【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。

なつめ猫

交渉と面接(1)




 俺の方が大事か……。
 上目遣いに見てくる佐々木のおでこをデコピンしながら俺は佐々木から離れる。

「佐々木、他に何か連絡とかは入っているか?」
「特には入っていないです」
「そうか……」

 そうなると、次にすることは――。
 
「佐々木、香苗さんとかは?」
「お母さんは、スタッフルームに居ると思います」
「幸村さんや源さんは?」
「幸村さんは、お風呂にお湯を張っていることだと思います。源さんは、夕飯を作っているかと――」
「なるほど……」

 よくよく考えれば、今日は飯を、まだ食べてないな……。

「佐々木は食事を摂ったのか?」
「――え? ううん。私も、一日、何も食べてないです……、色々とあったので――」

 たしかに佐々木の言う通り、最近は、一日がやたらの濃密な気がするな。
 やる事が多いと言うか、以前は仕事と情報収集と家で寝るだけのルーチンワークだったのに……。

「とりあえず夕食を待つ間にパソコンでネットのチェックをしておくか」
「はい!」

 佐々木を連れだってスタッフルームに入る。
 スタッフルームは、長椅子と長机が置かれていて――、その上には俺が香苗さんから借りたノートパソコンが置かれていて――、

「山岸さん? おかえりなさい。本家には行かなかったのね、よかった……」

 心の底から安堵している表情を向けてくる。
 ただ、そんな顔を見せられても、すでに本家に行ってしまっているがな。

「それよりノートパソコンを借りても?」
「――え? ええ――、どうぞ……」

 ノートパソコンを起動後、インターネットに接続しフリーメールボックスを確認すると、メールを一件受信していた。

「差出人は……、桂木か……」
「先輩、先輩」

 長椅子の――、すぐ俺の横に座って一緒に画面を見ていた佐々木が話しかけてくる。
 その表情は、どこか不機嫌そうに見えるが気のせいだろう。

「どうした?」
「桂木って、桂木(かつらぎ) 香(かおり)さんですか? あの――、クリスタルグループの……」
「そうだな」
「もしかして人材を依頼しているのって……」
「クリスタルグループに登録をしているコールセンターで働いたことがある人材と接客受付をしたことがある人をメインでメールを送ってもらっている」
「その人たちが、ここで働くということですか?」
「まぁ、来てくれるならな――、と、言う前提条件になるが……」

 メールを開く。
 すると、電話番号だけ書き込まれている。
 ビジネスメールを重視しろとは言わないが、もう少し要件を書いて欲しいものだ。
 電話番号だけだと、どう対応していいのか迷う。

「とりあえず電話してみるか」




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