獲物

蜘蛛星

Boys be ambitious

少年、少年よ
僕は君に言いたいことがある
死にたいのなら死ねばいいさ
生きたいのなら生きればいいさ
なんて、中途半端な言葉
誰が望んでいるんだろうね
止められたい
止められたくない
まあ人それぞれ事情があるさ
なあ少年よ
君は晩御飯を作る時
あるいは進路を考える時
あるいは、その他もろもろの場合
「なんでもいいよ」
「好きにしたらいいよ」
そんな言葉で、片付けてしまう相手を
好きでいるようなことがあるか
その言葉ひとつで
全て投げやりにされてる気がしないか

少年、勘違いしないでおくれ
これは僕の被害妄想だ
全ての人類がそうではない
個性というものがあるのと同じ
だが、君がどう思うかを聞きたい
これは僕の持論だ
そして同時に暴論でもある
しかし少年、これは知っていてほしい
少数派が声を荒らげても
多数派にとって平穏を荒らす
騒音でしかないんだ
だから僕はこうして君にだけ話す
少年、少年よ
どうか君だけは
この輪を掻き乱さないでくれ
ジャンヌ・ダルクを気取らないでくれ
正義なんて、とても脆いんだ
正義と正義が争うから戦争が起こる
誰が正しいかなんて
決まっているはずがないじゃないか
この世界はとてつもなく広いんだ
自分の正義を貫くためだけに
誰かの平穏を乱さないでくれ
僕の幸せを奪わないでくれ

なあ少年よ
君に好きなものができたとしたら
それがアニメのキャラでもいい
俳優や女優、アイドルでもいい
なんでもいいから
一直線になれるものができたら
一直線になる前に
周りを確認するべきなんだ
他人の目や道徳的行為、ルール、秩序
君の好きを侵害する権利は誰にもない
しかしな、少年
それは相手が
有名人だからできることだ
旦那が妻の顔写真や寝顔
あるいはイラスト化した妻や妻の名前
それらをグッズにして
カバンにつけていたとしよう
君はどう思う
旦那は確かになんとも思わないだろう
だが、妻はどうだ
隣に立つ友人はどうだ
そういう事だよ、少年
好きに権利があるのなら
嫌いにも等しく権利があるはずだ
好きを振りかざす権利があるなら
嫌いを振りかざしてもいいはずだ
それ相応のものは返ってくる
それを投げられるのは君だけではない
その周りにいる
君の親しい人にも向けられるのだよ

なあ少年
自分が言うことはかっこいいと
思っている奴がいるだろう
世の中で自分が全てだと
思っている奴がいるだろう
我が道を通し
少人数でも頑張るのが素晴らしいと
思っている奴がいるだろう
サイレントマジョリティーを
卑下する歌もあるだろう
しかしな少年
ノイジーマイノリティは有害なのだよ
昔も今も、社会は大抵
サイレントマジョリティーだ
だからこそ
不自由を好もうと努力し
平穏に生きていられるのだ
石を投げ込まないでくれよ
僕の努力はなんだったんだよ
僕はただ普通に生きたいだけなんだよ

少年
僕は最後に君に言いたい
強く生きろよ
誰の言うことも聞くなよ
僕の言ったことは忘れろよ
それだけだ

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