神様のヒトミ

さとう

128・ガーネ

 
 アイトたちが転移したのは、領主邸の庭だった。


 「おぉ、これが転移ですか。空間系の魔術、そして完成度も高い。素晴らしい」
 「んなこたぁどーでもいーんだよアスレイ、相変わらず固てー野郎だ」
 「ははは……あれ?」


 アイトの視線の先には、庭で遊ぶ子供たち。
 ミコトにライラ、シアとルカ、そしてサラがボール遊びをし、その光景をラクシャーサとリュコスが見守っている。
 どうやら学校は休みらしく、アイトたちを見て驚き、ラクシャーサはブラフマーを見て仰天していた。


 「ぶ、ブラフマー!? なぜお前が!?」
 「ようラクシャーサ、オメーまで居るとは思わなかったぜ、ばっはっは!!」
 「………アイトくん、帰った早々スマンが、説明を」
 「は、はい」
 「ん? おぉ、小っこいのがたくさんいるな。よしガーネ、遊んでこい!!」
 「ぱ、ぱぉぉ……ちちうえ」
 「大丈夫、私が一緒に行きましょう」


 アイトはアスレイとブラフマーを連れラクシャーサと領主邸に。
 クナイはガーネを連れミコト達の元へ。


 「おかえりクナイ!! その子は?」
 「わふ? ゾウさんだ」
 「がう!! あたいはシア、よろしくね」
 「あたしルカ、こんちわー」
 「こ、こんにちは。私はサラと申します」
 「ぱ、ぱおーん!! わたしはガーネ!! よろしくです!!」


 吹っ切れたのか、胸を張り自己紹介するガーネ。
 ミコト達はもう仲良くなりワイワイ話し始める。
 その様子を、クナイとリュコスが眺めていた。


 「なるほどね。あの子も……」
 「はい。シアと同じ【災禍の魔獣オーバーロード・ビースト】です。【魔帝十二神将】の子供という点では、シアと境遇が同じですね。それに、父親であるブラフマー様からも愛されています」
 「そう。それにしても凄い光景ね。伝説の12体の魔獣が、半数揃っているなんて……」
 「確かに。ですが、私たちから見れば、ただの可愛い子供です」
 「そうね。うふふ」




 ミコト達は6人になったので、3対3でドッジボールを始めた。




 ***********




 執務邸にブラフマーたちを案内し、応接間に通す。
 ルゥとランは仕事中、ギャングはウルフィーナに付き添っている。
 突然の【魔帝十二神将】の登場に、2人はかなり驚いていた。


 応接間のソファにブラフマーとアスレイは座り、アイトとラクシャーサは対面に座る。
 ランがお茶を出したところで、ラクシャーサが切り出した。


 「久しぶりだなブラフマー。変わりないか?」


 お茶を一気に飲み干し、茶菓子のまんじゅうをモグモグ食べながらブラフマーは言う。


 「あったぼうよ。オレは変わらねーさ。仕事して遊んで飲んで食って……んん、この食いモンすっげぇウメーな!!」
 「あ、それはまんじゅうです。たぶんこの町にしかないお菓子です」
 「ほぉぉ……」


 クナイが作った饅頭である。
 ラウル農園で栽培した小豆を使い、クナイの駄菓子屋で販売してる。
 ウルフィーナの好物であり、お客が来たときの茶菓子として振る舞われていた。


 「で、ここに何の用だ?」
 「ああ、アスレイの仕事の手伝いと温泉にな。それとガーネのダチに会わせてやろうとな。なぁラクシャーサよ、オメーも娘を持つなら分かるだろ?」
 「………まぁ、な」
 「へへへ。オメーの娘と会わせてやりてぇと思ってたのよ。境遇も似てるし、いいダチになれそうだしな」
 「やれやれ、お前は相変わらず本音しか語らない。他のヤツなら警戒するが、お前なら心配ないな」
 「ああ。っつーワケで暫く厄介になるぜ。アスレイ共々よ」
 「は、はい」


 アイトは部屋の隅にいたルゥに視線を巡らせると、ルゥは部屋を出た。
 どうやら来客のため、この執務邸にある宿泊部屋の支度に向かったようだ。


 「では話も纏まった所で、アイト様、山へ案内して貰えますか?」
 「はい、じゃあ行きますか。ブラフマーさんは?」
 「おいおい、仕事はキチンとやるぜ?」
 「それと、ガーネはどうします?」
 「うーん。同年代の娘と遊ぶ機会なんてなかったからなぁ、暫く遊ばせてやるか」




