神の使徒
第二十七話「仕事依頼(採取)②」
「黒天眼(イビル・アイ)!」
「ガァアアァァアッ!」
リリエール、彼の目から放たれる閃光に目の前にいた数体の屍喰種(グール)は消し飛ぶか、あるいは燃えていく。
「……ついでにユーリエ草も燃えてくのか」
しみじみと俺は言う。
あれから他のユーリエ草の群生地を探して移動すると、またグールが出てくるという悪循環に陥っていた。いや、まさかこうも何度も出てくるなんて誰が予想していたよ。
「ふぅ、いい加減鬱陶しいかな……」
体をグッと伸ばして柔軟する。
まったく何度も言っているが……俺達の目的は今燃やしたユーリエ草を採取することなんだが……。だが、そう言った所でリリエールが遠慮してくれるわけがない。グールは傷口から毒液を出す場合もあり、彼はそれが掛かるのを拒否して遠距離から攻撃しているのだ。誰だって汚い汚物触るなら抵抗あるから竿とか長柄のものなど使って処理するだろう。まぁそんな感じだ。
切り替えて行こうか……。
「じゃ、次の場所に行くか」
「ええと、次は……此処から少し離れた場所かな。あっちだよ」
彼はそう指さして次の目的地を示す。俺はそちらへ向けて歩き出した。その瞬間、トスッと乾いた音が足下で鳴った。見てみると樹の根に矢が突き刺さっているではないか。
……なんで矢が?
というか、後少し早ければ俺の足に突き刺さってたぞ……。
「ん?」
リリエールが首を傾げて飛んできた方向へ視線を動かした。瞬間、第二射の矢が放たれる、それに彼は素早く反応して飛んで来た矢を掴んで止めた。
なんて反射神経してるんだ……。
警戒して俺はその場から逃げて隠れようとした所で今度は矢ではなく怒声が轟いた。
「アンタ達何してんのよ、こんな所で!」
森を震わせるような怒声。
樹の枝の上、そこに誰かが立っていた。よく見たらウルの村、異世界に来てから次の目的地困っていた時親切にしてもらった二人の青年達の一人ティアさんが立っているではないか。
なぜこんな所に?
「あぁティアさんか。いや、ちょっとここら辺に自生しているユーリエ草を採りに来ていてな!」
「……ちっ、ふざけんじゃないわよ! アンタ達のしてるのは放火でしょうがっ! 今アンタ達の残して来た残り火を村総出で消してるの!」
「……へっ!」
ティアさんが怒声と共に言い始めたので俺は背筋に寒気が走った。
アレ……、リリエールの飛ばしたビーム、それで焼かれたグールの死体、あれの残り火が燃え広がっていたのか……まじかよ。
それをウル村の村人総出で火消しに走っていたと……。
冷や汗を流しながらティアさんを見上げる。彼女は親の仇でも見つけたかのように憤怒の形相で睨みつけてくる。
「アンタ達……やっぱり森の害獣だわ。あの時、真面目に取り合うんじゃなかった! 今ここで死んでおきなさい!」
ティアさんの宣告、それを聞いて俺は慌てふためいて頭を下げる。とにかく謝るしかない!
「すみません! まさかそんなことになってるとは思ってなくて! か、軽い気持ちで大丈夫と思ってました!」
「それで済むわけないでしょう?! 下手したらこの周辺が焼け野原になっていたのよ! 普通分かりなさいよ。この馬鹿ッ!」
言い、そこで彼女の視線が今度は俺から別の方へと向けられる。そこにいる相手、人物を見て彼女は訝しげに声を上げた。
「それでアンタ誰? ……その目、アレンと同じ魔眼保持者ね」
……アレンと同じ魔眼? 保持者?
まさかの言葉に俺は唖然とした。
魔眼ってリリエールの眼のことだよな。あのビームの出る……彼も眼からレーザーを出せるのか?
