神話回帰の現代幻想

空の星

プロローグ -2-





 目が覚めたら赤ん坊。それも、オッサンに抱かれていた。
俺はびっくりして焦ったが、身体はいっぴとたりとも動かなかった。
いや、俺という精神がこの赤ん坊の肉体に繋がってない。そんな感じがする。
だからか、俺は傍観することにした・・・・・・・・・
 あれから数十年。この肉体の持ち主が俺の先祖?に当たるジークフリートだと分かった。
 ジークフリートが邪龍ファフニルを討伐するために歩む。
途中に菩提樹の葉が背中に付いている事をとるように強く念じた。何故なのかは分からないが、そうしないと俺が消えてしまう・・・・・・・・と感じ、念じた。
願いは伝わり、ジークフリートはファフニルと死闘を繰り広げた末、全身・・に血を浴びたため不死となった。
 そこから、領地を国からもらい、伴侶を得て子を産み、その一生を終えた。



と、思えば今度はシグルドという赤ん坊になっていた。
 そこから、王子としての嗜みを付けたり、ファフニルという小人を討伐して心臓を喰らい叡智と強靭な肉体を手に入れ、そこからさらに成長して試練を課された。
 ブリュンヒルデとの甘々な暮らしを見て、ある国の王妃の策に嵌り、ブリュンヒルデの事を思い出さないまま子を産み、悲しき幸せのもと人生を終えた。



 三度赤ん坊として目が覚めた。
 そこでもう、確信した。
 俺は先祖の原点を見ている。精神と肉体が乖離していようがいまいが、俺は経験を得ている。
どうやら俺は先祖返りの洗礼を受けているのだろう。
今回でおそらく最後、アキレウスの経験をして、終わるのだろう。
そう思い、見に任せた。


 だが、今回は違った。


 俺は中から・・・アキレウスを見るのだろうと思っていたのだが、今回は俺がアキレウス・・・・・・・として生き遂げないとならなくなった。
 俺の師であるケイローンに様々な事を教えて貰い、父のようなものを感じた。
ケイローンは信用に足る人物なので俺の秘密、先祖返りを今受けていることや、元幼馴染・・・・について、どうすれば良かったか、聞きに聞きまくった。
その後はアキレウスとして生涯を遂げた。



はずだった。



 アキレウスの死因は唯一不死性の宿ってない踵を矢で穿たれたことで不死性を剥奪され、戦闘の末に死んだ。
俺も同じ目に合う。そう思っていたのだが、矢が踵を穿てず弾かれたのだ。
 何故?………………あぁ、邪龍の血による不死が効いているのか。 

 え、不味くね?

 だって、アキレウスの不死性は左踵以外はたとえどんな存在であろうと傷付けられず、左踵を破壊?切断?しないと不死性は解けない。
そこに、邪龍ファフニルの血を全身に浴びた事で、並大抵の攻撃は血を浴びなかったところを除いて通らない不死性の鎧で全身を覆われていればどうなる? 
答えは、踵も攻撃を無効化してしまう……不死者となった。

 だがそれがどうした?神話の出来事が本当のことだとして、それがたった一人の先祖返りによって改変されたら未来はどうなる?それは場合によっては俺が消えてしまう。ならばすることは1つ、死を偽造する。
 俺がここで死んだという嘘な事実を突きつける。

 具足の踵部を壊し、そこに敵の血を塗り、慣性の法則により自速で自滅したように見せる。

 するとどうでしょう?踵を射た間者は俺に近づいて生死の確認をした後、徐ろに走り去った。
「アキレウス討ち取ったりー!!」
と言いながら。
 数分後に間者に連れてこられた連中に身包みを剥がされて火葬された。
 その隙に炎から出て誰もいない地に身を潜めた。
師が作ってくれたパルチザンは渋々諦めて、身形が整ったら旅に出ることにした。
 身形を整える時に、美丈丈だった姿が本来の俺の姿になっていたため驚いた。

 旅に出たら、インドやウェールズ、ケルトなどを周り、北欧までやってきた。
 ケルトにいた時から裏組織について見つけて面白半分に突っ込み、その組織の全貌が明らかになった時から完全に敵対した。
その組織の本部が北欧……ロシアにあることまで突き止めて来たのだ。
本部を突き止めるまでに敵対してから約3000年もかかるとは思わなかった。

 ん?3000年間?それは彼の英雄王ギルガメッシュの戯れで飲まされた不老の霊薬により生きながらえた。

 北欧にあるその組織…………邪龍ファフニールは俺が北欧まで来たのを知ったら、やたらと俺の足止めをしてきた。
 それを退けながら進む。辿り着くまでに1週間かかり、その1週間の間にインドラも動き出しているとか聞いた。
本部に着いた頃には邪龍の魔術師達は儀式に取り掛かっていた。
俺はそれを不発に終わらせるために急いだ。
 しかし、邪龍のボス……ヘルの妨害により、ギリシャに跳ばされてしまい阻止は出来なかった。


 ヘルの……邪龍ファフニールの狙いは死者の増殖。
しかし、地球上だけでは足りない。ならば異星異世界から連れてくればいい。
だが、此方側地球の者達が無抵抗なのも面白味がない。
だから、地球と異星を繋げる前に地球人を改造しよう。
ある程度熟したら異星と地球を繋いで戦争。
そしたら死者も増殖する。


 俺はその計画を頓挫させるために奔走したのに出来なかった。
英雄として人々を争いから守り抜くことが出来なかった。
それにより、地球上がファンタジーな力に熱狂し、社会が変わった。
あぁ、そうか。俺自身が成し遂げきれなかったからあんな生活になったのか。
 恐らく最近俺という子が産まれたはず。俺があの神隠しの日から1ヶ月経つまでは日本に近づけないだろう。
ま、それまでは邪龍を攻め続けるしかないか。

 それから17年間も攻め続けたが、その17年間で本部までたどり着いたのだがもぬけの殻で、唯一居たのは雷を身に纏う一人の少女。
17年間調べていて分かったヘルの右腕だと分かり、居場所を聞くために挑み、冒頭の雷を身に纏う一人の少女がインドラの娘だと名乗る少女と殺し合っているのだ。

…………この時、両者は勘違いをしていた。
雫釈は少女が邪龍ファフニールの間者だと思っていた時、少女も雫釈が邪龍の間者だと思っていた。

実はこの2人、似たり寄ったりの状況である。邪龍の策にまんまと嵌ったのだ。

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