【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。
鳩羽村ダンジョン攻略(13)
ダンジョンに入ってから30時間が経過。
すでに丸一日以上、鳩羽村ダンジョンに潜っていることになる。
「ハアッ!」
相沢が、壁の側面を走っていく。
向かう先には、『空飛ぶ酒樽LV502』が浮遊しており頭の蓋が開きかけているが――、攻撃動作に移るのが遅すぎた。
俺が見ている中で、相沢は走っていた壁を蹴りつけると同時に、空飛ぶ酒樽に接近したところで体を慣性に合わせて横に回転させながら日本刀で斬りつける。
横薙ぎに斬られた酒樽は、真っ二つになり――、ダンジョン内の古びた石畳に落下すると粉々に砕ける。
――レアモンスター、空飛ぶ酒樽LV502を討滅しました。
――パーティメンバー、相沢(あいざわ) 凛(りん)が経験値を取得しました。
――パーティメンバー、相沢凛は、消去者(イレイザー)の加護により取得経験値が倍増されます。
――パーティメンバー、相沢凛のレベルが上がりました。
――パーティメンバー、相沢凛のレベルが499から500に上がりました。
視界内に、表示されるプレート上に相沢のレベルが上がったログが流れる。
「疲れました……」
「お疲れ」
相沢のレベルよりも上のレベルのモンスターが出てくるのは初めてだったが、鳩羽村ダンジョン20階層まで攻略してきたこと――、そして単体と複数の戦いを任せてきたことで相沢の戦闘技術は飛躍的に上がってきた。
もちろん神刀・天津彦根命(アマツヒコネノミコト)の助けも大きい。
あとはステータスを、ちょこちょこ弄っているのも……。
ステータス
名前 相沢(あいざわ) 凛(りん)
職業 自営業 ※小料理屋店主
年齢 23歳
身長 155センチ
体重 46キログラム
レベル500
HP3827/HP5000
MP5000/MP5000
体力157(+)
敏捷163(+)
腕力154(+)
魔力79(+)
幸運 6(+)
魅力21(+)
所有ポイント1
――というかステータスだけで言うと相当高いよな……。
おそらく――、レベル補正があったとしても一般的なSランク冒険者と対等以上に渡り合えるレベルだろう。
「それにしても、今回のモンスターは強かったです……」
「だろうな」
「――え?」
「いや、こっちの話だ」
俺が他人のステータスどころかモンスターのレベルまで見れるというのは言っていないし、言う必要もない。
ましてや他人のステータスを覗き見しているなんて知られるのは良くない。
あとは、俺の切り札とも言えるからな。
「あの……」
「――ん?」
考え事をしていると相沢が何か気になったことがあったのかソワソワとしている。
「どうかしたのか?」
「はい。視界内に見た事がない表示が出ているんです」
「見た事が無い表示?」
コクリと頷く相沢。
正直、俺とは一般の冒険者のシステムは異なっているから聞かれても困るんだが――。
知らないとは言えないからな。
「――で、どんな表示が出ているんだ?」
「えっと……、魔法が覚えられるみたいです」
「ほう! それは牛丼が値引きになるとか、そんな感じの奴か?」
「ふふっ、山岸さんも冗談を言うんですね。えっと――、レベル500を達成したので魔法を選択してくださいって出ています」
――いや、マジで聞いたんだが……、俺の時とか牛丼値引きという至高の魔法が出てきたぞ? やれやれ――。
「それで、どんな魔法が表示されているんだ?」
「えっと……、治癒魔法と風魔法と水魔法の3つです。その内の、どれか一つを選ぶみたいです」
「なるほど……」
「どの魔法を選ぶのがいいんでしょうか?」
「治癒魔法でいいんじゃないのか?」
「それは……」
「いや、攻撃は武器があるからな。それに回復が使えれば、それだけ人の役に立つし何かあれば誰かを助けることが出来るだろう?」
「そ、そうですね!」
俺が見ている前で、相沢が何もない空間で手を動かすが恐らく治癒魔法を選んでいるのであろう。
「えっと【治癒魔法I】を取得しました!」
「よし、試しに自分自身に使ってみろ」
「そ、そうですね! ヒール!」
相沢のHPが500ほど回復する。
「なんだか体が軽くなった気がします!」
「ふむ……」
もしかしたらスタミナも回復しているのかも知れないな。
「これなら43階層まで強行軍を出来そうだな」
それにしても……。
レアモンスターと言えどもLV502のモンスターが出てくるとはおかしくないか?
まだ20階層だぞ?
普通のモンスターと出くわしているが、普通のモンスターですらレベル200を超えてきている。
普通に考えたら、どう考えてキャパオーバーだろうに。
本当にレベル53の奴が、43階層まで辿り着けるものなのか?
「無理です! でも丁度いい具合に、あの階段を降りれば21階層ですから休息ができますね!」
「そういえば日本ダンジョン探索協会が休憩所を作っているんだったな」
「はい! あとは、通信端末が繋がらなくなっている事も伝えた方がいいですよね」
「そうだな……」
17階層を超えたあたりで急にレベルの高いモンスターが出てきたばかりか、スマートフォンも繋がらなくなった。
一応、スキル「神眼」があったから迷わずに階段を見つけることが出来たが、後進の冒険者は大変そうだな。
「とりあえず、一度――、鳩羽村の日本ダンジョン探索者協会に報告するとしようか」
「そうですね」
相沢と共に、休憩の階層でもある22階層へと続く階段へと進もう歩きだす。
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