気分は下剋上 chocolate&cigarette

こうやまみか

7

 そう理性では割り切った積もりでも身体が言うことを聞いてくれない。
 祐樹に触れられた時にはすんなりと開く花園の門も硬く閉ざされたままだった。そこに押し当てられた、しかも位置も異なっていて、力任せに突いてくるというおぞましさと恐怖、そして嘔吐感すら覚えて額に冷や汗が伝っている。
 痛みの余りに「祐樹!」と口に出してしまった。助けを求めていたのか、それとも魂の叫びなのかは自分でも判別出来ない。
「この淫売が!普通は泣いて喜ぶモノだろうっ!それともオレをバカにしているのかっ!」
 「淫売」という単語は意味的に知識として知ってはいた。ただ、その言葉には滴るような悪意がむき出しにされていた。何だか身体中がその毒に晒されて被ばくしたような気分だった。身体中から嫌な感じの汗の雫が切り裂かれた衣服を濡らしていく。
「不感症なのか……。淫売のクセに……。それで良く田中のヤツが我慢出来るな!!それともアレかっ!!嫌々付き合って出世でも狙っているのかっ!田中は
 もっとイイ声を上げて、そしてオレを受け入れろっ!それが出来ないなら普通じゃないっ!!」
 「不感症」も当然知っていた。そして、祐樹は本当に自分の身体をそう思っているのかもしれないと思うと目の前が真っ暗になった。
 汗の雫が急激に冷えていく。力ずくで押し当てられた熱くて気持ちの悪い塊を、祐樹にしか開かない場所が頑なに拒んでいる。
「この、淫売のくせに、ご主人様の言うことが聞けないのか?それとも、不感症だから、田中のヤツがこんなに赤いキスマークを身体中につけて、そしてお高くとまったアンタを女王様のように扱って、そして良い思いでもしてるのかっ!?」
 硬く閉じられた門の辺り――祐樹なら即座に見つける入口ではなく――その少し上をガンガンと突き上げられる。肉体的にも精神的にも激痛が走って目の前が真紅の血の色に変わった。
 不感症――なのだろうか?そして、祐樹はそれでも愛してくれていたのだろうか。そう思うと氷点下の海に突き落とされたような気がして身体中が痛い、冷たさを通り越して。
 堅く閉じた場所にも容赦なく――しかも位置が異なっているので当たり前なのだが――気持ちの悪い熱いモノが打ち付けられていて。
 「不感症」という言葉が精神まで氷点下の海に沈みこんでいく。
 心と身体の痛さの余り、モルヒネを求める患者のように聞こえないように歯を食いしばって祐樹の名前を呼び続けることしか出来ない。
 すると。

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