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忍者はダメ巫女をお守りする

ノベルバユーザー297273

忍者はダメ巫女をお守りする

サクラは、山に囲まれた隠れ里に住んでいた。
巫女として、修行を積み、立派な巫女になっているはずだった。十七歳になれば。
しかし、天照大神を祀る咲良神社を次ぐはずの巫女サクラは、落ちこぼれであった。

この隠れ里は、巫女を多数輩出し生計を立ててきた里である。
その巫女の頂点に立つはずのサクラは
里で一番の落ちこぼれであった。
巫女長老衆は、非常に困っていた。
頭を抱えるどころか、頭を外して揉みくちゃにしたいほど困っていた。
そこで長老衆は、山から飛び降りる気持ちで、サクラを里の外へ出し、実践で修行をさせることに決めた。
サクラを長老衆の住む屋敷に呼び出した。
呼び出されたサクラは、何を言われるのかとビクビクしていた。
巫女装束を着て、長老衆の集まった板張りの部屋へ、楚楚と入ったサクラは
、同じく巫女装束を着て、ずらっと並ぶ、総勢二十人の長老衆に迎えられ、どん底にいる気分でいた。
このまま死んでしまいたい。

長老衆の長が代表して立った。
サクラはカメのように首を引っ込めてしまいたかった。
いっそカメになりたかった。
「サクラ」
「はは、はい!」
声が裏返る。
「結論が出ました。貴方には里の外で
実践修行をして頂きます」
「さ、里の外で!?」
サクラは顔を上げた。真っ青になっている。
長老衆の長は、盛大に溜め息をはいた。
「私達もそのようなことをしたくはありません。ですが、貴方の底に眠っているはずの、能力を引き出すためには、いささか手荒な修行が必要であると長老衆で判断致しました」
サクラは目の前が真っ暗になった。
生まれてくる場所を、いえ、生物を間違えた。カメに生まれるべきだったと思った。
「サクラ、もちろん貴方ひとりでは、行かせません。超、超、超優秀な忍びを二人つけます」
「忍びを……」
「須佐、迦楼羅、ここへ」
何処にいたのか、スッと音もなく姿を現す。
「須佐(すさ)、ここにおります」
「迦楼羅(かるら)、参りました」
サクラの後ろに控える。
サクラは二人を振り返り見て、ホッとする。
「須佐、迦楼羅」
須佐は青年で、涼やかな面の美丈夫。
迦楼羅は若い女性で、なかなかの美人で色っぽい。
二人の忍びは、サクラが子供のころから、側にいて、頼りがいがある。

隠れ里には、戦闘と巫女守りのための忍びがいた。
邪悪なものと闘う即戦力として、いつの昔からかいて、隠れ里を護っている。

隠れ里は結界に護られていて、呼ばれなければ入れない。
衛星だろうが、隠れ里は見つけられない。
神仏に守られた里なのだ。
長老衆の長は、まだ比較的、若い。
五十代くらいである。

長はサクラに言う。
「外に出ている間は、東京の愛子の所に住むことに決めてある。愛子の手伝いをしなさい」
愛子とは、隠れ里出身の巫女であり、名声を得ている。
「それから、せっかく外に出るのだから、学校へ行きなさい。以上です」
サクラは学校と聞いて、ワクワクした。
隠れ里にいる限り、学校に行けるチャンスは無いのだ。
サクラがウキウキしていると、長から
気を引き締めなさい! と雷が落ちた。

     ※


サクラは隠れ里を出てから人に驚いていた。
人の着ている物に、いちいち驚き、初めて乗る最寄りの寂れた電車に驚き、電車に乗れば、揺れに酔った。
須佐が、酔い止めにウイスキーを舌で舐めさせた。
サクラは何処の寂れた町でも、人が多いと驚いていた。
須佐と迦楼羅は内心、このまま目的地の東京にでたら、サクラが失神してしまうのではないかと心配だった。
新幹線で文字通り、失神しそうだった。

