神話回帰の現代幻想

空の星

プロローグ -3-


「ふっ!」
「はぁっ!」

 雫釈はインドラの娘と名乗る少女に1番使い易い無銘のパルチザンで突き、少女はインドラの槍で逸らして石突で雫釈の顎をかち上げようとする。
それを雫釈は半歩下がって躱し、左足を主軸に回し蹴りで少女の左脇腹を蹴って右に飛ばし、一回転してパルチザンを投擲することで追撃。
少女は地面に着いたら器用に立ち上がり、飛んできたパルチザンを穂先でたたき落とす。
それを雫釈は石突を右手で掴んでパルチザンを回収し、左手に移して少女の腕を突こうと狙いを定めて1突き。
少女はすぐさまインドラの槍の穂先をパルチザンの穂先にぶつける。
その余波により、大地に亀裂が入り、両者の後方の地面が迫り上がる。

 この間、僅か0.3秒。

 槍とパルチザンの穂先が鬩ぎ合う中、雫釈も少女も、魔力が昂り始めている。


 風が強く吹いた。


 それが合図となり、両者の昂った魔力が爆発。辺り一帯は陥没して大きなクレーターが出来上がり、その中央では誰がどう見ても視認出来ない速さで槍とパルチザンが激しくぶつかり合い、火花が散る。

「雷よ!!!!」
「龍爆!!!!」

少女は身に纏う雷を放出し、雫釈は黄昏の如き蒼い波動を放出。


 ……この時にインドラは自分が最近性交して産まれた娘と約2700年前に出来た既知の友がぶつかり合いをしている事に気づき、慌てて飛び出した。

 インドラが飛び出した頃、世界中はこの莫大な魔力同士の衝突に驚愕した。
無論、昨日の夕方から意気消沈・・・・・・・・・・・している雫釈の幼馴染・・・らもこれには慌てたりした。


 あれから小1時間程経ち、少女が鬩ぎ合っているパルチザンを搦手で基線から逸らして、前屈みとなった雫釈の顔面に左手で雷拳を見舞う。
雫釈は逸らされた時に離して手ぶらとなった右手にバルムンクを召喚して峰で雷拳を抑える。

「っ!?」
「らぁっ!!!!」

 雫釈はパルチザンを地面に突き刺して手放し、その手で少女の左手首を掴んで雫釈の後方に投げ飛ばす。
少女は雫釈のそんな膂力に驚愕していたため、上手く受身を取れずに地面に叩き付けられる。

「グッ…………ブラフマーストラ!!!!」

少女は目から収束した高密度の雷をゼロ距離で雫釈に放った。
大爆発と煙により視界が悪くなる。

 これまでに費やした時間、1.2秒しか経っていない。

 少女はやってしまったという面持ちで顔色を悪くする。
しかし、それ以上に驚愕が勝ってしまった。
破壊力故に遠距離攻撃用として扱われていた絶技を受けたにも関わらず、軽度の火傷・・・・・以外は至って無傷な雫釈が未だに己の左手首を掴んだままなのだ。

「…………あん……た……は…………何が目的……………………なの……よっ!」

 殆ど無呼吸状態で動いていたからか、息絶え絶えな状態で何とか捻り出せた一言。
その一言を聞いた雫釈は疑念を抱きつつ返答した。

「俺の目的はテメェら・・・・の計画を阻止することだ。17年前にあの時まで秘匿され続けていた力が露見され、一般人が手に入れる事が可能となった。それの阻止が出来なかった。英雄として……争いの種を燃やせなくて屈辱的だ。だがそれは第1段階。第2段階である地球と異星の接続を阻止して死者の増殖をさせない。」
「はっ、嘘だね。(ヘルヘル情報屋の話によるとヘルの右腕であるあんたがここにいる訳は知らないけど)……ここから逆転してアジトを聞き出す!」

息が大分整った少女は啖呵切って掴まれていた左手首を解放させて10メートル程距離をとる。

情報屋ヘルヘルから確かな情報……この娘がヘルの右腕であるという情報を得てるんだ。開き直った方が身のためだ、ぜ!!!!」
「それは此方のセリフ、だぁ!!!!」

両者は半光速の速さで突っ込む。

少女は槍の穂先を雫釈の心臓一点目掛けて突きを放ち、雫釈はバルムンクを両手で振り下ろした。
 両者が三度衝突する直前に間に入るよう落雷が生じ、1人の存在に止められた。

インドラである。

 インドラがヴァジュラで両者の攻撃を止めたのである。

「なんで殺り合ってんのか…………説明願おうか、お二人さんよォ。」

しかもかなりご立腹の御様子。

「「うっ……………はい」」

有無をも言わさない圧力に少女と雫釈は渋々頷いた。

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