彼の目がキラーンと光る図を思い浮かべ背筋に妙な汗が流れる。困惑している俺に対してリリエールはむしろ上機嫌で答えた。
「あれ? 分かるの僕の目がナニか♪」
紅く深紅の瞳が輝きを放つ。
「……っ! …………」
なんだろうか、ティアさんが今度は遠くを見つめるようにしてその場で硬直し始めたのだが。
まさか、リリエールが何かしているのか?
(ううん、別に? 何もしてないよ♪)
それはもうしてるって意味合いにきこえるんだが?
ティアさんが夢遊病のように告げ始める。
「私も目は良いのよ……。他人の魔眼ぐらい見抜けるわ……。アンタはあの時……いなかったけど、その男の連れなの?」
「初めまして♪ リリエール・ヴィ・ブラディティカールだよ」
「そう……アンタ達の行為は……重罪よ、罪には罰を……しかるべき措置を取る必要があるわ……けど初犯だし、特別に許して……あげ……る?」
ん? 今度は目を見開いて何だか信じられないものでも見るような顔つきに変わったぞ?
「あれ? 解けた?」
リリエールも驚いた表情をしている。って、やっぱりか! やっぱり掛けてたのか魔法を! しかも解けたのかよ!
ティアさんは頭を振って目を開くと……。
「ちっ……小狡い手を使うじゃない! アタシにそんなの使うのはアレンを含めたら二人目ね!」
「ひっ……」
俺は戦慄して彼女を見上げる、怒髪天とかもうゆうに越えた表情だ。怖ぇ。
「……ろす」
ギリ……と奥歯を噛み締めたような音が響く。彼女から明確に殺意を感じる……。
力がこもった、その手に矢の羽根がおさまり弓につがえた。
「ぶっ殺すッ……」
「ちょ!」
「風連衝(ソニック・アブソリュート)!」
ヒュンッ!
と風音が響く、あの風を発していたバイクとはまた違った音速の風音だ。
それが聞こえたのが早いか、彼女が矢を放ったのが早いか、聞こえたが最後、俺はその場を動く事すらできず……。
瞬間、轟音と共に隣で生い茂っている巨木が苔むした地面が文字通り吹っ飛んだ。
「……! 嘘っ……だろ」
「へぇ、矢に魔力を纏わせたんだ」
リリエールが感心した様子でなんか言っている。いやいや……なんだそれはっ……、それで地面吹き飛ぶとかもう魔法凄いな!
でも、あんなの当たらなくて良かった。
まじで当たってたら即死だったよ……。
「なっ! 外した?」
俺がホッとしていたのに対して、ティアさんは驚愕していた。当たっているのが当然という態度だ。え、どういこと……。
「僕がズラしたからね」
「へ?」
「彼女の見えている視点はズレている、それだけさ、さっき掛けた《暗闇》はまだ掛かってはいるって訳だね。なんで一部解けたのかは分からないけど……」
リリエールが少し熟考し始めて。
ティアさん御本人は激昂した様子で更に矢をつがえて構えた。
「当たらないなら、纏めて消し潰すわッ」
「や、やべぇ!」
「逃げるよ! 今の状況じゃ勝てないしね」
勝てないって……マジかよ、リリエールですら勝てないのか、ティアさんバケモノだな。
「ああ、違うよ。君がいると戦闘に巻き込んでうっかり殺しちゃうから、君を生かした状態で勝てないなら逃げようって言ってるの」
あ、そうなのね。
まぁ地面抉るような攻撃散発したら、そりゃ死ぬわ。だったら逃げるが最善か。
そう俺が踵を返した所で……。
「……敦さん」
それは俺の知る人物だった。アレン……親切にしてくれた恩人である。何故か彼が目の前にいた。こんな近くまで来ていて気づけなかった?