 アイトたちは、裏山へ向かった。




 ***********




 アイトは修行で使った山を、〔裏山〕と呼んでいた。
 街道が整備されているので登る者はおらず、仮に整備されていなくても近隣の町からコースが外れるため、狩猟以外では近づく者さえいない。
 ガロンたちがいた時も、狩り以外では入る事もなかった。
 山にはマッドコングが現れるが、個体数も少ないためそう現れることはない。比較的安全な山でもあった。
 アイトとミコトは、修行のついでにアプの実や川を流れる魚を捕獲したりした、なじみ深い山であった。


 「まぁ、そんな感じの山です」
 「………なるほど」


 崖と岩場地帯に来たアイトは、アスレイに言う。
 意外なことにアスレイの身体能力は高く、岩場を飛ぶアイトにぴったり着いてきた。


 「ふむ、では……」


 アスレイは崖に近づき、崖の斜面に手を触れたり岩を触る。
 ブラフマーはのんびりしながら岩に腰掛けてた。


 「アスレイは《鉱石鑑定》のアビリティ持ちだ。鉱石に関しては右に出るモンはいねーぜ?」


 ブラフマーがのんびり言う。
 岩を持ったまま、アスレイが振り向いた。


 「親方、ここは大当たりかもしれません……」
 「お、マジか!?」
 「はい、これを……」
 「お?…………お、おぉ!? マジかよ……!?」


 アスレイが手にしていたのは、濃い青の石と黒い石。
 アイト特に気にしなかったが、よく見かけた石だ。


 「あの、それが何か?」
 「これは…………ミスリルとアダマンタイト鉱石です」
 「はぁ。スゴいんですか?」
 「はい。とんでもなく」


 アスレイは若干青ざめていた。
 ブラフマーですら唖然としてる。


 「ミスリルはデズモンド地域で最も硬く、武器防具に加工すれば最高級品の物が出来上がります。当然ながら価値は高いです。一般的な鉄の剣が3万コインだとすると、ミスリルソードは300万コインは下らないですね」
 「え」
 「ミスリルは傭兵や冒険者にとって憧れの装備品です。現在、ミスリル製品を加工できる鍛冶屋は殆どいません。それこそ鍛冶に特化したアビリティを持つ職人で、なおかつ鍛冶レベルがマックスの鍛冶屋でないと、加工すら出来ないでしょうね」
 「………鍛冶レベルマックス」


 アイトの中に、2人の土作人ドウェルグが思い浮かぶ。


 「それと、アダマンタイト鉱石ですが……。この鉱石はドドド鉱山でも僅かな量しか発掘出来ません。それに、発掘出来るのは国王の依頼を受けた鉱石会社のみで、決められた量を発掘することしか出来ません。故に一般的に出回ることはまずありません」
 「そ、それもスゴいんですか?」
 「当然です!! こんな無造作にミスリル鉱石とアダマンタイト鉱石が落ちてるなんて、私は目を疑いましたよ!! 恐らくこの岩場を掘り進めば、大量の鉱石が発掘出来るでしょうね。これだけの量なら、〔ヘレネド鉱石商会〕の全てをこちらの【羅刹天領土】に移して商売してもいいくらいです!!」
 「え、じゃあ」
 「はい。即決で決めました。アイト様、どうか発掘の許可をいただけませんか。是非とも我が商会とこの町で専属の契約を結びたい」
 「もちろんです。それに、いい鉱石があれば町の傭兵団の装備も新調出来るし、武器防具屋のラインナップも増えるでしょうしね」
 「それはそうですが、職人に心当たりでも? よほどの腕前が無ければミスリルは加工出来ませんよ? それに、アダマンタイト鉱石なんて加工出来れば、《魔装具カラミティアームズ》クラスの武具が出来上がりますよ?」
 「大丈夫です。ちょっと色ボケだけど、腕のいい〔土作人ドウェルグ〕が居るんで」


 ブラフマーはミスリルとアダマンタイト鉱石を見て唸っていた。
 どうやら本物か見極めているらしい。


 「じゃあ、執務邸に帰りますか。そこで契約しましょう」
 「はい。いやぁ、素晴らしい出会いに感謝します」
 「元はと言えばアスルルさんのおかげですよ。後で一緒にお店に行きましょう」
 「そ、そうですね……」


 アイトたちは、町に帰還した。



「神様のヒトミ」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く