初めての東京に、サクラは驚いていた。何もかもが隠れ里とは違う。
どうすれば良いのか、何ひとつ分からない。
須佐や迦楼羅に頼りっぱなしだ。
そんな自分を情けないと思った。
そんなサクラに須佐は、仕方がありませんよ、と慰める。
迦楼羅も、私も隠れ里から初めて出た時は、サクラ様と同じでしたよ、と慰めた。
「迦楼羅も!?」
「もちろんですとも」
「そうか、迦楼羅も。でも迦楼羅は慣れたのよね! よし、私も頑張る!」
意気揚々として、駅の改札を出ようとして、警報音と共に、ブロックされた。
サクラはパニックになったが、須佐が落ち着いて優しくフォローした。
「サクラ様、ルイカのカードをこちらに当てて下さい」
「あわわ、そうでしたね、よっと」
ピッと鳴り、通れた。
「ああ、良かった~」
改札を通ると、サクラ~と手を振って呼ぶハデな女性がいる。
須佐がそっと、愛子様ですと言う。
写真では知っていたが、写真は巫女装束だった。
目の前の愛子は、ど派手だったのでサクラは呆然とした。
まあ、サクラから見てのことだが。
実際は、普通に少しハデさを付け足したくらいだった。
「サクラちゃんね、よろしくね~。疲れたでしょ、喫茶店で休む? それともお腹空いたかな? とにかく、どっか入ろう? 私もお腹が空いちゃった」

 
そんなこんなで、ファミリーレストランに入った。
サクラはハンバーグセットを頼み、愛子はステーキを頼んだ。
須佐は豚の生姜焼き、迦楼羅はサラダとヨーグルトを頼んだ。
須佐がドリンクバーをサクラのために用意しようとしたが、愛子にサクラにやらせなさい、と言われた。
「ホントにすぐ、お世話しようとして、執事じゃないんだから。これからサクラは、この世界で生きていくのよ。出来ることはサクラにやらせる。
迦楼羅もよ」
心配そうな須佐と迦楼羅に、サクラは大丈夫! 私も大人だし、と胸を張った。


愛子は車を運転して(横からサクラがこれは何? と連発して、事故を起こしそうになった)
新宿の愛子の住むマンションに、何とか無事に着いた。
5階にエレベーターで上がる時、サクラが悲鳴を上げた。
何だか、酷く疲れた愛子は、自分の部屋を開けて、三人を中に招いた。
「はぁ、ま、その辺に座って、これから話があるから」
サクラは豪華な部屋に驚き、須佐が勧めたソファーに腰掛けた。
愛子がジュースとコーヒーをテーブルに置き、自分も座った。
一口、コーヒーを飲むと、愛子は話を始めた。
「隠れ里の巫女長老衆の長に、聞いていると思うけど、明後日からサクラには、学校に行ってもらうわ。手続きはもう済ませてあるから。あと、サクラの部屋は、この部屋の向かい側ね。迦楼羅もサクラと同居。須佐はサクラの右隣の部屋。色々と揃えてすぐ住めるようになっているから。足りない物があるなら、自分で揃えてね。以上、質問ある?」
「あの……」とサクラが遠慮がちに切りだす。
愛子は、ん? と目を向ける。
「私、長に実践で修行をするように言われたのですが、愛子さんのお手伝いをしながら……」
「ああ、私の巫女業ね。んー、それは、あとでね。サクラがこっちの生活に慣れた頃にお願いするわ。だから、まず学校に慣れてね」
サクラは、それもそうかと思った。
内心、愛子は、除霊中に大騒ぎされてもね。凄い落ちこぼれだと言うし。長の頼みだから、引き受けたけどこんな浮き世離れした子じゃ、危ないし、やってらんない、と思っていた。

サクラの登校日になった。
近くの高校で歩きだったが、須佐も迦楼羅も着いていくというので、サクラはホッとしていた。
制服を着て、カバンを持つ。
保護者として愛子もついていく。
サクラは、よしっと気合いを入れた。

