話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

死人狩りの惑星

ノベルバユーザー297273

死人狩りの惑星

地球人類が宇宙に資源と土地を開発しようと馬鹿なまねをしでかしてから、千年あまりたったころ、この死人惑星(しびとわくせい)は、犯罪者の流刑地となった。

死人惑星は人に恐れられながらも、死した人々の希望の地でもあった。
伝説は、長い年月の間にゆがめられ、
本来の惑星の性質を変えられていった。

シュラーはひとり、砂山の山頂に立っていた。
「サスビ人が通っていく」
「では、死人達はしばらくは近寄らぬな」
シュラーの横から鎖で繋がれた、黒い渦が応えた。
「そうだな。だが、もっと厄介な者が来るぞ」
シュラーが、水晶のような目を砂山の下の黒い点に送る。
黒い人の形が見える。
「ソリを引きずっている。ソリの中身は死者か」
「やれ、厄介者が来たか。クククッ」
「……楽しそうだな」
シュラーの声が低くなる。
水晶色の瞳に白い髪。白に近い肌と、整った顔。体は女性。
古代帝国の顔立ちの、特長だ。
何時の時代のものかは分からないが、遺跡の崩れかけた石像に、よく似ている。
「こちらに気がついた。仕方がない、相手をしてやるか」
シュラーは砂山に座ると、待った。
紫色の空がピンク色になるころ、人影とソリが砂山の麓に来た。
ひと息つくと、シュラーのいる、山頂を登って来る。
「やあ、凄いな。空がピンク色になるのは、初めて見るよ。地球じゃ青だからな」
シュラーが男を見る。
「ソリの中身は、死者か」
「…………ああ、そうだ。蘇りの惑星に来れば生き返ると聞いて、全財産はたいて来た」
「蘇りの惑星では無い。死人狩の惑星だ。今なら、まだ間に合う。死者を連れて帰れ」
男は声を荒げて言った。
「出来ん! やっとここまで来たんだ! ルビーを蘇らせるんだ! 帰るものか!」
「後悔するぞ。辛い気持ちをさせたくない。帰るんだ」
「NO!」
シュラーと男はにらみ合った。
「ルビーを蘇らせて、ドームで一緒に暮らす。それが望みだ。……最後の望みだ」
男の目から涙が流れた。
「……ドームとは、地球人が造った、あの醜悪な人の住める環境の所だな。
ドームに帰れ。もともと犯罪者が収容される所だがな。どんな目に遭うか、覚悟はしておけ。……それよりも厄介な死者の起き上がり……ルジアと言うが。そいつに、そこの死者が汚染される前にドームに入り、地球に帰れ」
「ダメだ! ルビーを蘇らせられるんだろう? シュラー! お前なら出来ると聞いたんだ! ルビーは私の娘なんだ! 私の生きがいだったんだ! もう家族はルビーだけなんだ! 助けてくれ…………カザに取りつかれ、ルジアとなった者は、永遠に生きられるのだろう?」
男は涙を流す。
シュラーは、ヤレヤレと言うように首を振り、ため息をついた。
「誰がそんなでたらめを……」
シュラーに緊張が走る。
「サビス人の群れが途切れた! 来るぞ! 男、お前も遺跡の中に入れ! 少しはましだ!」
言うと、シュラーは後ろの遺跡に向かって走り出した。
言われた男は、訳が分からないという顔をして、周囲を見ている。
シュラーは男とソリを引っ張った。

遺跡の中に入ると、シュラーはすぐさま、遺跡の外をゆだんなく見る。
「おいっ、いったい何なんだ!」
「お前は何を聞いていた! カザが襲って来る時だ! 生きている者も容赦なく汚染されるぞ! そこの死者もな」
いまいましそうに、シュラーは死者を見た。
男は死者をかばって、シュラーをにらむ。