「すみませんね……。眠ってもらいますよ」
そう言ってアレンはにこやかに笑ってみせる。その時、彼の目が異様な紅い輝きを放って見せ、次の瞬間俺は意識を失った。
「ガァアアァァアッ!」
リリエール、彼の目から放たれる閃光に目の前にいた数体の屍喰種(グール)は消し飛ぶか、あるいは燃えていく。
「……ついでにユーリエ草も燃えてくのか」
しみじみと俺は言う。
あれから他のユーリエ草の群生地を探して移動すると、またグールが出てくるという悪循環に陥っていた。いや、まさかこうも何度も出てくるなんて誰が予想していたよ。
「ふぅ、いい加減鬱陶しいかな……」
体をグッと伸ばして柔軟する。
まったく何度も言っているが……俺達の目的は今燃やしたユーリエ草を採取することなんだが……。だが、そう言った所でリリエールが遠慮してくれるわけがない。グールは傷口から毒液を出す場合もあり、彼はそれが掛かるのを拒否して遠距離から攻撃しているのだ。誰だって汚い汚物触るなら抵抗あるから竿とか長柄のものなど使って処理するだろう。まぁそんな感じだ。
切り替えて行こうか……。
「じゃ、次の場所に行くか」
「ええと、次は……此処から少し離れた場所かな。あっちだよ」
彼はそう指さして次の目的地を示す。俺はそちらへ向けて歩き出した。その瞬間、トスッと乾いた音が足下で鳴った。見てみると樹の根に矢が突き刺さっているではないか。
……なんで矢が?
というか、後少し早ければ俺の足に突き刺さってたぞ……。
「ん?」
リリエールが首を傾げて飛んできた方向へ視線を動かした。瞬間、第二射の矢が放たれる、それに彼は素早く反応して飛んで来た矢を掴んで止めた。
なんて反射神経してるんだ……。
警戒して俺はその場から逃げて隠れようとした所で今度は矢ではなく怒声が轟いた。
「アンタ達何してんのよ、こんな所で!」
森を震わせるような怒声。
樹の枝の上、そこに誰かが立っていた。よく見たらウルの村、異世界に来てから次の目的地困っていた時親切にしてもらった二人の青年達の一人ティアさんが立っているではないか。
なぜこんな所に?
「あぁティアさんか。いや、ちょっとここら辺に自生しているユーリエ草を採りに来ていてな!」
「……ちっ、ふざけんじゃないわよ! アンタ達のしてるのは放火でしょうがっ! 今アンタ達の残して来た残り火を村総出で消してるの!」
「……へっ!」
ティアさんが怒声と共に言い始めたので俺は背筋に寒気が走った。
アレ……、リリエールの飛ばしたビーム、それで焼かれたグールの死体、あれの残り火が燃え広がっていたのか……まじかよ。
それをウル村の村人総出で火消しに走っていたと……。
冷や汗を流しながらティアさんを見上げる。彼女は親の仇でも見つけたかのように憤怒の形相で睨みつけてくる。
「アンタ達……やっぱり森の害獣だわ。あの時、真面目に取り合うんじゃなかった! 今ここで死んでおきなさい!」
ティアさんの宣告、それを聞いて俺は慌てふためいて頭を下げる。とにかく謝るしかない!
「すみません! まさかそんなことになってるとは思ってなくて! か、軽い気持ちで大丈夫と思ってました!」
「それで済むわけないでしょう?! 下手したらこの周辺が焼け野原になっていたのよ! 普通分かりなさいよ。この馬鹿ッ!」
言い、そこで彼女の視線が今度は俺から別の方へと向けられる。そこにいる相手、人物を見て彼女は訝しげに声を上げた。
「それでアンタ誰? ……その目、アレンと同じ魔眼保持者ね」
……アレンと同じ魔眼? 保持者?
まさかの言葉に俺は唖然とした。
魔眼ってリリエールの眼のことだよな。あのビームの出る……彼も眼からレーザーを出せるのか?
