【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。

なつめ猫

人類の罪過(17)佐々木望side




「ガイア生命論ですか?」
「ええ。地球は、一つの生命体だと見なす理論」
「星がですか?」

 あまりにも突拍子すぎる事柄に、私は「何を言って……」と、思ってしまうけれど……、途中で「――でも……」と考えてしまう。
 それは、上落ち村で聞いた星の迷宮という言葉。
 そして……、夜刀神と名乗る尋常ならざる神から襲撃を受けたばかりか、月読と呼ばれる女性と出会ったこと。
 それら全てが、脳裏に駆け巡ることで、鏡花さんの語っている言葉が滑稽とは思えないことになっていた。

「おかしいかしら?」
「いえ……。夜刀神や月読さんと出会ったことを考えると……。だって、神様なんて存在しないって、ずっと思っていたから……」
「そうね。普通は、そうなるわよね」
「――でも! 本当は、神様は存在したってことですよね?」
「ふふっ」

 彼女は、ヘリを操縦しながら笑みを浮かべる。
 ただし――、肯定も否定もしてこない。

「そこから考えると星が生きて居るという事も……」

 私が言いかけた所で――、鏡花さんが口を開く。

「いい? この世界には神様なんて存在しないし、都合のいい存在なんていない」
「――え?」

 突然の言葉に私は内心では絶句する。
 それなら、私が見て来た物はなんだったのか? と思ってしまったから。

「あれは、ただの現象にしか過ぎないの。そして――、それは私や佐々木望、貴女も同じ。与えられた役割を全うしているだけ。そして、存在している月読や夜刀神も一緒。ただの結果にしか過ぎないの」
「……どういう意味ですか?」
「言葉のままよ? そう……言葉の意味のまま。だからこそ、ガイア生命論というのは、とっても滑稽であり真理をついているとも言えるのよ」
「……な、何を言って……」
「――さて、お話はここまで……。前方を見てみなさい」

 納得できない――、中途半端な説明のまま、私は悶々としながら彼女に促されるようにして前方を見る。
 すると、遥か先には山が――、

「あれって……」
「剣山よ」

 彼女が、私の質問を答えたと同時に前方を飛んでいた軍用ヘリコプターの一機が突然! 火を噴いたかと思うと爆散。

「一体、何が!?」
「来たわね」
「――え? 何がですか?」

 空を飛んでいるヘリに攻撃を仕掛けてくる存在と言えば赤黒い化け物とも言える鬼のような存在だけだった。
 だけど、いまはその鬼の姿は遥か上空にあるだけで私達が飛んでいるヘリの周辺には存在していない。

「決まっているわ。――さあ、きちんとしがみ付いておきなさいよ?」

 唐突に、鏡花さんはヘリを旋回させると共にミサイルを発射する……が! それらが、空中で悉く落ち落されていく。

「どういう……」
「まったく、もう少し遅く来ると思っていたけれど、異物である私達を排除しようとしているみたいね」
「排除ですか?」
「ええ。目を凝らして見てみなさい。あそこにいる存在を」
「存在?」

 彼女が睨みつける先――、そこには一つの人影が――。

「あれって……」
「ええ。星の迷宮に取り込まれた人間の成れの果て……よ」

 




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