【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。

なつめ猫

ピーナッツマン、メディアの前に出る!(2)




 江原との電話を切ったあと、布団を自分で敷いたあと部屋の風呂場でシャワーだけ浴びる。
 シャワーを浴びたあとは部屋に備え付けのドライヤーで髪の毛を乾かす。

「そういえば、着替えとか持ってきてないな」

 完全に忘れていた。
 下着すら持ってきていない。
 
「とりあえず室内をチェックするか」

 何か着る物があるかも知れないからな。
 
「ふむ……」

 俺は部屋の片隅に置かれている――、漆喰の盆の上に綺麗に畳まれている寝間着用の浴衣を見る。
 どうして、男女の浴衣が一着ずつあるのか気になる所ではあるが――、着替えが無いのだから丁度いい。
 男用の寝間着用の浴衣に着替える。
 
「それにしても、女性用の浴衣も置いてあるとか――、どう考えても佐々木が、同じ部屋に一緒に泊まろうと考えているような気がする」

 思わず考えたことを口走るが、「さすがに、それはないか」と、考える。

 実の母親が、同じ旅館に居るのだ。
 一緒の部屋に男女同衾させるような真似をするとはとても思えない。

「まぁ、鍵を閉めたことだし問題ないな」

 さっさと寝るとしよう。
 まだ寝る時間には早いが、思っていたよりも眠い。
 布団に横になり――、すぐに意識を手放した。



 ――翌朝。

「さむっ!」

 思わず外を見ると一面の銀世界。

「雪か……、山間だからな……」
 
 しかも時期は一月の初旬。
 雪が何時降ってもおかしくはないだろう。
 それにしても……。

 寝間着のまま縁側の方へと向かい外を見るが、牡丹雪のように外の手すりに雪が降るのが見える。
 このままでは交通なども麻痺しかねないな。
 
 ――コンコン

 少し考え込んでいたところで外から扉をノックしてくる音が室内に響く。
  
「はい」
「先輩っ! 佐々木です」
「何かあったのか?」
「先輩、服とか洗わなくて大丈夫ですか? 朝食まで、まだ時間がありますから私が洗っておきますよ!」
「いや、自分で洗えるから。コインランドリーとかはあるのか?」
「…………今! お客様は使えないです!」

 いまの妙な間は何なのか。
 まぁ、客が一人もいないなら、もしかしたら使えないというのもありなのか? と、思ってしまうが、さすがに佐々木も俺の服には何もしないと思い――。

「分かった」

 とりあえずドアを開ける。
 ドアの外には籠を持って佐々木が立っていた。
 
「おはようございます! 先輩、こちらの籠に洗い物を入れてもらえますか? あっ! もちろん下着もお願いしますね! 下着も!」
「…………どうして、2回言った?」
「べ、別に! な、ななな、何でもないですよ?」

 佐々木が目を逸らしながら口笛を吹く。
 間違いなく、コイツは何かを隠している。

「おい、本当にコインランドリーを使えないのか?」
「本当です!」

 俺の問いかけに力強く頷いてくる佐々木。
 その目は真剣そのもので嘘をついているようには――、

「佐々木、コインランドリーは何処にあるんだ?」
「――え? 向こうですけど……」

 佐々木が指差した方へと服と下着を持ったまま歩き出す。

「ちょ! せ、先輩! 先輩の貴重な下着じゃなくて! いまのコインランドリーは、お客様には解放していないんですよ!」
「いや、少しコインランドリーを確認したくてな」
「え!? ――で、でも!」
「一応、俺は出資者なんだから客じゃないだろ?」
「……それは、そうですけど……」

 慌てて俺の後ろを付いてくる佐々木。
 そして――、

「あれ? 香苗さんと相原さん」
「これは山岸様」
「山岸さん、おはようございます。山岸さんは、娘にコインランドリーの場所を聞いてきたんですか?」
「ええ、まあ……。それより相原さん、どうして此処に――」
「さすがに男物の下着を洗ってもらうのはアレなので……」

 佐々木母娘が居ることから、小さな口調で言葉を返してくるが――、

「香苗さん、いまはお客にはコインランドリーは解放していないと佐々木に聞いたんですが……」
「え? 娘がですか?」
「――そ、そんなこと! わ、私……、言ってないような……」
「おい」
「いたたたっ、せんぱいっ! 頭が割れます! いたたたたっ」

 アイアンクローをしながら、「お前は、どうして嘘をついた」と尋問するが口を割るような真似はしなかったが、香苗さんが「まぁまぁ」と、だけ意味深な笑みを浮かべていた。
 
 

 

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