高校へ到着。
男性担任にクラスに案内をされるサクラを須佐も迦楼羅も心配げに見送った。

ざわつくクラスにサクラは不安になった。
私、どこか変なのかしら?
担任が静かに! と生徒たちを叱る。
「転入生を紹介する。静かにしなさい。さあ、天羽サクラさんだ。仲良くしてやってくれ」
「天羽サクラです! よろしくお願いします!」
「よし、元気が良いな。席は窓側の一番後ろだ。みんな、天羽くんは、東京は初めてだそうだ。面倒を見てやってくれ」
サクラは指定された席に座った。
相変わらず、生徒たちはざわついている。
「じゃあな。クラス委員長、天羽を頼んだ」
と言うと、担任は行ってしまった。
「ねぇ、天羽さん前は何処にいたの?
どこ出身?」
前の席の女子が聞いてくる。
「えっ、しゅっ出身?」
それは、愛子さんとの打ち合わせをしていなかった。
隠れ里は言えないし、困った。
「えーと、か、関東」
「関東のどこ?」
隣の席の男子が言う。
「か、関東の、山の中」
「山の中ってどこ?」
周りがうるさくなりだした。
「え~と」
サクラは慌てた。
ど、どうしよう。
そこに数学の先生が来た。
「何を騒いでいる! 授業を始めるぞ! そこ、席に着け!」
ちぇーっとか、は~い、とか言いながら、みんな授業に入る。
サクラは、助かった~~と思った。
そして、とりあえず長野県って言っておくことにした。

何とか学校生活を乗りきり放課後。
何故か知り合いが巫女だと言ってしまったサクラは、よけいに注目を集めるはめになってしまった。
すると、怪談話大会になっていった。
その中に、廃墟と言う言葉が出てきて、サクラは背筋がザワッとした。
まずい、この話し…………。
どんどん、寒気がひどくなる。
「あ、あの」とサクラが話を止めようとしたとき、引き戸がスパーンと開いた。
「サクラ様!」
須佐がツカツカと入ってくると、サクラの体を、パンパンパンと叩いた。
とたん、寒気がなくなった。
「須佐、ありがとう」
教室内に残っていたみんなが、唖然として見ている。
その中に、もうひとり女子がガタガタと震えている。
須佐が動こうとするのをサクラが止めて、サクラが叩いた。
パンパンパン。
「あれ?」
パンパンパン。
「えっ、あれ?」
「サクラ様」と言うと須佐が、その女子に失礼と断って体をパンパンパンと叩いた。
「あっ、取れた」
女の子が言った。
ありがとう御座いますと女の子が須佐に礼を言う。
「いいえ」と須佐が言うと、周りの、特に女子達が、えーっ、すごーい、今のなにー? あなたサクラのなにー?
と、質問攻めになった。
須佐は、私はサクラ様の付き人です、と言うと、忍びらしく人の間をスルッと抜け、サクラを連れて教室をでた。
あとから、キャーッとか、すげぇーとかの渦が残った。
「何が凄いのだろう?」とサクラは思った。
須佐はGパンにジャケットだし、変な格好もしてないし。

「いけませんよ、サクラ様。あのように、幽霊がよってくるような真似は」
サクラが須佐に反発する。
「そんなこと言ったって、付き合いだってあるし、あのくらい私だって…………祓えると思ったんだもん。でも、相手が意外と強烈で」
「少しも強烈な相手ではありませんでした」
須佐は、あれ以上が来なければ、と心の中で付け足した。
サクラはブツブツと何か文句を言っていた。


「そう言えば、迦楼羅は?」
「愛子様が、学校に二人もサクラ様についていても仕方がないので、ご自身の仕事を手伝えと、連れて行きました」
「そうなの。……愛子さんの仕事、どんな感じなんだろう? 須佐、聞いている?」
「いえ」
「そう。……あ、ぬいぐるみ~。可愛い。」
帰り道にゲームセンターを見て、サクラは入っていった。
「これ、欲しい!」と、ワニのぬいぐるみを指した。
「これ、飼う! 店員さーーん、これくだ……もごもご……」
「これは、クレーンゲームです」
須佐が塞いだ口をサクラは外した。
「クレーンゲームって何?」
須佐は、見本を見せた。
一発キャッチ。
それを見てサクラも、やるーー! と騒いだが、長様にサクラ様の一部始終をご報告するよう、言い渡されていますが、よろしいですか? との言葉に
震えて、ううんとサクラは言った。
サクラは、須佐が取ったワニのぬいぐるみを大事そうに抱きしめた。

