神様のヒトミ

さとう

120・事務員姉妹



 アイトは仕事をするため、〔リアン領主執務邸〕へやって来た。
 町の拡張により、それに関する資料や報告書が膨大に増えたため、領主邸の敷地内に新たに建設された、町の運営に関する仕事を行う仕事場を建築した。


 建物は横長の2階建てで、中には資料室に執務室、そして応接間や緊急時の宿泊設備などが揃っている。
 中でも執務室は広く、アイトのデスクを始め、ウルフィーナとギャングのデスク、そして事務作業員のデスクが設置してあった。


 リュコスが教育し、ウルフィーナの部下だった事務員が新たに2人、アイトの部下としてラクシャーサから与えられた。
 アイトは執務室に入ると、4人から挨拶を貰う。


 「おはようございます、アイト様」
 「おはようございます」
 「おはようございます」
 「アイト様、ごきげんよう」


 上からウルフィーナとギャング、そして新たに配属された狼人姉妹であるルゥとラン。
 ルゥはショートカットでメガネをかけた小柄な姉、ランはスタイル抜群のロングヘアのメガネ美女。
 どちらも20代前半程度の、美人姉妹だった。


 「おはようございます皆さん、今日もよろしくお願いします」


 アイトがそう言うと全員が立ち上がり礼をする。
 立場上部下とは言え、どうも慣れないアイトであった。


 「ウルフィーナさん、明日には【梵天領土】に向かうんで、領主代行をお願いします。決済や申請の決定はお任せします」
 「畏まりました。お気を付けて」


 それから広すぎるデスクの前にある書類に目を通し、領主印を押して決済をする。
 すると、デスクの端に湯気の立つカップが置かれた。


 「どうぞアイト様、アスルル様から頂いた紅茶です」
 「あ、ありがとうランさん」
 「いいえ、熱いのでお気を付けて」


 ランはフワリと髪をなびかせてウルフィーナたちにもお茶を配る。


 「アイト様、こちらの商店の収支報告ですが」
 「は、はい」


 ルゥはウルフィーナ2号というくらいカッチリした仕事人。
 そして、意外な表情も。


 「ルゥ、収支報告や決済の報告は私に。そちらの責任者は私です」
 「は、はい。ウルフィーナお姉様!!」
 「え」


 アイトは思わずウルフィーナを見た。


 「……ルゥ、お姉様は止めなさいと言ってるでしょう? そのクセ、まだ治らないのね?」
 「~~~~っ!!」
 「あらら、ルゥちゃんのお顔がアプの実みたいに真っ赤っか」
 「……アイト様、私はラクシャーサ様の所へ行ってきます」
 「は、はいギャングさん」


 ギャングは逃げるように部屋を後にした。
 ウルフィーナは苦笑すると、ルゥの頭をポンポンなでる。


 「ルゥ、仕事場ではウルフィーナと呼びなさい。仕事が終わったら好きに呼んでいいから、ね?」
 「は、はい……。申し訳ありません、ウルフィーナ事務局長」
 「うふふ、ルゥちゃん可愛い」
 「ラン!! お前は……!!」
 「はいはい、仕事の続きよルゥ」
 「うぅぅ……はい。申しわけありません、アイト様」
 「い、いや」




 ウルフィーナになでられたルゥの尻尾はブンブン揺れていた。




 ***********




 ラクシャーサは現在、町の様子を視察している。
 建築作業員を激励したり、学校に赴き子供達とふれあったり、忙しそうに回っている。
 この【羅刹天領土】を統括する立場の魔帝族として、領土の管理や状況を知ることは大事なことであった。
 現に、1年の半分以上は視察を兼ねた領地訪問で、それぞれの領地の守護者から話を聞いたり、問題点などを聞いて対処したりしている。
 そして年に1度、全ての領地の守護者を集めて総会を行うのが恒例となっていた。


 「というワケですね」
 「はぁ~……忙しいんですね」


 ウルフィーナが紅茶を啜りながら説明してくれた。
 現在は休憩中で、執務室の一角にある休憩スペースにて4人でお茶をしていた。
 ランが煎れた紅茶に、アイトが勝ってきた香草クッキーをお茶請けにしながら、ラクシャーサの仕事についてアイトが質問したのだ。


 「ラクシャーサ様は素晴らしい御方です。普通、領土の視察を【魔帝十二神将】自らが行うなどあり得ません。あの御方は自ら領地に赴き、住人の声や希望を聞いて、可能な限り実現しようと日々模索しておられます。国を空けることが多いですが、仕事はキチンとこなしますし」


 ルゥは興奮気味に話す。


 「確かに。ラクシャーサ様は領土中を回っているそうですけど、その移動スピードがアビリティによるもので、視察団の方々にも掛けられる範囲型のアビリティと聞いたことがありますね。あむ……あら、このクッキー美味しいですね」


 ランはまったりとクッキーを食べる。


 「そっか……でも、移動は大変だよな」
 「そうですね。ですがこればかりは仕方ありません。ラクシャーサ様は【魔帝十二神将】で最も領民を大事になされる御方ですから」
 「う~ん……。ちょっと相談してみるか」
 「アイト様? 相談とは……?」
 「ああ、視察するんなら、せめて移動だけでも楽にしてやりたいと思って。ラクシャーサさんは世話になってるから、お礼の意味も込めてね」
 「して何を……?」


 アイトはニヤリと笑った。


 「ああ、フェンリル国に《テレポクリスタル》を設置できないかなって。ラクシャーサさんもテレポーラを使えれば、だいぶ楽になるだろ?」


 つまり、ラクシャーサにテレポーラをインストールする。
 アイトが発行した転移クリスタルではなく、アイトと同じ移動を可能とすれば、一瞬で行き来できるだろうとアイトは考えた。


 「じゃ、ちょっくらアイヒのとこへ行ってくる」




 アイトは教師であるアイヒがいる、学校へと向かった。



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