【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。

なつめ猫

肯定と否定(2)




 俺の問いかけに無言で――、それで居て真っ直ぐに俺の瞳を佐々木は見てくる。

「藤堂さんから、どこまで話を聞きましたか?」
「藤堂から?」
「はい」

 何故――、藤堂の名前が此処で出てくるのか……。
 それは、つまり何か話を示し合わせているという事に他ならないのではないのか? 
 そう、思ってしまう。
 
 ――それは、つまり……、俺が藤堂から全部を聞いたと嘘偽りを言えば情報が得られるという事だ。
 幸い佐々木は俺のギルドには入っておらずギルドチャットを使うことは出来ない。

 ――それなら……。

「いや、俺が行方不明になったから俺の部屋に行き情報を得た上で上落ち村に行ったとしか聞いていない」

 ――何を馬鹿なことを……。

 一瞬でも嘘をついて情報を得ようと考えた自分自身に思わず苦笑する。
 夜刀神を倒した瞬間に感じた想い。
 それは、断片的な物であったが夜刀神と接触する事が目的だったように思える。
 だが――、どうして夜刀神を探していたのか、その理由が分からない。
 ただ、以前のように通信会社に就職して情報を得なければという焦りを感じないのは事実であり……。

「山岸先輩?」
「いや――、何でもない。それよりも夜刀神と戦っていた理由を知りたい」
「私達を襲撃してきた夜刀神は、私と契約をしていた狂乱の神霊樹を疎ましく思っていたみたいです。理由は分かりません」
「そうか」

 つまり国津神と言っていた夜刀神との接点は無くなったということか……。

「先輩?」
「そろそろ遅いからな、すまないな。夜遅くにきて――、――ん? ……佐々木、どうかしたのか?」

 話も聞き進展もない。
 帰る為に、コタツから立ち上がろうと佐々木が服裾を掴んできた。

「――あ、あの! 先輩……」

 佐々木が何かを聞こうとして口を噤(つぐ)む。
 
 ――そして何度か唇が開くが想いが声になる事はない。
 ただ、その表情はとても辛そうに見える。
 その気持ちを汲み取って話を聞くべきかどうか迷うが――、果たして俺に……、死んでいるかもしれない――、不確かな存在である自分自身に聞く資格があるのかと問いかけ――、ある訳がないと結論付ける。

「腹でも減っているなら、牛丼でも食べておけ」

 俺はアイテムボックスから牛丼を2つほど取り出すとコタツのテーブルの上に乗せる。
 
「――え? ……先輩、牛丼ですよ? 食べないのですか?」
「お前にやると言っているんだ。食べないなら持って帰るぞ」
「――頂きます」
「そうか。またな」

 佐々木の部屋から出て自分の部屋に戻る。
 そして、パソコンで調べるが――、やはり生存者は妹だけで俺は死亡していることになっている事に変わりはない。

「はぁ――」

 布団の上に横になり天井を見上げたまま、自分のステータスをスキル「神眼」で確認する。
   
 
 ステータス
 
 神性属性:ピーナッツマン ▽信仰力530000
 名前 山岸(やまぎし) 直人(なおと)
 年齢 41歳
 身長 162センチ
 体重 66キログラム

 レベル1(レベル1100)
 HP 10/10(11000/11000)
 MP 10/10(296/11000)

 体力217+〔4774〕(+)
 敏捷215+〔4730〕(+)
 腕力216+〔4752〕(+) 
 魔力100+〔2200〕(+) 
 幸運100+〔2200〕(+) 
 魅力103+〔2200〕(+) 

 ▽所有ポイント  5 



 視界内に表示されているシステムログを確認するが、信仰力が以前よりも跳ね上がっているのが分かる。
 理由は分からない。
 ただ、信仰力というのは恐らく――、推測に過ぎないが信仰対象と認識されている点だろう。
 そして、その信仰対象というのは封印されしピーナッツマンの着ぐるみを着ていたピーナッツマンというのも想像がつく。

「――ん? これ押せるのか?」

 神性属性である信仰力のところで何となくカーソルを持っていくと押せる。
 


 ▼信仰力530000
 
 信仰が無くなった時に、存在自体が消滅し此岸への顕現が不可能になる。
 信仰力が無くなることは存在の消滅を意味する。
 

 
 そこに書かれていたシステムログは、到底看過できるものではなかった。

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