彼の目がキラーンと光る図を思い浮かべ背筋に妙な汗が流れる。困惑している俺に対してリリエールはむしろ上機嫌で答えた。
「あれ? 分かるの僕の目がナニか♪」
紅く深紅の瞳が輝きを放つ。
「……っ! …………」
なんだろうか、ティアさんが今度は遠くを見つめるようにしてその場で硬直し始めたのだが。
まさか、リリエールが何かしているのか?
(ううん、別に? 何もしてないよ♪)
それはもうしてるって意味合いにきこえるんだが?
ティアさんが夢遊病のように告げ始める。
「私も目は良いのよ……。他人の魔眼ぐらい見抜けるわ……。アンタはあの時……いなかったけど、その男の連れなの?」
「初めまして♪ リリエール・ヴィ・ブラディティカールだよ」
「そう……アンタ達の行為は……重罪よ、罪には罰を……しかるべき措置を取る必要があるわ……けど初犯だし、特別に許して……あげ……る?」
ん? 今度は目を見開いて何だか信じられないものでも見るような顔つきに変わったぞ?
「あれ? 解けた?」
リリエールも驚いた表情をしている。って、やっぱりか! やっぱり掛けてたのか魔法を! しかも解けたのかよ!
ティアさんは頭を振って目を開くと……。
「ちっ……小狡い手を使うじゃない! アタシにそんなの使うのはアレンを含めたら二人目ね!」
「ひっ……」
俺は戦慄して彼女を見上げる、怒髪天とかもうゆうに越えた表情だ。怖ぇ。
「……ろす」
ギリ……と奥歯を噛み締めたような音が響く。彼女から明確に殺意を感じる……。
力がこもった、その手に矢の羽根がおさまり弓につがえた。
「ぶっ殺すッ……」
「ちょ!」
「風連衝(ソニック・アブソリュート)!」
ヒュンッ!
と風音が響く、あの風を発していたバイクとはまた違った音速の風音だ。
それが聞こえたのが早いか、彼女が矢を放ったのが早いか、聞こえたが最後、俺はその場を動く事すらできず……。
瞬間、轟音と共に隣で生い茂っている巨木が苔むした地面が文字通り吹っ飛んだ。
「……! 嘘っ……だろ」
「へぇ、矢に魔力を纏わせたんだ」
リリエールが感心した様子でなんか言っている。いやいや……なんだそれはっ……、それで地面吹き飛ぶとかもう魔法凄いな!
でも、あんなの当たらなくて良かった。
まじで当たってたら即死だったよ……。
「なっ! 外した?」
俺がホッとしていたのに対して、ティアさんは驚愕していた。当たっているのが当然という態度だ。え、どういこと……。
「僕がズラしたからね」
「へ?」
「彼女の見えている視点はズレている、それだけさ、さっき掛けた《暗闇》はまだ掛かってはいるって訳だね。なんで一部解けたのかは分からないけど……」
リリエールが少し熟考し始めて。
ティアさん御本人は激昂した様子で更に矢をつがえて構えた。
「当たらないなら、纏めて消し潰すわッ」
「や、やべぇ!」
「逃げるよ! 今の状況じゃ勝てないしね」
勝てないって……マジかよ、リリエールですら勝てないのか、ティアさんバケモノだな。
「ああ、違うよ。君がいると戦闘に巻き込んでうっかり殺しちゃうから、君を生かした状態で勝てないなら逃げようって言ってるの」
あ、そうなのね。
まぁ地面抉るような攻撃散発したら、そりゃ死ぬわ。だったら逃げるが最善か。
そう俺が踵を返した所で……。
「……敦さん」
それは俺の知る人物だった。アレン……親切にしてくれた恩人である。何故か彼が目の前にいた。こんな近くまで来ていて気づけなかった?
「すみませんね……。眠ってもらいますよ」
そう言ってアレンはにこやかに笑ってみせる。その時、彼の目が異様な紅い輝きを放って見せ、次の瞬間俺は意識を失った。
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