【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。
戦火の神居村(2)佐々木望side
「――なら」
「お前は、本来守るべき力なき――戦う術を持たない者を殺すのが正義だというのか? そんなモノは、間違っている」
「夏目さん。ですが、今回の上落ち村に関しては日本国政府は、かなりの強硬手段をとってきています。下手に逆らえば先ほども言ったとおり……」
二人の自衛官は、会話をしていて此方の動きには反応していないように思える。
私は、こっそりと自衛官の姿を確認すると二人とも軍用ヘルメットを着用していたけど、沈み始めていた暁の光で一人だけ顔を見ることが出来た。
――それは……、
「夏目一元? どうして、こんなところに……」
「誰かいるのか!?」
思わず発してしまった小さな声。
それを聞き逃さなかった夏目が、私が隠れている木へと視線を向けてくると共に銃口を向けてくるのが見えた。
「すぐに出てこい。2度は言わない」
「――ッ!?」
私としたことが……。
跳ね上がる鼓動と律動が、この場を移動して逃げろと囁いてくる。
だけど……、ここで逃げても余計に不審がられるだけ。
――それなら!
意を決したところで自衛隊の二人のどちらかは分からないけど私の方へと向かってくるために草を踏みしめる音が聞こえてくる。
もう時間はない。
「待ってください。夏目一元さん」
「――何?」
一か八か隠れていた木から姿を見せた。
そして、彼と私の視線が交差したところで、夏目一元とは別の自衛官が私に銃口を向けてくる。
「やめろ! それより、どうして俺の名前を知っている? そこで名前を聞いていたとはいえ、苗字だけだったはずだ」
「夏目さん」
「何だ?」
「この女、佐々木望って名前だったはずです」
「コイツが? 話しには聞いていたが――。おい! どうしてこんなところにいるんだ?」
二人の話ぶりからして、私のことを知っているみたい。
だけど、問題はどうして知っているのか? と、言う点で――。
「答える必要があるとでも思いますか?」
「なるほど……。銃口を下ろせ」
「ですが!」
「これ以上、時間を費やすのは無駄だ。それに、この女が山から出てきたと言う事は、山間には部隊は散らばっていない証拠だ。今の内に神居村の住民を伊東市の方へ逃がす。殿は俺がする」
「分かりました。自分が、何とか町まで誘導して見せます」
「任せた。その際には、住民の虐殺を示唆せずに避難という形にしておいてくれ」
「虐殺なんて聞いたら、それこそ大本営は何をするか分かりませんからね」
「ああ。頼んだ」
銃口を下ろした自衛官は、私達から離れると神居村の方へと向かってしまう。
その後ろ姿を見ていると――、「さて、それでは佐々木望さんでよかったか? どうして、このような場所まで来た? 国道は封鎖されていたはずだが?」
その問いかけに私は思わず苦笑しつつ口を開く。
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