【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。

なつめ猫

世界情勢(3)




「ピーナッツマンさん、それは容認は出来ません」
「宮下、お前に指図される謂れは無い」
「それが総理からの依頼であったとしても? 例の――」
「……それを持ち出してくるつもりか? 日本国政府は、俺とことを構えるつもりか? 何かあれば、宮下! お前は責任を取れるのか?」
「――ッ! そ、それは……」
「一言言っておいてやるぞ。人に交渉を持ちかけるなら――、とくにその人物が大切にしているモノを後回しにさせてでも自分の言う事を聞かせたいなら、貴様も自分の全てを掛けて説得しろ」

 60歳を超える老齢の男が――、宮下防衛大臣が顔を歪める。
 自分よりも年下の人間から、交渉事に対して指摘されるのが余程プライドを傷つけたと見える。
 だが、俺は間違ったことは言ってはいないし、何より俺には守らなければいけない物がある。

「……分かりました。それでは鳩羽村ダンジョンの攻略を早急に行って頂く方向で宜しいでしょうか?」
「最初から、そのつもりだ」
「分かりました」
 
 苦々しく頷く宮下。
 
「大臣――」
「言うな菊岡君。それでは、鳩羽村ダンジョンの攻略をよろしくお願いします。それと――」

 宮下の視線が、そこでようやく随伴していた相沢の方へと向けられる。

「彼女は、貴方の弟子と言う事ですが……」
「そうだな。それが何か?」

 俺の答えに興味深そうに相沢を見る菊岡陸将と宮下防衛大臣。

「彼女に別のダンジョンで戦ってもらう事は……」
「それは無理だな。まだ一人で戦う訓練はしていないからな。あと、言っておくが余計なちょっかいをかけるなよ? もし手を出したら、俺を敵に回すと思えよ?」

 眼を細めながら「威圧LV10」を発動。

「――なっ!?」
「――くっ!?」
「うっ――」

 次々と、顔色を青くし地面に倒れ込んでいく自衛官達に宮下防衛大臣。
 辛うじて立っていられるのは、相沢くらいであったが表情は辛そうに見えるのは勘違いではないだろう。

「いいな? 相沢に手を出せば、今度は威嚇ではすまないからな?」

 そう呟きながら俺は威圧をOFFにする。
 何人か気絶しているが、特に問題はないだろう。 

「……わ、分かりました。それでは、日本国政府も全面的に鳩羽村ダンジョンの攻略に手を貸します」
「必要ない。俺と相沢だけで十分だ。それより何が起きるか分からないから鳩羽村からは住民を退去させておいてくれ。自衛隊も含めてな――」
「それでは、ダンジョンからモンスターが出てきた時に対応が!」
「別にダンジョンから出てくるモンスターの処理をするなと言っている訳ではない。戦闘ヘリとかあるんだろう?」
「……分かりました」
「分かってくれればいい。――藤堂」
「はい。私は、どうしましょうか?」
「お前は、日本国政府との交渉役として宮下防衛大臣と一緒に行動をしておいてくれ。情報が逐一入ってくる状態を維持したい」
「分かりました。それと――」

 チラッチラッと藤堂が相沢の方へと視線を向けている。
 何かあるのか?

「彼女は……? 相沢さんって、さっき言っていましたけど……、どういう関係なんですか?」

 いつもクールな、雰囲気から一変――、苛立ちの色を含んだ声色で藤堂が俺を問い詰めてきた。 




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