地の底から這い上がる

海月結城

荷物検査

遅くなってしまった。


「ご主人様。今のって」
「あぁ、分かってる。行ってみるぞ」
「はい!」

 俺とにゃぽは何かが起きたであろう場所に向かった。

「多分。ここら辺だよな」
「はい。そうだと思います」

 そして、俺たちはエグいものを見つけてしまった。

「ウッ!? なんだ、これ?」

 そこには、頭と身体がくっついていない死体とそこから溢れ出る血が山ほどあり、その真ん中で女性を抱きしめて泣いている少女がいた。

「き、君! 大丈夫か!?」

 俺は吐き気を抑えながらその少女に近づいた。

「う、うぅ。キレアが、キレアが......」
「こんな所にいたらダメだ。一旦ここから離れるぞ」
「はい。ご主人様!」

 そして、俺たちは血生臭い場所から一旦距離を取るために森の中に出来た小さなスペースに来た。

「君、もう大丈夫だよ。怖い人たちはもういないよ」
「ほんと?」

 少女はこちらを涙目で見つめてきた。

「あぁ、もう大丈夫」
「でも、キレアが死んじゃったの」
「キレアって君が抱きしめていた女性のことかな?」
「うん。盗賊の攻撃で、馬車が転がっちゃって、それから私を助けてくれたの。それで、キレアが、キレアが……」
「そうか。大変だったな。もう大丈夫だよ」

 そう言って、俺は少女を抱きしめた。少女は再び泣いてしまった。それから少女が泣き止むまで抱きしめていた。

「なぁ、君の名前はなんて言うんだ?」
「私は、リリー・キャメルです」
「そうか。リリー・キャメルか。ん? キャメル?」
「はい。私はキャメル王国第三王女です」
「はぁ〜」

 俺は盛大に溜息を吐いた。

「ど、どうなさいました?」
「お前さ、菜津芽って奴知ってるか?」
「えぇ、知っていますわよ」
「そうか。そいつはどんな奴だ?」
「一人、ずば抜けて力があった為に、一人で魔王を倒しに行った、召喚された勇者様ですわよ」
「え?」

 俺はその答えに絶句した。なんたって俺は全く逆の存在だからだ。一人力が無く戦えないから追放された勇者が、本当の菜津芽だ。

「そうか、そうでたかあの国王め」

 俺は奴が考えた作戦に悪態をつけていた。俺はこの後冒険者になろうと思っていた。偽名を使わずに。もしリリーに会わなければ俺はまんまと奴の作戦に乗るところだった。菜津芽で登録して、あの強い勇者様! と思われ、実際はめちゃくちゃ弱い。王様に嘘ついた最低な勇者と呼ばれることになっただろう。

「にゃぽ。ちょっとこっちにきてくれ」
「はい」

 にゃぽを膝の上に置いて撫で始めた。

「落ち着きましたか? ご主人様」
「おう。ありがとうな」

 俺とにゃぽは二人で穏やかな空気を作っていた。そこにリリーが割って入ってきた。

「そ、その猫喋れるんですか?」
「にゃぽは、魔獣だからな」
「魔獣ですか。いいですね。私も欲しいです」
「お前の父親にでも頼んでみたらどうだ?」
「そうしてみます。あ、でも父上許してくれるでしょうか」
「どうしてだ?」
「父上は動物が好きじゃないんですよ。なので、国の中にも魔獣と人の混合種、獣人は国の中に入らなくなってるんですよ。そのせいで、キャメル王国には、ネズミ一匹いないんですよね」
「へー、そうなのか」

 俺はにゃぽを撫でながらそう言った。それをリリーは羨ましく見ていた。

「ま、私にはもう関係ないんですけどね」
「え? どう言うこと?」
「私は死にました。もう国のためって働かなくていいんです」
「お前、まさか!?」
「ちょっ、ちょっと何ですか、死ぬわけじゃないですよ」 
「あ、そうなの?」
「はぁ、最後まで話を聞いてくださいよ」
「ごめんごめん」
「私はあの国がものすごく嫌いです。何もかもが父上の一言で決まるんです」
「何もかもが?」
「はい。税金や人の出入り、人の死さえも」
「人の死って、どう言うことだ?」

 俺はリリーの言葉がうまく飲み込めなかった。

「父上は以前街を見学しに行っていました。その時偶々父上にもたれかかってしまった子供がいました。父上はその子供を死刑にしました。そして、それに抗議した両親も死刑にされました」
「どこまで腐ってるんだあの国は……」
「私はそれがとても許せなかった。ですが、父上に抗議してしまったら私が殺されます。今の私にはあの国を変えるだけの力が無いのです。ましてや、あの国にいたら私までもが腐ってしまう。なので、今回の盗賊騒動はとても都合がいいんです。キレアは死んでしまいましたが、悲しんでばかりでは要られません」
「そうか」

 俺は、リリーの話を聞いて、何も言えなかった。今の俺にはあの国を潰す力はない。今から頑張っても無理だろうと思っていた。

「そろそろ、行きませんか? 着く前に日が暮れちゃいます」
「そうだな。じゃ、シャルル共和国まで宜しく頼む」
「はい!」

 そして俺たちは死体を無視してシャルル王国に向かった。

「あ、ご主人様、見えてきましたよ。あれがシャルル王国の壁です」
「おーーー!! でかいな!!」
「子供みたいな反応ですね」
「いいだろう、別に」
「ご主人様、並びましょう」

 俺たちは長い長い入国者の列に並んでいる。それから二時間後。

「お前たちは何用できた?」
「旅をしていまして、冒険者になろうかと思い、来ました」
「では、荷物検査をする。そっちの嬢ちゃんもか?」
「そうです」
「分かった。おーい、キララを呼んできてくれ」

 門番がそう言うと、奥から女の兵がやってきた。

「キララ、この嬢ちゃんの検査を頼む」
「分かりました。では、一緒に来てください」

 そう言って、リリーとキララは、奥の方に消えていった。

「お前は俺がやる」
「はい。お願いします」

 俺はTの字になり、兵に身体をペタペタ触れた。

「お前さん、どこから来たんだ?」
「キャメル王国です」
「そうか。大変だっただろう?」
「えー、大変でした。ものすごく。二度と行きたくないですね」
「ハハハ!! そこまでか」
「名前も聞きたくないですね」
「そうかそうか、ここは居心地いいと思うぞ、ま、ゆっくりしていけよ」
「はい!」
「よし、大丈夫だな。冒険者ギルドは入って目の前にある大きな建物だ」
「ありがとうございます」

 俺の検査が終わったらちょうどリリーも出てきた。

「お待たせしました」
「じゃ、行こっか」
「はい!」

 そして、俺たちはシャルル共和国に入国した。

「あ!?」
「ご主人様、どうかしました?」
「盗賊たちのこと何も言ってこなかったと思って」
「そうでしたね。どうするんですか?」
「ん〜? 冒険者ギルドに報告すればいいだろう」
「そうですね」

 そして、目の前の大きな建物の中に入っていった。

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