【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。
贖罪の迷宮(6)佐々木望side
迷宮内の通路を歩く私達。
迷宮内は、夏目さんが言った通り、カミソリの刃どころか紙すら入る隙間が無いほど整然と積み重なった石組みが通路を形成している。
「それにしても下層って、どのくらい下なんだ?」
田中が私に話しかけてくる。
「分からないわ」
「分からない?」
「ええ」
私が見ている佐々木というもう一人の人物は頷きながら古文書に目を通していっている。
そして彼女が手に持つライトは薄暗いダンジョン内の前方を照らしていて――、
「そういえば、さっきの契約の話だが、ソロモン王の秘宝ってのは本当の事なのか?」
「あくまでも仮説だよ」
夏目さんの問いかけに答える藤田という男性。
「そうか……。だが、契約の部屋はあるんだろう?」
「そういう事になっておる」
黙ってついてきた住職は頷く。
「つまり、神社には契約の部屋が存在していることは知らされていたってことか?」
「知らされていたというより、代々――、上落ち村を見張っていれば、それなりの情報は入ってくる……そういうことだ」
「つまり真偽は定かではないと?」
銃口を下に向けながら殿についている夏目さんと住職の話は続く。
「だが――、何事にも事の発端というものはあるものだろう?」
「それはそうだな」
「佐々木、あんたもそれを知っていたということか?」
唐突に、一番先頭を歩いていた私に夏目さんが話しかけてくる。
私は歩きながら、口を開く。
ただし、身体を動かしているのは私ではないけれど……。
「ええ。――でも、正確には先輩から話を聞いたと言った方が正しいかも知れないわ」
「先輩?」
「貴方には関係の無い事よ。それより、みんな注意してね。この迷宮には人非ざる存在がいるって書いてあるわ」
「人非ざる存在? どういう意味だ?」
「妖怪とか幽霊と言った類のものか?」
夏目さんの問いかけに反応したのは田中。
二人して周囲を警戒しながら付いてくる様は、何とも滑稽な物に見えてしまう。
しばらく歩くと地下へと通じる階段が視認出来た。
「ここね……」
「この下に契約の部屋があるのか?」
身を乗り出すようにして階段を見てくる夏目さん。
それに対して鬱陶しそうに私は彼を両手で押しのけると階段を降りていく。
2階までの階段を降りた距離は、一般的な建物で言うのなら1階から4階に降りるのと同じくらいで――、1階層ごとの天井の高さを鑑みれば当然の高さとも言えた。
「なんだ……、同じ場所か?」
夏目さんの言葉に私は首を振る。
「このような階層が、まだまだ続きます。到達した場所には、星の記憶が存在していて、そこが契約の間を呼ばれる場所のようです」
「星の記憶か……。ずいぶんと御大層な名前だな」
「本当に御大層かどうかは見てみないと何とも言えないですね」
私は呟きながら、歩きだす。
星の迷宮の最下層に向けて。
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