神の使徒

ノベルバユーザー294933

第十一話 「魔法」

「魔法には六種類の属性があるんだ…。
火、水、土、風の基本の四属性、光、闇の上位二属性…、君の場合は光の相性が良いかな?」

「ぐっ、ふざけんな…いったい俺に何をっ!」

そう俺は自分の手から取り落とした。リリエールの彼の魔法…いや魔力の塊になったものを睨む。あれに触れてから急激なめまいと吐き気が襲ってきた。
彼は言った、魔法を使ってみたい? と、俺は半信半疑のままに彼の言葉に従って、彼の持つ魔法適正を測るための道具に、つまり彼の闇魔法に触れたのだ。
だが結果、俺はそれに触れた途端に倒れてその場にうずくまった。

彼は淡々と俺の様子を眺めながら、倒れているその隣に座ると額を無造作に撫でる。

「そうだねぇ、どこから説明しよっかな?
まぁ、端的に言えばね。君は闇の魔力の拒絶反応にあったんだよ。言ったでしょう? 人には魔法の得て、不得手があるって…。君は光属性を得意とする魔法使いということが結果わかったんだ。闇を拒絶するのは光だけだからね。しばらくは…拒否反応で動けないから、そのまま寝ちゃいなよ。夜番はしてあげるからさ、もし何かアレば君を護ってあげるよ。あの時みたいに…」

俺が気だるさと戦いながらリリエールを睨むが、彼はそれに気にした様子もなく俺の頭を撫で続ける。

俺はゆっくりと目を閉じて深い眠りの中に落ちていった…。





再び…目を覚ます頃には空は白んで辺りは朝焼けに包まれていた。

手を動かせば…思い通りに動く体、あの時の不調は見る影もなくなくなっていた。魔法の拒絶反応、どうやら治ったようだ。
そういえば………。
俺は周囲に視線を送り、そして彼を見つけた。彼は俺の胸に体を預けて静かな寝息をたてている、子供のあどけなさを感じる少年の寝顔がそこにはあった。こうして眠っていれば、ただの子供、あんな魔神とは思えないのだが…。

一人愚痴り、そして、グッっ! と猫のように体を伸ばした。骨の軋む音を聞きながら、固まった体をリラックスさせた瞬間だった。

ビュンっ! バシュ!

とよく聞いた。それこそリリエールからよく聞いていた黒い稲妻の音が鳴り響き、俺は真上を見上げる。
そこには、焼け焦げた丸型の傷が大木の幹につけられていた。
どういうことだ…。

俺が説明不能な事態に困惑していると、俺の身じろぎで目を覚ましたのか、リリエールがゆっくりと体を起こした。

「んっ、あぁ…ごめん、ちょっと寝ちゃった」

「いや、いいから! それよりも!」

俺は無造作に手を振るったその瞬間、リリエールが動き、俺の腕を両方とも握り締めた。
その途端、

ヒュンっ!

と音と共にまた鳴り響いて、今度は俺でも目視で確認できた。リリエール、彼が黒い稲妻だとすれば、俺の今放ったのは、白の稲妻、いや、彼とはまた違い、白い光を放つ槍のようでもあった。

「なんのつもり? 当てつけ? そりゃ、まさか光の属性…とも思っていたけど、仕返しにこんなことするなんてヒドイね」

ヨヨヨ、と泣くマネをする仕草に白々しさを感じるが一方で俺は慌てている。
手からなんか出てるのだから…。
しかし、こいつは確実に…。

「おい、コレってまさか光の魔法か?」

「正解、拒絶反応がでたから反動で発現も早かったね?」

「おいおい、まさかとは思うがわかってて拒絶反応を出させたのか?」

「………」

「沈黙は肯定と受け取るぞ?」

言うと、あはは…と笑いながら彼は駆け出す。

「さぁ、いい朝だねぇ! 今日もいい一日になりそうだなぁっ!」

「おい!」

また、ビュンっ! と白の槍が飛び出して制御不可能な力が飛び出す…。
ヤバイ、この力まず慣れないと幾らでも白い光の槍を射出して周りを傷付けてしまうな。

『魔法を初めて発現した人は、力が安定するまで、力に振り回されるから頑張って制御してね? あと、とりあえず行こうよ?』

頭に彼の《思念接続》テレパス、思念通話が届き、こんな危ない危険物みたいな状態でどうしろと? そう思うが、諦めるのは早かった。この世界に来てから彼に振り回され始めている。だがまぁ、仕事で忙殺されていた日々よりはまだ…マシかもしれないな。

俺は立ち上がり、体に意識を集中して力が勝手に暴発しないように苦心して、リリエールを追い掛けて駆け出した。

あ、これ以外に仕事より辛いわ…。俺はアスリートではない…平の社員だぞ…。

息を乱しながら、そう俺は一人思った。





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