マンションに帰って、愛子と迦楼羅を探すと、愛子の部屋にいた。
サクラは愛子の部屋に入った。
すると、愛子も迦楼羅も難しい顔をしている。
「どうしたの?」
須佐も部屋へ失礼した。
何か嫌なモノを感じたのだ。
「愛子様、いったい何があったのですか?」
「えっ、ああ、今日の仕事でね、ちょっと難しい問題が……」
「迦楼羅、何があったのだ」
「うむ、何か……奇妙な事件でな」
「奇妙な事件って、どんな?」
「いや、大したことではないのだ。ひとつひとつはな」
「そうなのよね、地主に廃墟に色々と霊現象があると、噂があるから、御祓いをしてくれって依頼されたんだけど」
「居るにはいるが、手応えがないのだ」
迦楼羅があとをつぐ。
「廃墟? 今日クラスの子たちと怪談話をしたときも、廃墟の話が出てきたけど。その時、何か嫌なモノが来たの。ね、須佐」
「須佐、サクラ様にそのような危ないことをさせるとは」
「すまない」
「須佐が悪い訳じゃないのよ。私が悪いの。考えなしで」
愛子が遮る。
「その廃墟って、どんなの」
「えっ、えーと……自殺者が何人も出たとか、肝試しをした人達が、精神病院行きになったとか……そんな感じ」
「そんなの、何処にでも転がっている怪談ね」
愛子はため息をついた。
「場所はどこ?」
「えーと……分からない」
サクラは申し訳なさそうに言った。
「来たばかりだ。仕方があるまい。サクラ様、気になさるな」
「ありがとう、迦楼羅」
言いつつ、シッカリしなければと思った。

その時、窓がピシッと大きな音がした。
その場にいた皆が、緊張する。
この部屋は、愛子が結界を張ってある。
余程のことがない限り、何者も入って来られないはずだ。
が、窓には沢山の顔が、恨めしい視線を送っている。
「大丈夫。入っては来られないわ」
須佐と迦楼羅はサクラを後ろへかばう。
愛子は祝詞をあげる。
顔達は、苦しむ。それと共に声が聞こえる。
顔から手が出てきた。
手が窓を叩く。
バンバンバンバン。
窓が割れそうだ。
愛子が祝詞を声を大きく、通るようにあげる。
サクラも、慌てて愛子に合わせてあげる。
サクラは神様を降ろそうと試みる。
「天土(あまつち)を照らす神、降りたてませ。天照大神、お助け下さいませ」
……何も起きない。
ああ、役立たず、私!
「天照大神、降りて下さいませ」
その時、窓が割れた。
顔が入ってくる。
須佐が退魔の呪を刻んである、手裏剣を顔に向かって放つ。
放ちながら、不動明王呪を唱える。
「ナウマクサンマンダ バザラダンカン ダマカロシャダソワタヤ ウンタラカンタラタカンマン」
迦楼羅は短剣を取り、九字を切り、
「悪鬼妖気退散 妖魔邪気退散」
と言いながら、転法輪印(てんぽうりんいん)を結び、九字を再び切る。
途端にあやかし達は、ひるんだ。
愛子はすかさず、祝詞を上げる。
すると、部屋の中がほんのり光に満たされる。
気がつくと、割れたはずの窓が元に戻っていた。
傷跡もない。
愛子はため息をつく。
「何だったのかしらね」
「あやかしに幻を見せられた……と言うところでしょうか」
「厄介だな」

「手応えがない……か」
須佐が、考えるように言う。
「手応えが?」
サクラが訊くと、須佐が頷く。
「愛子様が、最初におっしゃっておられた」
「そう! それよ! 御祓いをしても何か祓ったって実感がないのよ!」
「うむ、私もそう感じた」
「……少し探ってみるか。愛子様、その廃墟は何処に? 噂と共に調べてみましょう」

       ※


須佐は廃墟にまず、行ってみた。
昭和にできたと思われる木造の平屋、日本家屋だった。
よくもまあ、残っていたものだ、と思った。
広い敷地。60~70坪はあるだろうか。
ブロック塀に囲まれ、錆びて、ところどころが欠けた門扉。鎖でグルグル巻きにしてあり、錠がかけてあったが、
ブロック塀の一部が崩れていて、効果はない。
ブロック塀が崩れた所から入った。
庭にあたる場所は、草木が伸びきっている。
ところどころに缶やペットボトルが散乱している。
蜘蛛の巣が、あちこちにあり、閉口した。
瓦屋根は重みに歪み、瓦がいくつか落ちている。
玄関に行くと、タバコの吸い殻が落ちていた。メーカーは、色々とある。
引き戸はすりガラスで出来ており、割れて穴が空いている。
取っ手に手をかけると、鍵は壊されている。
ガタガタと開いた。
入ってみる。
木の真っ直ぐな廊下。ささくれ立っているので靴のまま玄関から上る。
埃の厚い中、新しい靴あとと、埃がうっすらと被っている古い足跡がいくつもある。
新しい靴あとは、愛子様と迦楼羅のものだろう。
「これは……」
須佐は埃のなかに、奇妙なあとを見た。
何かが歩いた……引きずった? ようなあとがある。
人では無い。
「なんだ?」

