誰かが夢に落ちた時。

るあ*

崩れた日常

夢見病検査はあっという間に終わった。
基本的には採血と質問なので決して長くはないが、時間の流れが早かったように思える。
他の皆も『あ、もう終わったんだ……?』と首を傾げるぐらいに。

検査の結果はその場ですぐ分かるらしく、幸いにも私のクラスは夢見病にかかってる人はいなかった。
勿論、私もかかっていなかったし友達と一緒に安堵していた。
すると、先生が焦ったように私を呼んだ。
「真橋さん!!!」
嫌な予感がするのは気のせいだろうか

ふと思い出したのは、妹。


満面の笑みの妹。

「妹さんが…………。」
先生が声のトーンを落として残念そうに私を見つめる。
その時、生きた心地がしなかった。
私は足のつま先を通路に向けて一気に駆け出した。
今、廊下を走るなとか言われたらその人を殴っても妹の所へ行ける気がする。
今はそんな校則を守れる自信が無い。


私の命よりも大切な人。

「緋鞠ーッ!!!!」
夢見病対策で新しく出来た【隔離室】のドアを思いっきり開ける。


「ひ、まり…………??」
隔離室のベッドに寝かされている妹の名前を呼ぶ。
眠っているのかその顔は穏やかな顔だった。
細く日焼けしていない妹の手をとり、ぎゅっと握った。

「緋鞠……戻ってきてよ……。」
私の命よりも大切な妹。


天使のような微笑みの緋鞠、


うっすら涙を浮かべている緋鞠、


怒ってもそんなに怖くない緋鞠、

どんな表情も生まれときからずっと見てきた。

でも、やっぱり緋鞠は、
満面の笑みがすごく似合っている。

緋鞠は、私よりもずっとしっかりしていた。
あの子が姉でも違和感など一つもなかったと思う。
 

でも、緋鞠が妹で、私の家族で
本当に良かった。

だから、戻ってきてよ。






「お、姉ちゃん…………?」

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