チッとシュラーが舌を鳴らす。
見ると、あちらこちらから、カザが遺跡を目指してやって来る。
動きも普通の人間のようだ。
「おお、あれが蘇った人間か!」
「馬鹿を言うな! 人間が蘇る訳があるか! あれはカザに汚染されている囚人だ!」
シュラーは鎖に繋がれた黒い影に声をかける。
「ラグン、行くぞ」
「あの程度の数、一瞬で片づけてやる」
砂山を登り、遺跡に向かってくる、約三百体にシュラーが、鎖を向ける。
「ラグン、行け!」
ラグンの影が死神の姿になり、カマを一閃した。
三百体のカザが、ドサドサドサッと倒れる。
すると倒れた死人(しびと)の体から、灰色に銀が混じったような、煙に近い物が出てきた。
「あ……あれは何だ」
「死者を魂のかわりに動かしている物だ。我々は、ルジアと呼んでいる」
「あれが蘇りの力なのか」
遺跡を出ようとする男をシュラーは制した。
が、男はソリを砂山から落とした。
「あっ、何をする!」
「さあっ、ルビーを蘇らせてくれ!」
滞積していたカザが、死者を目指して吸い込まれていく。
「ラグン!」
ラグン(死神)に狩らせようとするシュラーを男が止める。 
「ラグン、構わず行け!」
シュラーは鎖を限界まで伸ばした。
男は鎖を伸ばすまいとした。
二人でもみ合う。
「ラグン!」
【娘を蘇らせたいなら、鎖を手放せ】
ラグンの声が、邪悪に響く。
男は鎖のもとを見る。
シュラーの腰の頑丈そうな金属のベルトに、鎖は繋がっている。
【鎖は鍵で開ける。シュラーの首に掛かっている】
「ラグンめ!」
男はシュラーの首に掛かっている鍵に手をかける。
「止めろ! 操られるな! 死神を解き放つな!」
男は聞かず、力づくで鍵をもぎ取る。
【そうだ! 娘のためだ! 鍵を解け!】
「やめろーーーーーー!!」
シュラーは鍵を渡すまいと男ともつれ合った。足が取られ、シュラーが倒れる。鍵を男に取られ、腰に繋がれた鎖に男が手を伸ばす。シュラーは、負けまいとしたが、一瞬、力で男に負けた。
ラグンは気味の悪い笑い声を四方に響かせ、自由になった喜びと共に去って行った。
「ルビー! ああ、神よ!」
男は蘇った娘のもとへ、かけていく。
シュラーは、起き上がりながら絶望に満ちた悪態をつく。
「馬鹿め」

ムクッとルビーと呼ばれる娘が起き上がった。
「ああルビー! 神様、ありがとう御座います、ありがとう御座います」
ルビーは12、3歳に見えた。
「パパ?」
「ルビー、そうだよ、パパだよ、良かった、良かった」
男は娘を涙を流して、抱きしめる。
「もう、大丈夫だ。これからはパパとこの惑星に住もう」
シュラーはその間に遺跡に入り、一振りの剣を持って来た。
男は娘の視線を追って、ハッとしてシュラーを見、娘を背にかばった。
「案ずるな。この剣では娘を殺せない。我が身を守る剣だ」
シュラーの瞳は、男を睨んでいるが、何もしようとしない。
死神がいなければ、カザに汚染された
死者の魂を解放出来ない。
「お前も、気をつけるんだな。カザは生きている者にも取りつき魂を汚染する。汚染されたら、もう、人では無い。天国には行けない」
男は笑った。
「天国に行けないことなど、娘と居られれば良い。永遠に生きるのさ」
シュラーは、黙って男に背を向けた。

       ※

シュラーはサビス人の群れにまぎれ込んだ。
カザは、何故かサビス人に寄りつかない。
寄り付くどころか、逃げる。
サビス人が、何者なのか全く分かっていない。
人によく似ているが、目はひとつだ。
言葉があるのかも分からない。
少なくともシュラーは、言葉らしきものを聞いたことがない。
サビス人同士が話している所も見たことがない。
とにかく彼らは、群れをなして歩くだけだ。
食事をとるのか、水を飲むのかも分からない。
ただ、カザを寄せ付けないと言うことだけが分かっている。
シュラーは、逃げた死神を補充しなければならなかった。
その為には、特別な遺跡にいかなければならない。
シュラーは溜め息をついた。
男をもっと警戒するべきだった。
サビスが、いつでも逃げるチャンスを狙っていたのは、分かっていたのに。
「情けない」
シュラーは、独りごちた。
シュラーは頭を振った。何を後悔しても、意味はない。
頭を上げると、前を見た。
自分の失態は、自分で取り返すのだ。


