【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。
交渉事と宣戦布告(2)
「萬さんからですか?」
額に傷のあるスキンヘッドの男が再度、確認していくが――、
「はい。話を伝えてくれれば……」
「分かりました。少し、お待ちください」
やけに丁寧に言葉を選びながら、俺から距離を取る男。
携帯電話を取り出したかと思うと。
「萬さんですか? 山岸という人物が尋ねてきていますが――。ええ――、はい。分かりました。すぐに――」
どうやら、萬と連絡がついたようだな。
聴覚が強化されているからこそ、話し声が聞こえてきたが聞こえない振りでもしておくとしよう。
「お待たせした。萬さんに確認が取れましたので、ご案内します」
「それは良かった」
男の言葉に頷きながら後を付いていくと、重厚な門が開き音を立てて開いていく。
門を潜り抜ける際に両開きの扉の厚さを確認したが、見た目からして木材と思っていたが断面は金属のソレを思わせる。
一応、スキル「神眼」で確認しておくが――、材質は鋼鉄製。
厳重な警備に鉄の扉――、普通の人間が屋敷の中に招き入れられたら、脱出は難しいだろうな。
「靴は?」
「こちらでお脱ぎください。履物を用意しますので――」
「そうですか」
用意された靴を履き、廊下を歩いていく。
いくつもの部屋を通りすぎ――、奥まった突き当りに案内される。
そこには、襖障子が――。
「こちらで、萬が待っています」
頭を下げて俺から離れていく男。
俺は、男に軽く礼を言う。
そして襖を開けて室内に足を踏み入れた。
「これは山岸直人さん、お待ちしておりました」
部屋の中は畳50畳ほどの広さ。
10人ほどの黒づくめのスーツを来た男が室内に居り、俺と向かい合うようにして白髪の男――、萬(よろず) 勘吉(かんきち)が立っている。
「まぁ、招待されたからな。時間を置くのもアレだと思って来たんだが――、ずいぶんと熱烈な歓迎ぶりで帰りたくなるレベルだ」
肩を竦めながら言葉を返す。
「これはこれは……、ずいぶんとご不安にさせてしまいましたか?」
「いや――、まったく」
俺の返答に口角を上げる萬。
「はははははっ」
高らかに笑う声と共に隣部屋から80歳近い老人が姿を見せる。
ステータス
名前 佐々木(ささき) 雄三(ゆうぞう)
職業 関西広域指定暴力団所属 関西広域暴力団組長
年齢 865歳
身長 161センチ
体重 58キログラム
レベル2771
HP27710/HP27710
MP27710/MP27710
体力17(+)
敏捷16(+)
腕力14(+)
魔力 0(+)
幸運27(+)
魅力 3(+)
所有ポイント 2770
思わずスキル「神眼」で確認したが表示された数字が一瞬、バグったかと思った。
レベルが高すぎる。
普通の冒険者のレベルは50から500前後と聞いていたが、それを遥かに凌駕していることに驚く。
「これは、中々に気骨のある男ではないか」
「……」
「ふむ……。レベルは1か」
老人は、俺を見てくると同時に、スキル「隠蔽LV10」を使ってLV1にしておいたレベルを言い当ててきた。
「どうして言い当てられたのか、不思議か?」
「――いや、魔法か何かだろう?」
それ以外に思いつく答えがない。
今までスキルを持った冒険者に会ったことがないし、佐々木が使っている場面を見た事もない。
そうなると、俺のステータスを言い当てたのは魔法と考えるのが自然な流れだろう。
コメント