神様のヒトミ

さとう

133・いざフェンリルへ



 リアンの町にて、アイトは執務の真っ最中だった。
 もうじき大地の国フェンリルにて総会が行われる。なので、領主の確認が必要な仕事を急いで終わらせ、数日の内には出発する予定だ。
 執務室には珍しくアイトが一人。ルゥとランは外回り、ギャングはウルフィーナの見舞いに出かけてる。なので紅茶を啜りながらのんびりと仕事をしていた。
 すると、アイトは執務室の一角から濃い魔力を感じた。


 「ふぅ……ん?」
 「やぁ、お邪魔するよ」
 「え、あ、ら……ラクシャーサさん!?」


 そこに現れたのは、ラクシャーサだった。
 テレポクリスタルを送ってからラクシャーサは、時間があればリアンの町に来るようになっていた。主にリュコスやシアに会いに来るという理由だが。


 「悪いね。どうも転移先がこの部屋になってるみたいで……」
 「いやいや、お疲れ様です。今お茶を」
 「そうだね。よろしく頼む」


 アイトはラクシャーサにソファを進め、アスルルが届けに来る紅茶を煎れる。
 いい香りのする紅茶はアイトの鼻孔をくすぐり、自分の分もお代わりを入れて座る。


 「いい香りだ。さすが【深緑人アールヴ】だね」
 「はい。アスルルさんのお茶は絶品ですよ。あの【土作人ドウェルグ】が夢中になるのもわかります」


 アイトは二人のヒゲオヤジを思い出しながら紅茶を啜る。
 しばらく無言でお茶を楽しんでいると、ラクシャーサが本題を告げる。


 「アイトくん。総会のことだが」
 「ああ、数日後には出発します」
 「そうか。フェンリルはここから1週間ほどの距離だ。そこで申し訳ないんだが、シアを連れて帰っても良いだろうか」
 「シア?」
 「ああ。ああ見えてシアはフェンリルのお姫様だからね。総会には出席させたいし、マーナガルムもシアに会いたがってる」
 「それなら……ええと、マーナガルム?」
 「ああ、オレの親友でシアの姉みたいなものだ。もうすぐ子供が生まれるし、シアに会わせることで彼女を安心させたいんだ」
 「なるほど」
 「申し訳ないが、学校は暫く休学させてくれ。それと、もし良かったら、アイトくんと一緒にフェンリルまで来てくれないか?」
 「え、でも、ラクシャーサさんなら一瞬で行けるんじゃ……俺は徒歩だし、時間が掛かりますよ?」
 「なに。アイトくんと一緒ならシアも喜ぶ。あの子はああ見えてキミのことが大好きだからね、旅行も兼ねて一緒に来てくれ」


 アイヒ曰く。アイトとラクシャーサの中にあるテレポクリスタル同士が干渉を起こすため、アイトはラクシャーサの転移に付き添えない。なのでアイトは地道にフェンリルまで向かわなくてはならないのだ。
 そこにシアを同行させ、案内がてら一緒に行くと言うことだ。


 「わかりました。さっそくシアに言ってみます」
 「ああ。オレは仕事があるから失礼するよ。それではまた」
 「お疲れ様です」


 ラクシャーサは去って行った。
 アイトはさっそくシアの元へ向かおうと立ち上がり、領主邸を後にした。




 「そろそろ学校も終わるし、迎えに行くか」




 **********************




 町を歩いていると、前から女の子の集団が歩いてきた。
 ミコト、ライラ、シア、ルカ、サラ、ガーネの六人組だ。全員が楽しそうにお喋りし、手にはクレープが握られてる。どうやらみんなで買い食いしたらしい。
 アイトの姿に気が付いたライラが指を指すと、六人はダッシュでアイトの元へ来た。


 「いっちばーんっ!! にゃうっ!!」
 「がぅぅっ!! にばん……」
 「わふぅ、さんばん」
 「ぱおーんっ!! よんばんっ」
 「あぅぅ、ごばん……」
 「しゃぅぅ……ろ、ろく、ばん……はぅぅ」


 最初にゴールしたミコトがアイトに飛びつき、アイトはミコトを受け止める。
 ネコ耳を優しく揉みながらみんなに言う。


 「おかえりみんな。今日も楽しかったか?」
 「うんっ!!」


 ミコトはにっこり笑い、みんなが今日の出来事をアイトにまくしたてる。
 アイトはそれを聞きながら、シアに向かって言う。


 「実は、シアに用事があってきたんだ」
 「がう? あたいに?」
 「ああ。近々フェンリル国で総会があるんだけど、シアも一緒に来て欲しいってラクシャーサさんに頼まれたんだ。それで俺をフェンリル国まで案内して欲しいんだ」
 「がうっ!? じゃあアイトと遊びに行けるの?」
 「遊びじゃないけどな。それと学校もしばらくお休みだ」
 「がぅ……でも、アイトと一緒なら行く」
 「にゃぅぅ、いいなー」
 「あう。わたしも行きたいー」
 「フェンリル国ですか……私も興味があります」
 「ぱおーん。私もです」
 「わふ。私も行きたいよ」


 アイトはそれぞれの頭を撫でる。
 みんな気持ちよさそうに目を細めるのがとても可愛らしかった。


 「出発は……3日後だな。よろしくな、シア」
 「うん!! アイトとお出かけ!!」




 こうしてアイトは、シアと共にフェンリルへ向かうことに。




 **********************




 3日後。大きなリュックを背負ったシアと共に自宅前に。
 見送りはリュコスだけ。他のみんなは学校や仕事に出かけた。


 「かーさま、あっちで会おうね」
 「ええ。アイトくん、シアをよろしくね」
 「はい。任せて下さい」
 「がぅぅ、アイト」


 アイトはシアの頭を撫でながらリュコスに挨拶する。
 最初に会った頃とは違い、ここまでよく懐いたものだとアイトは思う。


 「じゃ、いってきまーすっ!!」
 「行ってきます。リュコスさん」
 「いってらっしゃい」


 リュコスは後ほどラクシャーサが迎えに来る予定だ。ここからフェンリルまでの1週間、シアと一緒に進んで行く。


 「アイト、最初は山を越えて行くよ」
 「わかった。案内は頼む」
 「うん!!」


 シアの先導で、アイトは歩き出した。

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コメント

  • ノベルバユーザー252041

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