神様のヒトミ

さとう

131・それぞれの過ごし方②



 学校が終わった帰り道。ミコトとシアはウルフィーナの家に向かっていた。
 ライラとルカはリュコスと勉強し、サラはギルドへ、ガーネはアスレイの会社に向かったので、2人で歩いている。


 「にゃう。ライラたちも来ればいいのにー」
 「仕方ないよ。2人は勉強好きだし、後でかーさまと一緒に行くってさ」
 「ふにゃ。ライラはずっとお勉強したかったみたいだし、しょうがないよね」
 「がう。ライラ、すっごく頭がいいみたい。かーさまも驚いてた」
 「そーなの?」
 「うん。一度教えたことは忘れないって、それで、ウチにある本をあげたり、商人が売りに来る本を買ったりしてたよ」
 「すごいね。そーいえば分厚い本がウチにあった。あれってライラのだったんだ」


 2人は町のお菓子屋で買ったクッキーをお土産に、ウルフィーナの家に向かう。
 いつもギャングがお菓子を用意してくれているので、お返しにと買った物だ。


 「にゃう。あかちゃん、いつ生まれるんだろう」
 「ふたごだって。楽しみ」


 お喋りしながら歩いていると、ギャングの家に着いた。
 ギャング夫妻の家は変わっていない。立地も集落の時から同じで、建物もそのままだ。
 ミコトはドアをノックすると、ギャングが出迎える。


 「おっちゃん。今日も来たー」
 「がう。ウルフィーナは?」
 「ああ。元気だ。入れ」
 「「おじゃましまーす」」


 1階の寝室に案内され、揺り椅子に座るウルフィーナがいた。
 お腹は大きくなり、その姿は妊婦そのもの。
 ミコトとシアはリュックからお菓子を取り出した。


 「にゃお、これ食べて」
 「がう。あかちゃんもきっと喜ぶよ」
 「まぁ、ありがとう」


 クッキーの包みを受け取り、ウルフィーナは1口囓る。
 サクッといい音を立て、ウルフィーナは微笑んだ。


 「美味しいわ………すっごく」
 「にゃふふ、よかった」
 「がう、ねぇねぇ、お腹さわっていい?」
 「ええ、どうぞ」


 ミコトとシアはウルフィーナのお腹をなで、耳を当てる。
 ウルフィーナは、そんな2人の頭をなでた。


 「……にゃ、聞こえる」
 「がう。どくん、どくん、どくん……聞こえるね」
 「ねぇねぇ、いつ生まれるの?」
 「もうすぐね、あと1月半くらいかしら……」
 「赤ちゃんかぁ……」
 「あたい、抱っこしてみたい」
 「あ、あたしもー」
 「もちろんよ。お姉ちゃんになってくれると嬉しいわ」
 「お、お姉ちゃん……きゅぅん」
 「ふにゃ……」


 するとギャングが、お盆にジュースとお菓子を乗せて現れた。
 お菓子は、2人の大好きないちご大福だった。


 「さ、おやつの時間だ」
 「にゃうーっ!!」
 「がうーっ!!」




 幸せな時間は、こうして過ぎていく。




 ***********




 リアンの町にある人気の宿〔サクラの森〕
 そこの主人であるヤドは、忙しい日々を過ごしていた。


 「あなた、2号室と3号室の清掃が終わったわ。それと、スイートルームの照明の調子が悪いの、見てくれないかしら」
 「わかった。今行くよシュクレ」


 〔サクラの森〕は改装と増築を重ね、リアンの町で最も大きく1番人気の宿となっていた。
 そして1番変わったことと言えば、ヤドがシュクレにプロポーズし、再婚したことだ。
 娘であり姉のハクと弟のトマルはシュクレを実の母のように慕い、今日も元気に学校に通っている。


 トマルは5歳ながらにして計算や帳簿の整理などの勉強を始め、ヤドの宿を継ぐとはっきり宣言し、日々勉強を続けている。
 そして1番驚いたのは、姉のハクのことであった。


 以前、アイヒがヤドの元を訪ねてきた時のこと。


 「ヤドさん。ハクちゃんは相当な魔術の才能があります」


 アイヒ曰く、この町でも類を見ない才能らしい。
 ヤドには伝えなかったが、成長すれば【無限光の11人アインソフオウル・イレブン】クラスの使い手になるとアイヒは踏んでいた。
 もちろん、どんな道に進むかは、ハク次第。


 「あたし、まじゅつしになるー!!」


 子供だからか、ハクは理解していないかも知れない。
 現在はその才能を引き延ばすことを優先して指導を受け、毎日楽しそうに帰って来る。
 一緒に食事をしたときなんて、学校の話題で持ちきりだった。


 「さて、これでいいか」
 「ありがとう……うん。ちゃんと点くわね」


 最上階のスイートルームの照明を調整し、ヤドとシュクレは1階に降りる。


 「忙しいな……」
 「ええ。忙しいわ」




 どこか嬉しそうに、2人は呟いた。




 ***********




 〔ホウテン武具店〕には、金属を打つ音が響いていた。


 ホウテンの弟子は7人。
 それぞれが一流とも言える職人だが、誰一人としてホウテンから独立しようと考えたことはない。
 ヒノの町にあるホウテンの武具店を継いだ弟子ですら、当初は不満を漏らしていた。


 そして現在。ホウテンはダマスカス鉱石を加工して武器を作っている。
 鍛冶屋としてダマスカス鉱石に触れる機会は殆どない。
 ホウテンですら1000年ぶり。それも、鍛冶屋としては二流だったころに打ったことがある。
 当然ながら武器は作れず、自分の腕の未熟さを恥じた。


 それから1000年。
 ホウテンは鍛冶王として名を馳せ、土作人として最高の腕前を持っている。
 今なら、出来るかもしれない。


 その思いが、ホウテンの腕を動かす。
 冒険者たちが持ち込む武具の修理や作成を弟子に任せる。
 ミスリル装備にはまだ手を付けず、ホウテンの持つ全ての技術を使い、ダマスカス鉱石を加工する。


 弟子は迷うことなく店を臨時休業し、ホウテンから技術を盗もうと目をギラつかせる。
 今のホウテンには、アスルルの声すら届かないだろう。
 ホウテンは気付かなかった。




 全く同じ光景が、〔ベッコウ防具店〕でも起きていることに。



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