       ※

何日何夜、歩き続けただろうか。
シュラーはサビス人の群れと共に移動した。
食事は、砂に隠れている、小さな動き回る植物を捕獲し、その実を食べた。
栄養も水分も取れる。旅人には便利な歩く植物だ。
甘酸っぱいので、疲れもとれる。
名前は、聞いたことがない。
ただ、歩く植物と呼ばれている。

しかし、とシュラーは思った。
サビス人とは謎が多い。
飲まず食わずで、歩き続けている。
休む様子もない。
カザはサビス人の存在自体を疎んでいるようだ。近づきもしない。

ひとつだけ、サビス人と行動を共にして、気づいたことがある。
弱い光が降り注ぐこの惑星の、昼間を選んで歩いているらしい。

サビス人と行動を共にしなければ、シュラーの目指す遺跡の中の遺跡、ガランチュアには、5日間ほど歩けばつくが、死神のいない今、カザに襲われずにガランチュアに行くには、サビス人と共に移動するしかない。
おかげで、30日は歩いている。
さすがのシュラーもフラフラだ。
だが、あと少しでガランチュアに着く。
そこには、あの堅物がいると思うと、シュラーは頭も痛くなった。

        ※

ガランチュアが見えてきた。
シュラーは疲れで霞む目で、確認した。
天に届きそうな、ほとんど円錐に近い塔。白い牙のようだ。しかし、古代にどうやって造ったのか、精霊や天使、死神、花や木などが(中には何か分からない物も)彫刻されている。
そこまで行くには、サビス人の群れと離れなければならない。
その間が問題だ。
カザが何処からやって来るか分からない。
寝不足で今にも眠りそうな頭を何とか働かせ、覚悟を決めて、サビス人の群れから離れた。

フラフラの足で、一歩一歩、砂の山を登っていく。
息が切れる。足が重い。もう、倒れてしまいたかった。
いや、駄目だ。私は…………だ。負けるわけにはいかない。私は……誰だ?
私は、シュラーだ。カザに汚染される魂を助けるために、存在する。
だが、なんだ? 記憶の奥底のさらに底にいる何かは。
私は…………だ。私は………。私は…………。
岩に足がかかったとき、よろめいた。
その時、何かがシュラーを支え、抱き抱えた。
誰だ! シュラーは剣を抜こうとしたが、その手を押さえられ、声が聞こえた。
「無様だな。シュラー」
シュラーは、その言葉にカッときた。
これは、兄の声だ。
一番、こんな姿を見せたくない相手だ。
何とか自分で立とうとしたが、何処かで安心してもいた。
そのせいか、兄の腕のなかで、眠り込んでしまった。

何日、眠り込んでいたのか、シュラーはベッドの中で思った。
まだ頭も体も起きていない。
特に体が、いうことをきかない。
30日以上、休みなく歩いていたのだ、無理もない。
だが、早く死神を捕まえなければ。

何とか起きると、立とうとし、くずおれてしまった。
立とうとしても、立てない。
なんてことだ。
シュラーは、初めてのことに途方に暮れた。
音を聞きつけたのか、部屋の外から足音が聞こえる。
「シュラー、目覚めたか。情けないことだな。歩くこともできぬか」
悔しいが、何も言えなかった。
「仕方がない。せめて食事を取れ」
と言うと、兄、ルランはシュラーを抱いて部屋を出た。
見るとテーブルに食事が置いてある。
ルランは、シュラーを椅子に座らせた。

「どうした。食べろ。警戒しなくても、それは私が作ったものではない。
世話係のスーが作ったものだ」
スー。囚人だ。
ある時、囚人達を入れるドームから逃げてきた。
冤罪ということだが、本当かどうかは分からない。
だが、良い娘だ。
働き者で、料理も上手い。
それに、運が良い。
シュラーは食事に手をつけた。

兄の顔を食事をしながら見る。
黒髪に肌も色がある。茶色の肌だ。
シュラーは髪も白く、肌も白い。
兄妹なのに、何故こうも違うのだろう。
こんなこと、今まで思ってもみなかった。
私は……誰だ?
唐突に思った。
突如、ガランチュアの鐘が鳴った。
シュラーは、ハッとした。
カザが現れると、鳴る鐘だ。
兄、ルランが立ち上がった。

「死人狩りの惑星」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く