須佐は気配をうかがった。
特に何も感じない。
玄関を入って右手がトイレと、取って付けたような、手洗い場。
その奥が風呂場、さらに奥が炊事場になっている。
愛子様が、地主から貰った間取り図、そのままだ。
須佐は足音を立てずに、歩く。
廊下の左手がわの襖を開く。
8畳の部屋と縁側。
ライトを使う。木の雨戸が光を遮っている。真っ暗に近い。
ライトに最初に照らされたのは、丸い座卓だった。
全体を見渡す。
特に異常な物は何も無い。
家具はタンスがひと竿。
棚は、すでに肝試しの連中が開け、何もないことを確認済みのようだ。
棚が、全部開けてある。
……いや、中身を持っていったという可能性もあるか。
障子と襖は、雨漏りか、家の歪みか、汚れて破けている。
あとは埃と足跡のみ。
須佐は足音を、やはり立てずに歩く。
畳は色あせ、剥がれている。
染みもあるが、床はまだ大丈夫なようだ。
須佐が立ち止まり、屈んだ。
また、あの奇妙なあとがある。
少し考えたあと、カメラに撮った。
廊下にも取って返し、奇妙なあとをカメラに撮る。
部屋は、あと3部屋。
全てに、あの奇妙なあとがあった。

あとは、噂を確かめるため、バイクで
走り回った。
全部の噂を迦楼羅と手分けして確かめる。
1週間ほどかかった。
その間、サクラは学校を休んだ。

「それで、どうだったの須佐、迦楼羅」
「はい、サクラ様。噂は、ほとんどがただの噂でした」
「事実としてあるのは、自殺者がひとり。病死は、分かる限りで7人。戦死者が、3人です。貸家になっておりましたので、分かる範囲ではありますが」
「それでは、あの大量の顔には程遠いわね。霊が呼び寄せたとしても、ちょっと……あの廃墟にいるとは思えないわ」
愛子の言葉に、須佐と迦楼羅が頷く。

須佐がそういえばと、何かを取り出した。
廃墟にあった奇妙な跡を写したカメラだ。
メモリーカードを取り出し、ノートパソコンに入れる。
「廃墟で映した画像です。ご覧頂けますか」
と皆に見せる。
「これは……」
愛子が、写真に見入る。
サクラも見ると、首を傾げた。
「なあに? この変な跡。周りの靴あととは違うけど……」
「迦楼羅、どう見る?」
「うむ。……分からないな。愛子様、我らがまいったときには、無かったように思いますが」
迦楼羅が愛子を見る。
「ええ、無かったわね。これは、怪異に関係があるのかしら?」
「私は……あるような気がします」
須佐が言った。

その時、ピンポーンと鳴った。
ドキッとした全員だったが、愛子がハッとして玄関に行った。
ドアホーンのボタンを押して、カメラを見る。
マンションのホールで宅配便の人が、宅配で~すと言っている。
◯◯◯さんに◯◯さんからで~す、と言う宅配便に、はい、と伝える。
宅配便が玄関に来た。
その時、灰色の猫が宅配便の人に威嚇して、攻撃をした。
その途端、ダンボールを落として、宅配便の人が消えた。
唖然とする愛子。
灰色の猫が、自慢気に「ナ~ン」と扉の前で鳴いている。
猫の声にサクラは反応した。

「雪ちゃん!」
「え、雪ちゃん?」
「うん。忍者猫の雪ちゃん。魔物よけの修行をした、凄い猫なの」
「それは……凄いわね……。じゃなく、今は消えた宅配便の人でしょ!」
「消えた?!」
3人がドアホーンの所に集まった。
「えーと、雪ちゃん? が飛びついて
ダンボールだけ残して消えたのよ!」

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