地の底から這い上がる

海月結城

初めての戦い

今回文字が少ないです。


 俺たちはあの後、にゃぽの案内で街道に出ることが出来た。

「にゃぽ、ありがとうな」
「? いきなりどうしたんですか?」
「俺一人だったら、森から抜けられなかっただろうからな」
「そうですね。ご主人様の方向音痴は世界一ですからね」
「そ、そこまで酷くない……と思う」

 俺は、ここが異世界だということを忘れにゃぽとの会話を楽しんでいた。

「!? ご主人様、魔物が来ます!」
「? え? 魔物!?」

 魔物が来ると言われ、魔物、なにそれ? と思い、理解するのに時間がかかってしまった。

「な、何体!?」
「ニ、いえ、三体です! 私が倒しますので、ご主人様は私の後ろで隠れててください!」
「わ、分かった!」

 にゃぽは自分の体を元の大きさに戻した。それと同時に、二体のゴブリンが出てきた。二体のゴブリンはどちらも何かの骨の棍棒を持っていた。
 俺はそれをみて、本当にここが異世界なんだと今更ながらに理解した。

「グギギャ!」
「グギ!」

 二体のゴブリンが何か話して、にゃぽを睨みつけている。

「にゃぽ大丈夫か?」

 大きいにゃぽは喋ることが出来ないので、こっちをチラッとみて「にゃー」と鳴いた。
 そして、ゴブリン二体が左右からにゃぽに棍棒を振り下ろした。

「にゃぽ、危ない!!」

 にゃぽが死んでしまうと思い、俺は声をあげた。俺はそれが杞憂である事をすぐに知ることになった。にゃぽはそれを受け止めることもなく、当たる寸前で避けた。ゴブリンは避けられる事を考えてなかったのか、そのまま前に倒れた。それをにゃぽは二体とも踏み潰した。

「す、凄い」

 俺は、にゃぽの、異世界の戦いを目の当たりにして、少しの間何も考えられなくなっていた。その為、三体目のゴブリンに気づかなかった。それにいち早く気づいたの俺ではなく、にゃぽだ。
 にゃぽはきっと、ここの中で「ご主人様!!」と叫んだだろう。俺の方に向かって走って、いや、もう飛んでいただろう。それほどの勢いで俺を助けようとしていた。しかし、間に合うわけもなかった。

「グギャギャ!!」
「っ!? う……あ……」

 俺は、今まで味わった事のない痛みに声を出さずにのたうち回っている俺に、ゴブリンはとどめさそうとしていた。が、それはにゃぽによって防がれた。

「グギャッ!!」

 にゃぽはゴブリンを強靭な爪で引き裂き、俺を助けてくれた。俺は、背中の痛みで意識を失った。

「……? ここは、どこだ? にゃ、ぽ?」
「ご、ご主人様!? 目が覚めましたか!?」

 にゃぽはそう言って、俺に突進してきた。

「お、おい、にゃぽやめろって~」

 俺は、にゃぽを優しく抱きしめた。

「死んじゃうかと思って、心配死んだですよー!!」
「大丈夫だよ。生きてるから、心配するな」

 俺は、にゃぽの頭を撫でながら、そう言った。

「それに、俺のお腹に強く頭を擦ってると、背中の傷が……あれ?」
「どうしました、ご主人様」
「背中が痛くない? なぁ、にゃぽ」
「どうしました?」
「俺ってどのくらい寝てた?」
「確か、二日だったです」

 俺は、すぐさま上に着ている服を脱ぎ、背中を確認した。
 
「嘘、だろ?」

 俺は、背中の有様を見て絶句した。

「傷が全部治ってる……」
「そ、そんなバカな! ご主人様の傷はたった二日で治るほど生易しいものじゃありません! あんなに血が出てて死ぬかと思ったほどです!」
「でも、見てみろよ」

 にゃぽは、お腹から降りて背中の傷を確認した。

「う、嘘、本当に治ってる。全然傷跡もないし、ご主人様は、治癒魔法って使えないですよね?」
「あぁ、魔法すら知らないからな。治癒魔法なんてもってのほかだ」
「だとすると、ご主人様が元から持ってる能力って事?」
「何言ってんだよ、俺がそんな常軌を逸した力を持ってるわけないだろ」
「そう、なんですかね?」
「そうに決まってるさ」
「ま、まぁ、ご主人様がそう言うならそうなんでしょうね。あ、そういえば、ご主人様、お腹空いてません?」
「確かに、お腹空いてる。そりゃそうか、二日も何も食べてないんだからな」
「こっちに、食べ物を取り置きしておきましたよ」

 そう言って、にゃぽは食べ物がある奥まで歩いて行った。俺もそれについて行った。

「もう夜だから、明日の朝街まで出発しような」
「はい! ご主人様を元の洞窟まで運んだので振り出しからですね」

 にゃぽは、悪戯っぽくにししっと笑った。

「それじゃ、食べたら寝るか」

 俺たちは緑色の林檎みたいな果実を食べて寝た。にゃぽは寝る時になると元の大きさに戻って、俺の布団になってくれている。もふもふだよ~。

「にゃぽと一緒に寝ると、ぐっすり寝れていいね」
「そう言ってくれると、にゃぽも嬉しいです! それでは、隣国まで行きましょう!」
「おー!!」

 俺は意気揚々とにゃぽの前を歩きながら進んでいく。

「ご、ご主人様。逆です」

 俺は意気消沈しながらにゃぽの後ろをついて行った。

「ここが、この間ゴブリンと戦った場所だな」
「そうですね。でも、ここに居てもいい気持ちはしないのでもう行きましょう」
「そうだな」

 俺たちは、街道も道なりに歩いて行った。

「ん? なぁ、にゃぽ」
「どうしました?」
「この先、変な感じするんだが、にゃぽは何か感じないか?」
「特に何か感じるとかはないですよ」
「そうか、にゃぽが言うならそうなのかな」

 俺たちは、何事もなく? シャルル共和国に着いたと、思っていた。


この先を書こうとしたらダメな気がしたので、ここまでにします

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