神様のヒトミ

さとう

132・とある旅人の記録



 ここに、1人の旅人がいた。


 旅人は大きなリュックを背負い、腰には護身用の小剣を装備。
 顔立ちは平凡で、年齢は20代後半から30代前半ほど。
 1人旅で、リアンの町へ降り立った。


 「……いい町だな」


 旅人は町を見回す。
 人々は多く、冒険者や傭兵たちもいる。
 建物の数も多く、商店も多い。


 「さて、宿を取って観光するかな」




 旅人は、町の中を歩き出した。




 ***********




 旅人が思ったことは、この町の職人のレベルが以上に高いことだった。
 武器防具屋は土作人が経営し、装飾品屋は緑深人が経営してる。
 それぞれが魔帝族の奥地に住む種族なだけに、旅人は驚いた。


 そして、この町の守護者にして領主。
 16歳ほどの少年が、1年未満でここまでの町を作り上げたという事実。


 「この町は……まだまだ大きくなる」


 旅人は町の散歩をしながら歩く。
 すると、旅人の前を子供達が通って行く。


 「にゃう、今日はひみつきちで遊ぶ?」
 「わふ、そーだね」
 「がうがう。その前にクナイの店でお菓子買ってこー」
 「あぅぅ。おかし」
 「あの、買い食いは怒られるんじゃ……」
 「ぱおーん!! ちょっとぐらいいいのです!!」


 亜人ジューマンの少女たちは、駆け足で進む。
 そして、何故か薬屋に入って行く。


 その光景を眺めながら、旅人は町を歩く。
 学校に教会など、特徴的な建物がいくつもある。
 その中でも、温泉は特に賑わいを見せていた。


 「さーて、オフロオフロ♪」
 「ふふ、ご機嫌ねステラ」
 「ふっふっふ。まーね」
 「ま、最近チョーシいいもんネ」


 冒険者らしき3人の少女が温泉に入っていく。
 旅人は温泉の外に、小さな小屋を見つけた。


 「ここは……?」


 そこは、おにぎりを販売する専用の建物。
 冒険者たちからは大人気で、ダンジョンの中で食べる携帯食として人気を誇り、定期的に出る新商品は、この町を拠点にする冒険者たちの楽しみの1つになっていた。


 町は明るく広い。
 歩けば歩くほど色々な発見がある。
 そのまま歩き続けると、目の前に1人の少年が歩いていた。


 「ふぁ……」


 少年は黒いコートのような服を着て、手には指ぬきグローブをはめている。
 欠伸をしながら歩き、その姿は領主には見えない。




 旅人と目が合ったアイトは、軽く会釈した。




 ***********




 旅人も会釈を返し、そのまま通り過ぎる。


 「今のが領主か……若いな」


 16歳。
 まだ子供であるが、隙は見えない。
 まるで歴戦の兵士のような、そんな風に見えた。


 「あのー……」
 「っ!?」


 そして、アイトは旅人に声を掛けた。


 「な、何か……?」
 「いや、何か困ってるように見えたんで」
 「い、いえ、得には」
 「そうですか?………じゃあ、これで」
 「は、はい」
 「困ったことがあったら傭兵や俺に言って下さい。この町にいる人は、みんな大事な人ですから」
 「あ……ありがとう、ございます」


 旅人は心臓が止まるかと思った。
 そして、アイトの中に、揺らがない心があるのを見た。
 町のため、そして人のため、彼は力になろうとしてる。


 彼の中にあるのは、この町や人のために出来る事をすること。
 それは彼の行動理念で信条とも呼べる。
 でなければ見ず知らずの旅人に、あそこまで言えるワケが無い。


 「黒い少年の信条、か……」




 旅人は、ポツリと呟いた。




 ***********




 数日後、旅人はリアンの町を後にした。


 旅人は町から出て歩く。
 日も暮れ始め、野営の準備をする。
 テントを組み立てた旅人は、ポケットから5つほどのガラス玉を取り出した。


 「……ふむ」


 指笛を鳴らすと、1羽の大きな鷹が現れる。
 ガラス玉を布に包み、鷹の足に括り付ける。


 「頼むぞ、いつも通りにな」


 鷹をなでると、そのまま飛び立つ。
 飛び立った先は、ヒューム地域の中心国であるデューク王国。


 「いい町だった。そして……いい少年だ」


 黒い少年。
 そして、少年が掲げる信条。




 「アイト……強いて言うなら、『黒き信条アサシンクリード』と言った所か……」




 旅人はポツリと呟く。
 その顔は笑みが浮かんでいた。




 旅人……【無限光の11人アインソフオウル・イレブン峻厳ゲブラー】ギボールは、夜空を見上げた。



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