【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。

なつめ猫

交渉事と宣戦布告(1)




 佐々木と別れ、アイテムボックスに紙幣の詰まったポーチを仕舞ったあと佐々木家の本家へと向かう。

「スキル「神眼」で見る限り山の中にはカメラの配置はないな」
 
 佐々木のレベルからして何かしらの対策をしていると思ったが、拍子抜けだ。
 相手を過少評価しているのか――、それとも……、何かしらの対策を取っているのか――、どちらかは判断付かないが……。

「どちらにしても狙い目だな」

 圧倒的強者としてふんぞり返っている人間ほど弱点は存在する。
 問題は、その弱点が――、弱者には気がつくことは出来たとしても利用できないという点にあるが……。

 木々の枝を飛び移りながら、佐々木家の本家までの道のりを踏破し――、正門とも思える場所にたどり着く。
 屋敷は、古典的な武家屋敷と言った感じだが、規模が大きい。
 大木の枝に足を掛けているからこそ見渡すことが出来るが――、建造物だけで旅館『捧木』の4倍近くあり、高さ3メートルを超える壁で囲まれている庭の部分を含めると、その広さは10倍以上あるだろう。

「佐々木の本家は金持ちなのか……」

 視界内に表示されている半透明のプレートへと目を向ける。
 念のためにスキル「神眼」で確認したものだが――。
 
 所有権は、佐々木(ささき)雄三(ゆうぞう)。
 土地の広さは3万5千坪か……。
 たしか国会議事堂の広さが3万坪くらいだとネットで見た事がある。
 東京ドームだと、2個ちょいってところか。

 白の漆喰で塗られた3メートルを超える高さが続く壁には幾つか門が設けられており門前には何人もの黒のスーツ姿の男たちが行き来している。
 
「ガードマンには見えないな……」
 
 スキル「神眼」で情報を確認しておく。



 ステータス 

 名前 前田(まえだ) 常光(つねみつ)
 職業 関西広域指定暴力団所属 ※元・検察官
 年齢 29歳
 身長 177センチ
 体重 65キログラム
 
 レベル1

 HP10/HP10
 MP10/MP10

 体力22(+)
 敏捷29(+)
 腕力28(+)
 魔力 0(+)
 幸運 3(+)
 魅力 9(+) 

 所有ポイント 0



「なるほど……」

 念のために壁沿いに屋敷を警護している人間を見ていくが、やはり全員が元・警察関係者。
 ただ――、全員がLV1。

「そういえば、犯罪者はダンジョンに潜る事は出来ないって聞いたことがあるって以前に聞いたな」

 レベルによる恩恵が受けられるのは、ダンジョン内のみ。
 ダンジョン外では、魔法による恩恵しか受けることができない。
 だからこそ、犯罪者はダンジョンへの入場が出来ないように固く禁じられている。

「それにしても……」

 屋敷を警護している全員が――、どこかの暴力団か組に所属している。
 しかも全員が懐には拳銃まで所持していて、周囲を警戒し巡回している事から一般人は近寄ることは出来ないだろう。
 まぁ、あんな強面連中が居るような屋敷には近づきたいという連中はいないと思うが――。

「――さて」

 とりあえず、道を歩いていきたという体裁を保つ為、木々の間を音立てずに移動していく。
 そして少し離れた道路に降り立つ。
 幸い、近くには監視カメラは設置されていない。

 舗装された佐々木家の本家に続く道を歩いていく。
 屋敷が見えてきたところで2人の男が近寄ってくると、

「ここから先は、行き止まりですよ?」

 二人の内、一人がにこやかに笑顔で話しかけてくる。
 おそらく余計な揉め事を起こすなと厳命されているのかも知れないな。

「山岸と言いますが、萬さんから招待を受けて来たんですけど話を通して貰えますか?」

 とりあえず、ビジネスとして最初は対応しておくことにしようか。


 

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