気分は下剋上 chocolate&cigarette

こうやまみか

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「本当にそうですね。見事にお米の粒の大きさまでが揃っていますから……将に言い得て妙ですね。
 受験用に強制的に読まされた文章だったと思いますけれど、身長制限が有った部隊も有ったらしくて戦地に行きたくない『非国民』は背が伸びないようにと内心で思っていたらしいですよ」
 祐樹も幸せそうな感じで箸を活発に動かしている。
 こういう他愛のない話しをずっと続けたいなと思う。お肉を出す店の独特の喧噪とか場の雰囲気も良かったのだろうが。 
「そうなのか?それは知らなかったな。
 ただ、台湾の国会議事堂みたいな場所の警護兵は半ば示威めいた見世物のようなモノらしくて、身長と顔で選ばれていると聞いたことがある」
 アメリカ時代に台湾の患者さんと交わしただけの――そしてそれほど英語が流暢というわけでもなかった方だったので――間違っている可能性は有ったが、正確性を求めてはいないだろう、祐樹も。
「そうなのですか?そう言えば、日本の自衛隊でも国賓を天皇陛下が迎える儀式の時が有るらしいですが、その時には身長が確か170センチ以上でなるべく精悍そうな顔という基準で部隊から選別されるらしいですよ。
 格別に特別な時ですから、通常の訓練を免除されて儀式の予行演習ばかりをするそうです。国賓に失礼が有ったら大変です。いわば国の面子が掛かっている感じですね。
 そう言えば……高校の卒業式の時も予行演習が有りましたが、三回も同じことをさせられて本当にうんざりした思い出が有ります。あんなのぶっつけ本番で良いのではないかと……」
 祐樹はむしろ楽しそうに話しているのも嬉しい。確かに祐樹はそういうのを嫌いそうな性格なのは確かだった。
「そうなのか?私の高校は二回だったな。ただ、卒業生代表とかに選ばれてしまったので挨拶をしないといけないのが苦痛だった。ほら、私は政治家のような熱の溢れる『演説』が苦手なので、先生に『もっと心を込めて読んで欲しい。内容は完璧なのにそんなに淡々と話されたら保護者や他の先生、そして生徒たちに全然感動を与えられない』とか言われて困った思い出が有るな」
 祐樹は唇を男らしい感じに緩めて穏やかな笑みを浮かべてくれていて、それだけであの思いをして良かったなと。
「卒業生代表ですか……?それは凄いですね。ただ、貴方の『熱弁』が聞けなかったのが残念ですね。
 私の場合は――」
 祐樹も代表を務めたのだろうか?
 すると。

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