【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。

なつめ猫

在りし日の時間(1)佐々木望side




「上落ち村の伝承?」

 ルーズリーフに纏められた紙には、そう書かれている。
 私は、用紙を捲る。
 
「えっと……、1枚目はタイトルだけ? これって……研究成果を提出する為の参考資料みたいなものなのかしら?」
 
 呟きながらレポート用紙を捲っていくと箇条書きで、上落ち村のことだけでない神居村に関しての記述も存在している。

「どうして、考古学サークルで上落ち村や神居村を題材にした資料を作っているの? もっと古い遺跡なら日本中のどこでもあるはずのに……」
 
 そう思いながらも私はページを捲る手を止められない。
 何か手がかりがあればと思っていたから……、ううん――、そうじゃないと思う。
 知らなければいけない事が書かれている気がしたから。

「上落ち村の別名は、神堕ち村であり……、神堕ち村を監視する為に神居村が作られた?」

 漢字の読み方から察するに、神堕ちというのは神から堕天したって事になるけど……、それを監視するために神居村が作られたとなると――、

「普通に考えて、堕ちた神を監視する為に作られた村って事になるわよね? でも――」

 そこまで考えたところで、いくら何でも妄想としか思えない。
 それでも、レポートに書かれている内容に目を通していく。

「上落ち村は、元々――、神堕ち村という名前であったが、江戸時代に入り名前の変更が為された? つまり、どういうことなの? 資料には、何らかの圧力が政府からあったって書いてあるし、それ以降は上落ち村って名前で統一されているみたい……。――でも、それって……、江戸幕府かもしくは伊豆半島を治めていた大名に圧力をかけられる何かが存在していたってことよね」

 書かれている内容。
 それは手書きの部分が大半を占めていて、信憑性は薄い。
 それでも、いくつかの写真が挟まれていることから、取材を行ったことは確かだと思う。

「次は上落ち村が出来た時期? これって――!?」

 書かれている内容に私は思わず目を見開く。
 上落ち村が出来たのは、上落ち村の神社にある閲覧可能な文献を見る限り、3000年以上前と書かれていたようだったから。
 3000年以上前というと紀元前10世紀と言えば縄文時代を指し示す。
 そんな古くから村が存在していたなんて――、まして文献が残っているなんてありえない。

「……でも」

 文字が発明されたのは、紀元前4千年前と以前に学校で習った事がある。
 ただ、問題は日本にそんな昔から文字が存在したのか? という点で、これには幾つか諸説があり、日本独自の神代文字が存在していたという説と存在していない説。
 この二つがある。

「もし、本当に――、そんな昔から上落ち村があって、何らかの理由があって神居村があるとしたら……」

 たしか、神居村の住職さんは何かを隠しているようだった。
 その理由は定かではないけど、何かしらあると思ったのは確かで――、

「でも、それでも……」

 山岸先輩や、四聖魔刃に関しての説明がつくのかと言えば難しいと思う。
 さらに紙に書かれている内容を見ていく。
 そこには上落ち村についての伝承が書かれている。
 そして、最初の文字の冒頭部分には――、『神堕ち村にて調べた内容を書き記す』と、書かれていた。





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