【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。
鳩羽村ダンジョン攻略(26)
「これはこれは――、どうかしましたか?」
最初に事務所に通された時よりも、建物の中は片付いている。
それと共に、多くの職員の姿も――。
「水上さん、すぐに誰にも聞かれない場所で話をしたい」
「え? は、はあ……?」
腑に落ちない表情で頷くと、俺達を一番奥のブースまで連れていく。
正直、扉がある部屋などで話をしていと思っていたが――、贅沢は言っていられないだろう。
「人払いをお願いできるか?」
「それは何か重要な問題が起きたということですか?」
「それは人払いが終わってから説明する」
「わかりました」
ただでさえ、ピーナッツマンの着ぐるみを着ていて目立つのだ。
職員も俺が話したことを吹聴する可能性がある。
そうなれば混乱を招きかねない。
それなら、事務所から出て行ってもらった方がいい。
すぐに職員は事務所の外へ。
一応は、22階層の防衛の再確認と言う大義名分を水上は使っていたが――。
「これを見てくれ」
「これは?」
「32階層で拾ったスマートフォンになる」
「まだ、そんなに時間は経っていないですよね?」
「そうだな。それより、時間がない。早くチェックをしてくれ」
「わかりました」
水上がスマートフォンの動画を見始めるが、その表情は動画が進むにつれ険しい物へと変わっていく。
「これは……、ピーナッツマンさん。つまり32階層の休憩所は――」
「全滅だ。42階層もな」
「そんな……」
椅子の背もたれに体を預けるようにして放心する水上。
「水上さん。俺からの提案だが――。一端、22階層上に居る全ての冒険者と職員をダンジョンから脱出させた方がいいと考えている」
「――で、ですが……」
「何か問題でもあるのか?」
「はい。ダンジョン内のモンスターの強さが尋常でない程上がっている事は前回説明しましたが……」
「つまり現状では地上まで戻るのも大変だと……そういうことか?」
「平たく言えばそうなります」
水上は俺を見てくる。
その態度から察するに俺に先導してもらいたいというのは明らかだ。
「分かった」
「それでは数日分の食糧を用意させますので」
「必要ない。最短ルートで階段を登っていく。一食分の水と食料だけでいい」
「現在は、インターネットに繋がらない状況ですよ? その為に方位もダンジョン内に点在する階段も手探りで見つける必要があります! 一食分の食糧と水だけなど死ににいくような物ですよ?」
力説してくるが、俺にはスキル「神眼」がある。
そのことを水上に伝えるつもりはないが、納得させる必要があるな。
「俺のレベルになれば、階段の位置と方角と場所くらいは魔法で調べる事が出来る。それなら問題はないだろう?」
「…………わかりました。すぐに用意をさせます」
水上が事務所から出ていったあと、一息つく。
「……あの」
「どうかしたのか?」
ずっと黙り込んでいた相沢が俺の方へと視線を向けてくる。
「陸上自衛隊の主力部隊が来るまで留まるのもありなのではないですか?」
「それは無理だな」
「どうしてですか?」
「水上も言っていただろう? ダンジョン内のモンスターの強さが想定していたよりも遥かに強くなっていると」
「だから!」
「すでに、陸上自衛隊は鳩羽村には向かっているが――、ダンジョン内には入らないように連絡をしてある。余計な死者を出すのは愚の骨頂だからな」
「――え?」
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