【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。

なつめ猫

外交官ナンバー




 松阪青山線を北上すること10分弱ほどで、鳩羽村まで10キロという道路標識が見えてくる。
 
「山岸様」
「何でしょうか?」
「先ほどから、私達の車を追走してきている車が見えます」
「追走?」

 俺は後ろを振り返る。

「ナンバーは……、外交官ナンバー?」
「山岸先輩、どうかしたのですか?」

 佐々木も気になったのか後部座席に膝立ちになり俺の隣で後ろを見るが――。

「どこかの大使館の車でしょうか?」
「さあな」

 アメリカ合衆国が関与してきたばかりだからな。
 一番可能性が高いのはアメリカだろうが……。

「まぁ、俺に危害が加わらないなら放置でいい」

 どうせ事情なんて分からないんだしな。
 何かあれば対応すればいいだけだ。

「そうですけど……」
「山岸様、社長が運転していたリムジンはロシアの兵士から襲撃を受けたと聞きましたが……」
「ロシアか……」
「先輩、あの時は問答無用で拳銃を撃ってきました」
「ふむ……」

 問答無用で拳銃で撃たれるのは困るな。
 仕方ない。
 スキル「神眼」で後方を確認。


 ステータス 

 名前 ミカエロフ・チェスター
 職業 ロシア大使館職員 一等書記官
 年齢 42歳
 身長 189センチ
 体重 97キログラム
 
 レベル 1

 HP10/HP10
 MP10/MP10

 体力22(+)
 敏捷14(+)
 腕力28(+)
 魔力 0(+)
 幸運 9(+)
 魅力17(+) 

 所有ポイント0



「乗っているのは運転している奴だけのようだな」
「――え? 先輩、よく車内が見えますね」
「目は良い方だからな。それより、ちょっと行ってくる」
「……行ってくる?」

 俺の言った言葉の意味が分からなかったのだろう。
 佐々木は一瞬、首を傾げて呆けた表情を見せた。

「相原さん。車は、少し走ったところに停めておいてください」
「わかりました――って!? 山岸さん! 車の窓を開けて危ないです」
「気にしないでください」

 颯爽と車の窓から身を乗り出し飛び降りる。
 僅かな時間に空中で体勢を立てなおしながら道路の上に着地すると同時に、追走してきていた外交官ナンバーを付けていた車が、俺の事に気が付いたのだろう。

 急ブレーキをかけてくる。
 急停止の音と共に、僅かな距離では停まれず俺に突っ込んでくる。

「――さて」

 俺が突っ込んできた車を左手一本で受け止めると同時に――、周囲に衝突事故のような音が鳴り響く。
 ボンネットは折れ曲がり、車のバンパーは二つに折れ曲がりフェンダーまでもが歪んでいる。
 
「先輩!」

 相原が慌てて車を停車したのだろう。
 佐々木が駆け寄ってくる姿が見えるが――、それを無視して俺は運転席へと向かう。

「ステータスを見る限りだと気絶はしていないようだな」

 俺は運転席のドア部分に手刀をぶち込む。
 それだけで運転席のドアは粉砕され手をドアに手を突っ込んだまま車体からドアを捥ぎ取ると中年の男が真っ青な顔で「Помогите!!! (助けて)」と、叫んでくる。

「どこの言語って、ロシア語しかないか……。日本語を話せるか?」
「Пожалуйста, не убивайте(殺さないでください)!」
「何を言っているのか、さっぱり分からないな」
「先輩、たぶん怯えていると思います。それで――」
「なるほど……」

 少し、驚かせてリムジンの修理費を請求しようと思ったんだが――、思ったよりも驚かせてしまったようだな。

「佐々木、任せられるか? 俺が居るとパニックも治らないだろ」
「はい。お任せください」

 少し離れた場所――、相原が車を停めた場所まで移動する。

「山岸様、危険な真似はしないでください」
「すいません。ちょっと思うところがあったので……」

 相原に言葉を返しながらも、いきなり拳銃をぶっ放してくる連中に俺は手心を加えるつもりはないと考えながら車に体を預けて目を閉じてしばらく待つことにする。

 それにしてもロシア大使館の人間が俺に何の用だ?
 

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