誰かの心臓になれたなら。

悠月 ミトラ

ナツキさん

彼女のことをもとから知っていた訳でもないのに時々うっすらと彼女らしき像を見る。

それが何かどーゆう原理かも知らない。

暖かいココアの入ったマグカップを僕に渡すとナツキさんはニッコリと笑った。
僕は

「心臓って……どーゆーことですか?」

と質問を繰り出した。が、ナツキさんの返答は無い。聞こえてないのかと思いもう一度声をかけようとした時だった

「あの……」

という僕の声を遮って

「天利くんはさ、心臓ってなんだと思う?」

と逆に質問が帰ってきた。

「臓器?」

思ったままの答えを言いすぎたか……と思い左手で口元を抑えた。

「やっぱそうだよね!」

明るい笑顔を僕に向けたのになんだか悲しくて辛くて切ない顔をしていた。

訳が分からなかった。というのが素直な感想だ。
それとともに、何かにずっとひっかかっていた。
それが何かすらも掴めていないが。

「体調、良くなったら帰りなよ。」

小さくナツキさんが言葉を吐いて隣の部屋へと姿を消した。

「はい」

としか言えず僕は黙って荷物をもち、上着を着た。
玄関の戸を開けようとしたた時だった

「うっ……うぅ」

明らかにナツキさんのものであろう嗚咽が聞こえた。






















そして僕の意識は途絶えた。

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