考えて不安になる時もある。
  だが、俺はいつか独り立ちしようと思う。
  ずっと師匠にお世話になる訳にはいけないからだ。
  そんなことを考えながら俺は森の奥に来ていた。
  それはあの俺を追っかけ回した因縁の相手と戦うためだ。
  因縁の相手って?  アイツだよ、そうグレイベアー。
「どこにいるんだ、グレイベアー?」
  俺が森をどんどん移動していくと、大勢の人の足音や金属の音、話し声が聞こえてきた。
  その音はどんどん近づいて来るのでとりあえず草むらに隠れる。
「いいか、最後の魔法使いがここらにいるはずだ!  絶対に見つけ出すのだ!」
  隊長らしい人が大声で仲間にそう言った。
  最後の魔法使いって絶対師匠の事だ!
  早く知らせないと!
  俺は気づかれないように急いで家に戻った。
  俺は勢いよくドアを開ける。
「師匠!  魔法狩りがすぐそこまで!」
「分かってる。ダイゴ、お主は逃げなさい」
「でも師匠……!」
「ここはすぐにバレる。お主は魔法使いだとはバレていない。だからお主だけは裏から逃げなさい」
「俺も師匠と一緒に戦います!」
「馬鹿おっしゃい!!」
「……アイツらはね、数々の魔法使いを殺してきたんだよ?  まだ魔法を使い始めて一ヶ月のあなたに敵う訳がない」
「だったら……師匠も一緒に逃げましょうよ!」
「私はここに残る。ここからは離れたくないんでね。ダイゴ、最後に言わせておくれ。お主と過ごしたこの一ヶ月、とても楽しかった。ありがとう」
「師匠……」
「見つけたぞ、賢者アンドレ!  さぁ、捕らえよ!」
  とうとう騎士達が家の目の前にまで来てしまった。
  俺には……何も出来ないのか……?
「さぁ、行きなさい!」
「くっ!」
  俺は結局どうする事も出来ず、裏口から森に逃げ込んだ。
  俺は何も出来ない事が悔しくて仕方がない。
  師匠は魔法と剣で応戦するが数に押されてかなり劣勢だ。
  すると、隊長が出て来て、師匠に斬り掛かる。
  師匠は剣で受け止めようとするが師匠の剣が一瞬で折れ、師匠は頭から斬られてしまう。
  その後、師匠は次々と魔法を放つが何故か全て無効化されてしまう。
「ふっはっはっはっ!  賢者でもこの力の前では無力か。哀れだな、アンドレ。――――」
  そう言って隊長は師匠に何かの魔法を使った。
  呪文も魔法名も聞き取れなかったが、師匠がその場に倒れ込んだ。
  
  意識はありそうだけど身動きが取れていない?
  師匠は状態異常耐性がかなり高いって言ってたけど何故だ?
「この者を捕らえよ!  さっさと殺したいところだがこいつには聞かなければならない事があるんでな」
  俺は師匠の元に駆け寄ろうと身を乗り出したらこちらを振り向いた騎士の一人と目が合ってしまう。
  まずいっ!  このままじゃせっかく師匠が逃がしてくれたのに台無しになってしまう!
  俺は急いでそこから逃げようと走り出す。
「待て。ここで何をしている」
  すると、目の前に目が合った騎士が立っていた。
  こいつ、一瞬でここまで?
「ちょ、ちょっと散歩を……」
「そんな嘘が通じると思うのか?  お前はあの魔法使いの隠し子か何かか?」
「……弟子だ」
「弟子か。ならかかってこい。俺達が憎いだろう?  ほら、来いよ」
  頭の中では戦う意味も勝ち目も無いことは分かっていた。
  それでも俺はこの気持ちをどうにかしたくて剣を抜いた。
「うおおおおぉ!!」
  俺は身体強化で力を上げ、一瞬で騎士との距離を詰める。
  そして低い体勢からの斬り上げ。
  騎士はそれをいとも簡単に受け止める。
「くっ!  フレア!」
  俺は騎士に向かって火魔法を発動する。
  俺の目の前に魔法陣が現れ、炎が勢い良く吹き出す。
  この至近距離だ、絶対に当たる!
「無詠唱魔法か……」
  騎士は魔法が発動する直前に横に飛び、炎を避ける。
  今のも避けられるのか……強い、強すぎる……!
「今度はこっちの番だな。【紫電】」
  騎士はいつの間にか俺の背後に移動していた。
  その直後、電撃が俺を襲う。
「何が……起きた……?」
「スキル【紫電】だ。勝負あったな、賢者の弟子よ」
「くそぉ……こんなところで……!」
  俺は立ち上がろうとするが体が全く言う事を聞かない。
  くそぉ!  動けよ!  こんな所で負けてらんねぇんだよ!
「今回は見逃す。アンドレ=ウェルナードを捕まえろとしか言われてないからな」
「くそぉ!  師匠……」
「じぁな。賢者の弟子よ」
  そう言って騎士はその場から去っていった。
  俺は朦朧とする意識の中、奴の背中を睨む。
「絶対に、強くなってやる……!」
  俺はそう決意して意識を手放すのであった。
「大丈夫?  酷い怪我だけど……」
  気がつくと目の前に見知らぬ女性がいた。
  女性は心配そうにこちらを見ている。
「うっ……!」
  俺は起き上がろうとするが痛みでそれが出来ない。
  ダメだ、全く動けない……
「無茶しちゃダメよ!  えっと……我が体に満ちる聖なる魔力よ、今彼の者の傷を癒せ、ヒール」
  女性が呪文を唱えると淡い光が俺を包む。
  すると、傷の痛みが少し和らぐ。
  痛みが少しマシになったので俺は起き上がる。
「ありがとう……君は?」
「私はミリア。あなたは?」
「俺はダイゴ」
「ダイゴ、どうしてこんな所で倒れてたの?」
「……」
  俺は何も言わず、目を逸らす。
「理由は後で聞くとして、とりあえず日も暮れるし私の家においで」
  それから俺はミリアに肩を貸してもらいながら森を出て、街に来た。
  そして、ミリアの家に連れて行って貰えたのだが……
「でっけぇー……」
  ミリアの家は豪邸だった。
  それも街で一番大きな家だった。
  木造建築でかなり昔のものらしく木の色とかが歴史を感じさせる趣のある家だ。
  見たところこの街では唯一の三階建てでこの街の町長か何かの役職にあることは見てわかる。
「とりあえずここで寝てて。医者を呼んでくるから」
  俺はベッドと机があるだけの小さめの部屋に案内された。
  机には見たこともない花が花瓶に挿してあった。
  しばらくベッドに横たわっていると部屋にミリアと白衣を着た男性が入ってきた。
  恐らく医者的な人だろう。
「お嬢様、この方ですね?」
「えぇ、そうよ」
  その後ミリアが連れてきた医者が俺に回復魔法を掛けてくれて傷はほぼほぼ治った。
「ありがとう。あなたは自分の仕事に戻っていいわ」
「わかりました。では」
  医者が出ていくとミリアが俺の手を強く握った。
「あなた冒険者?」
「違うけど……」
「冒険者になる予定は?」
「まぁ一応……」
  師匠が冒険者になるのが良いって前に言ってたし……
  それに、冒険者だったら自由に世界を移動出来るらしいから連れていかれた師匠を助けに行ける。
「じぁ私を仲間にして!」
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