神の使徒

ノベルバユーザー294933

第九話 「聖域騎士団②」

パンパンっ!

とリリエール、彼は自らの手を叩いて砂埃を払う。彼の紅いルビーのような瞳が俺を見つめる。

「まったく…できれば穏便にすませたいんだけどなぁ」

そう彼は言うが、俺はチラリと彼の足下を見る。そこには此処の警備をしていた騎士達が折り重なって倒れている。彼等は【団長】と呼ばれている顔に傷のある男を、俺達が倒した後に散策がてら無防備に歩いていたら不意に出くわしてしまったのだ。
出会うや否や、隣にいた彼は瞬時に動き巡回していた騎士三名を殴る、蹴るなど暴行を加えて気絶させた…。

ううむ…、今まで真っ当な暮らしをしていた分、暴力での解決などは心の奥底で忌避感のようなものを感じている。
もしもできるなら、彼の言うとおり誰にも見つからず穏便に済ませたい。

「早く此処から出よう。彼等と接触するのは間違いだった、今はそう思ってる」

「ふぅん…反省してる?」

彼はそう言って少し前屈みに俺に迫る。その時彼が身に纏っている黒いローブがその下に隠れた白い素肌を晒させて視界に写り込む、なんでもないはずのその姿に一瞬ドキリとして努めて冷静に俺は言う。

「反省はしてる、だけど誰かの助けはいる、そうだろう?」

「まぁね…」

そう言って彼は身近にあった陣幕の一つに入り込み、ガサゴソと探り、いくつか荷物を持って来た。
一つを放って俺にパスする。それを俺は受け取り…。

「おい…」

と呟いた。
これって、他人の荷物だよな…。
携帯鞄、中身を開くと本や書類、はたまたこの持ち主の家族の写真などが入っている。
リリエールを盗み見ると、鞄をひっくり返して荷物を地面にぶち撒けた…ヒドい…。
大切な物もあるだろうに…俺はぶち撒けたそれに手を伸ばして広い集める。

リリエールがそこへ…

「なにしてるの? 邪魔なのは除いて、必要なものは盗ったら?」

「いや、さすがに…抵抗があるというかな」

「まったく、そんなことじゃ、この先、生き抜けないよ? 誰かの助けが欲しい、それを望んだのは君だよね、そしてその願いを今叶えてあげられるのは僕だけ、だろう? それにさ…この森を抜けるにはどうしたって道具や装備がいる君は━━━」

「わかった、それ以上は言うな。俺だって切羽詰まってるのは判る」

そう、俺は覚悟を決めて彼に見えるように中身を陣幕の中でぶち撒けて彼らの荷物をそこに打ち捨てる。これなら汚れてしまう心配はないだろう。折れたり曲がったりするものはあるかも知れないが…。

「甘いね」

リリエールは乱雑にぶち撒けて荷物の中身を探り、短剣数本と水袋、それから小さな石?を数個拾い俺に手渡す。

「これだけあれば今はいいかな…」

「あとは…これも必要なんじゃないか?」

俺はそう言って紙束の中から、地図を拾い上げた。陸地が精密に描かれており、そこには大小様々な国の名が描かれている。
見る限り大陸は俺の世界とは違い二つのみ…どちらの側にいるかはやはりわからないな、森と遺跡だけの情報では断定できない。
できれば現在地が分かるような小地図などが見つかれば良かったが…それは無かった。

リリエールは地図を眺めながら、呟く

「何年…何年経ったんだろう、僕が知ってる場所と全然違う…」

呟きはどこか哀愁が漂うが、それはすぐにかき消えて…。

「………僕の《探索》でこの森の全域は把握したよ。次の人の集まる場所は此処からかなり離れた場所にある。一週間…それぐらいは森の中を彷徨うから、覚悟して」

言い、マジかよ…と俺は天を仰ぐ。

「食べ物がいるな…水も」

空腹は今は耐えられるだけで飢えはやはりある。今だって喉が少し渇いているのだ。唾液を舐めて渇きを癒やす。このままではまずい一週間などとても無理だ。

それにリリエールは笑みを浮べている。

「それなら大丈夫だよ。森の恵みがあるからね、サバイバルだよ」

彼はそう言って一人歩き出す。
その後ろ姿を見ながら俺はただ願った。
どうか、ゲテモノなんぞが、食卓にあがりませんように………。















一人の少年と一人の青年が陣営を去り、それから暫くの時が経った頃…。

ガバッ…!

と自らの巨体を動かして男は起き上がった。
その額に手を当てて、一人、笑った。

「ククク…嘘だろう? この俺が伸された? それに生かされたか…。フフ、ベルグ達に嘲笑われる、な…」

「あ、れ…? 私どうして…」

男が自らの状態を確かめていると、それとは時間差で男の近くで寝かされていた少女、修道衣姿をした彼女も目を覚ました。

「起きたかアレイア、位階を持つお前が何の抵抗もできないとはな…」

「私は、………っ! 申し訳ありません!」

「いいんだやめろ。俺もあの魔神に手も足も出なかった。………アレイア、お前は此処に残って騎士団の指揮を執り遺跡の探索を続けるんだ。望みの物が出るまでは此処に居座る。本国には私から連絡する。それと━━━」

ドタドタ、ガシャガシャと足の音、鉄の音を鳴らして複数人の男達が現れる。それらは陣の警備に残していた者達だ。
ちょうどいい…。
男は彼らへと視線を傾けて。

「それと追撃部隊の編成を始めろ。この場所から集落まで【アレ】の到着からならば十分に追いつける…借りは返すぞっ!」

男は檄を飛ばす。

それにその場にいた全員が胸に手を当てて敬礼し声高に叫ぶ。

「ハッ! 我等【神域騎士団】が誇りにかけて!」

そうして、日は沈み。
やがて夜が来る…。









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