神様のヒトミ

さとう

130・それぞれの過ごし方①



 アスレイと契約をして10日後。
 〔ヘレネド鉱石商会〕の拠点をリアンの町に移し、本格的な鉱石発掘が始まった。
 案の定、ミスリルとダマスカス鉱石の鉱山で、それ以外にも鉄や銅などの鉱山も発掘出来たので、アスレイは大喜びだった。
 発掘した鉱石は加工され、輸出用の鉱山以外は町に卸され、ベッコウとホウテンの武器防具屋に卸された。


 そして、アスルルの装飾品店にも。


 「久しぶりね、アスレイ。元気だったかしら?」
 「姉さん‼ 貴女はもう······この500年間、どこで何をしてたんですか‼ 連絡も寄越さないで、故郷の皆も心配してましたよ⁉」
 「そうなの? でも、パパやママは心配してないでしょ?」
 「む、そ、それは······」
 「うふふ。あの2人は私のことを分かってるから、心配なんてしてないと思ったわ」
 「······た、確かに。父と母は放っておけと言ってましたが」
 「そういうこと。さぁお茶にしましょう。美味しいハーブティーとクッキーがあるわ」
 「い、いや、ボクは仕事中で」
 「ふふ、いいじゃない。可愛い弟のこれまでの話を聞きたいし、貴方も私のこと聞きたいでしょ?」
 「······はぁ。姉さんのペースに巻き込まれたら終わり、か」




 アスレイは観念し、アスルルは微笑んだ。




 **********




 「······うん。順調に育ってますね」
 「そうですか······」


 リアンの町、ウルフィーナとギャングの家。
 アイトの指示により、エルは毎日往診を行っていた。
 ウルフィーナの傍には、ハラハラしたギャングがいる。
 ここ最近の当たり前の光景に、エルは少し苦笑した。


 「魔帝族は出産が早いので、あと一月ほどで出産ですね。失礼ですけど、ウルフィーナさんは出産に立ち会ったことはありますか?」
 「はい。リュコス様の出産時に、お側に控えさせて頂いた程度ですが」 
 「そうですか、じゃあ今度はリュコスさんに手伝ってもらいましょうか。実はわたしも経験がないんで、少しでも知識がある人に教えて貰ってるんです」


 エルは、町に赴任してきた魔術医に、出産のための知識を教えてもらったりして勉強していた。


 「あの、赤ちゃんの名前は決まってるんですか?」
 「······はい。ね、ギャング」
 「う、うむ。男の子がヴァン、女の子がアセナです」
 「ふふ。ギャングが目を血走らせて考えて、それを見かねたラクシャーサ様が一緒に考えてくれたの」
 「へぇ〜、いい名前ですね」




 エルとウルフィーナは微笑み、ギャングは照れていた。




 **********




 「やっほ、アイヒ」
 「あ、ルシェラさん」


 学校にて。
 授業を終えたアイヒが職員室に戻ると、教師個人に割り当てられた机の上で、お茶を飲んでいた。


 「ルシェラさん、確か実技の指導でしたよね」
 「うん。これから子供達をみっちり鍛える予定。だから甘いの食べて力付けないとね」


 クナイの店で買った、保存用の大福をかじりながら言う。
 すると、大福の1つをアイヒに差し出し、ルシェラは言う。


 「それにしても、ウチがこうして子供達を指導する立場になるなんてね。人生わからないモンね」
 「ふふ。アタシだってそうですよ」


 アイヒは大福を受けとり囓る。
 モチモチとした食感と、甘いあんこが口の中に広がる。


 「ま、悪くない……っていうか、楽しいわね。アイヒとミレイにも会えたしね」
 「それは、アタシも同じです。えへへ」


 2人は大福を食べながら語り合う。
 学校の増築工事は進み、入校希望者も増えていること。
 教師の確保も順調で、他の領土からも希望者が集まっていること。
 話すことは尽きることが無い。


 「よかったら、今度の休み遊びに行きません?」
 「いいわね。ミレイも誘って買い物しましょ」
 「はい!!」




 授業が始まるまで、2人は楽しく語り合った。




 ***********




 「で、昼間っから吞んでていいのかのう」
 「うるさいね。仕事は終わらせたから、問題ないのさ」
 「ふふ……はい、おかわり」


 ラピスの酒場にて、とある男女が昼間から吞んでいた。
 冒険者ギルド長クロウリー、錬金ギルド長ヒュドーラ、そして酒場の女店主ラピスである。


 「仕事ねぇ。ところでヒュドーラ、お前さんの作るポーション類の評判はかなりいいぞ。この前、ダンジョンで大怪我した冒険者がポーションしか持ってなかったんじゃが、そのポーションを飲ませたら、ハイポーション並の回復力が備わってたとな」
 「………それはいつの話だい?」
 「ああ? おとといじゃの。5日前に納品したポーションじゃが」
 「………そうかい」
 「おばさま?」
 「なんでもないよ。ほれクロウリー、飲みな」
 「お、おぉ!? お前さんのオゴリか!?」
 「いいから飲みな。頭からぶっかけるよ?」


 ヒュドーラは何故か上機嫌だった。
 クロウリーは訝しんだが、ラピスは何となく気が付く。


 5日前に納品したポーション類は、サラが作った物。
 それが褒められたのが、師として嬉しいのだろう。




 ラピスはクスリと笑い、新しい酒を注いだ。



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