【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。
交渉と面接(7)
香苗さんの案内で到着した場所――、それは本当に村の外れも外れであった。
何せすぐ近くには県道が走っているが――、よくよく見ると先細り行き止まりになっているから。
「それにしても……、ずいぶんと鳩羽村から離れた僻地にあるな」
「……」
佐々木無言。
さすがに、自分自身を東京に運んだことで、鳩羽村の中心地から、周りには何もない県道すら舗装が無くなり行き止まりになった場所近くまで会社が追いやられている現状を見たら何も言えないだろう。
しかも会社は、コンテナを2個繋ぎ合わせただけの物で錆びついている始末。
時間が時間なだけにバスは停まっているが――。
「これは、ずいぶんと型式が古いですね」
車を停めた相原がバスを見ながら感想を述べる。
「そうなんですか?」
車に関しては車種すら判別がつかない俺としては、相原の意見はとても参考になる。
「はい。ただ――、整備はきちんとしてありますね」
「つまり現役だと?」
「そうなりますが……」
どこか含みのある言葉に俺は何かを察する。
「整備が大変とかですか?」
「そうですね。このバスは2台とも、20年前に製造が中止になっている物なので故障したら部品を手に入れるのが大変かも知れません。それに、バスを見てください」
「バスを?」
相原に言われるがままバスを見るが、別段何かしら感じるような物はない。
スキル「神眼」で確認しても製造年月日が1998年と表示されるだけ。
「相原さん、何か――、このバスにあるんですか?」
「はい。2001年に交通バリアフリー法が施行されてから、バスは基本的にノンステップバスが主流になりました。最近では通学、通勤で利用されるバスはノンステップバスが主流です。あと、こういう山間部の年配の人の利用者が多い路線こそ乗り降りが楽なバスが利用されるものなのですが――」
「なるほど……」
たしかに相原の言う通り、此処に停まっているバスは2台とも車椅子も簡単に乗れるような作りにはなっていない。
ただ、佐々木母娘に聞く限り鳩羽村交通の社長は人格者のように思える。
その社長が長年、同じバスを使っているのには何か理由があるような気がしてならない。
――何故なら、佐々木母娘が言う光方という人物が本当に人格者なのなら、バリアフリーのバスを導入するはずだからだ。
「それにしても、さすが相原さん。同業者なだけはありますね」
「広義ならそうですけど、いちおう私は一介の運転手ですから――」
「…………先輩」
俺と相原が話しているのをジッと後ろで見ていた佐々木が指さす方向には、50台半ばと思われる男が事務所から出てくると俺達をギロッと睨みつけてくる。
「ここは、井戸端会議をする場所じゃ――」
「光方さん!」
どうやら、俺達を睨みつけてきた男が光方という男らしい。
どう見ても人格者には見えない。
「どうして旅館『捧木』の女将が、こんなところに……」
男の言葉を遮るかのようにして話しかけた香苗さんを見て数歩、光方という男は下がると、戸惑いの表情を浮かべながら口を開いた。
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