神様のヒトミ

さとう

126・ドドド鉱山



 ドドド鉱山。
 それは【梵天領土】最大の鉱山であり、様々な鉱石が発掘される山である。
 1日中鳴り止まない轟音は町の名物にもなり、そのやかましさからドドド鉱山と名付けられたほどである。


 ドドド鉱山にはいくつかの入口が存在し、ロックドラム中にある鉱石会社によって入口が分けられ、各会社はそれ以外の入口から中に入ることは出来ない。


 アイトとクナイは町の案内図を買い、鉱山の入口へやって来た。
 入口には丁寧に案内図が設置され、それぞれの商会の入口が表記されている。


 「えっと、〔ヘレネド鉱石会社〕は……あった!!」
 「近いですね……きゃっ!?」
 「おっとっ」


 すると突然、轟音と共に地面が揺れる。
 よろけたクナイをアイトは抱きしめ踏ん張った。


 「平気か?」
 「は、はい。ありがとうございます」
 「それにしても、今のは地震か?」
 「かも知れません。揺れ方が横揺れでしたし、これだけ発掘で地面を揺らせば、地盤が影響を受けることもありそうですしね」


 確かにその通り。
 魔帝族のパワーでツルハシを叩きつけたり、発掘に使うアビリティで掘り進めたり、大企業になると発掘専用の魔導車を導入して掘ったりしてる。
 アイトとクナイは、〔ヘレネド鉱石会社〕が管理する鉱山入口へ来た。


 「あ、あの人かな」
 「間違いないですね。〔緑深人アールヴ〕は森の隠れ里に住む一族。このような騒がしい場所とは無縁のはずですから」
 「………なぁ、おかしくないか」
 「え……」


 鉱山入口は、瓦礫の山で埋まっていた。
 まるで地震のせいで崩れたかのようにも見える。


 鉱山入口にはテントが張られ、そこで1人の〔緑深人アールヴ〕が鉱石を見つつ、近くの象人の男性に何やら指示を出している。
 アイトとクナイはテントに近づき、男性に話しかけた。


 「あ、あの、アスレイさんですか?」
 「そうですが、貴方は?」
 「えーと。いきなりなんですけど、俺はアイトと申します。【羅刹天領土】のリアンの町で領主をやっています」
 「はぁ……。それで、私に何か用事でしょうか?」
 「はい。えーと、アスルルさんから手紙を預かってきました」
 「…………あ、アスルル!? アスルル姉さんから!?」
 「うぉぉっ!?」


 アスレイはアスルルの名前を聞いた途端、アイトの肩を掴んだ。
 短い灰色の髪に長い耳。身長は180センチ以上はあり、顔も雑誌モデルをやったら引っ張りだこになりそうなくらいの超イケメン。
 着てる服は作業服だが、身長と顔立ちのおかげでもの凄く似合っていた。


 「はっ!! 申しわけありません……。その、もう500年も会っていない姉の名を聞いたので。それで、姉の手紙とは……」
 「こ、これです」


 イケメンに詰め寄られ、アイトは何故かドキドキした。
 頭を切り換えて懐から手紙を取り出す。


 「これは……懐かしい、姉の字です。では失礼……」


 アスレイは懐かしさを滲ませ、手紙を開封する。
 微笑を浮かべたまま手紙を読むと、丁寧に折りたたんだ。


 「なるほど。貴方の領土で支店を出さないかというお誘いでした」
 「そ、そうです」
 「姉の手紙には、貴方の町の近くに手つかずの鉱山があるとか」
 「鉱山?………あ、裏山のことかな? 確かに手つかずだけど……」


 アイトがガロンと初めて登った山で、確かに岩場も多く、崖などもあった。
 アイトにとっては思い出の修行場所だ。


 「ふむ。もし鉱山が見つかれば、我が社の新しい開拓鉱山となるかも知れません。宜しければ調査をさせて頂けませんか? もし鉱山なら、支店を構えさせて頂くのも検討させて頂きます」
 「それはいいですけど……」
 「ありがとうございます。では参りましょうか。貴方は転移の魔術が使えるんですよね?」
 「は、はい。それって手紙に?」
 「はい」
 「行く前にその……この鉱山って、封鎖したんですか?」


 鉱山入口は、どう見ても瓦礫の山にしか見えない。
 アスレイも従業員の象人も誰も気にしないのでアイトは気になった。




 「ああ、先ほどの地震で崩落したんです」




 あっけらかんと、アスレイは言った。




 ***********




 「ほ……崩落?」
 「はい。先ほどの地震は分かりましたか? その時に崩落を起こしましてね、この有様です」
 「この有様って……中に人は?」
 「10人ほどが作業してましたが、心配ありません」
 「し、心配ないって……冗談でしょ!?」
 「いえ、平気です。崩落なんて日常茶飯事ですし、中にはあの御方・・・・もいますしね」
 「は?」


 次の瞬間、地面が揺れた。


 「こ、これは……主殿!!」
 「余震……じゃない?」


 横揺れではなく、一定間隔で縦に揺れる。
 ドゴン、ドゴンと近づいてくる。


 「来ましたね。せっかくですし、行く前にご挨拶していかれますか?」
 「は、はぁ?」


 轟音は、まるで爆撃のようにも感じた。
 明らかに近づいて来るが、アスレイや周囲の象人たちは全く変わらない。
 それどころか、音を無視して作業の続きをしていた。
 アイトは、迫る何かを感じた。


 「………く、来る」


 地面の揺れと轟音が鉱山入口まで来た瞬間、鉱山入口に積まれてた瓦礫が吹き飛んだ。
 まるで内側から爆発を起こしたようにも見えた。


 アイトとクナイは見た。
 瓦礫の山を吹き飛ばした存在を。


 「いや~~~~っ!! 外の空気はウンメェェッ!! なぁオメェらよぉっ!!」
 「はい、親方!!」
 「やっぱ薄暗い穴ぐらより日の光っすね、親方!!」


 現れたのは、2メートルを超える象人。
 しかも、ただの象人ではなく、皮膚が薄い黄色の肌の象人。
 顔は完全なゾウの魔獣タイプで、皮膚もゾウのようなザラザラの皮膚。
 身体は筋肉に包まれ傷だらけ、拳に至っては傷が付きすぎてツルツルになっていた。


 そして何より……。


 「……つ、強い」
 「……はい。恐ろしい力を感じます」
 「まさか、あの人が……」


 その象人の足下に、小柄な影も見えた。


 「ぱおーんっ!! ちちうえっ!! お疲れさまですっ!!」
 「おぉガーネ、よっと」
 「ぱぉぉっ!!」


 それは小さな少女だった。
 顔は可愛らしい少女だったが、頭にはゾウのような垂れ耳、そして臀部からは尻尾が伸びている。
 皮膚は人間と同じ。髪は明るい金色で長いロングヘアだが、適当にカットしてるのかかなりボサボサだ。
 そして頭には工事用のヘルメットに、ランニングシャツと作業ズボンを履いていた。
 どう見ても女の子だが、作業員にも見えた。
 巨大な象人の肩に乗せられ、アスレイの元へ。


 「紹介しますアイト様。こちらの方は【梵天ブラフマー】様で、この国の王にして【魔帝十二神将】のお一人でございます」
 「あん? おいアスレイ、そのボウズは誰だ?」


 
 突然の遭遇に、アイトは呆然としていた。



「神様のヒトミ」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く