神様のヒトミ

さとう

119・臥王



 アイトは1人、ミモバの森を歩いていた。


 時間は早朝。食事は携帯食料で済ませ、気配を断ち森を歩く。
 その表情は引き締まり、領主としてではなく、戦うときの表情となっていた。


 「………よし」


 そして見つけた。
 藪を掻き分けるように歩く、ヒト型の魔獣。


 「ゴブリン……、にしてはデカいな、どれ」




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 【ポイズンハイゴブリン】 ♂ 〔詳細〕
 ●B+レート


 ●〔ステータス〕
 ○ミモバの森に生息するゴブリンの変異種
 ○森の中にある木の実や魔獣が主食。
 ○体内に有害な毒を持ち、自身の血液を武器に塗り戦う。
 ○食用不可


 ●〔素材〕
 ○魔核


 以下・未解放


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 「なるほどな。身長もそこそこあるし、丁度いい……」


 アイトはゴブリンを睨み付けると、ゴブリンはガバッとアイトを見た。
 ニヤリと口が歪み、手に持っていた槍を構える。
 槍の先端はボロボロで、形から見て冒険者の装備というのがアイトにはわかった。


 『ぎゃひ、ぎゃひ!!』
 「キモいな……」


 知性のかけらもなさそうな声に、アイトはげんなりする。
 すると、ゴブリンは奇声を上げながらアイトへ向かってきた。


 『ヒッギャァァァァァーーーッ!!』


 B+レートは伊達では無い。
 スピードは速く、障害物を避けながらも速度は変わらない。


 アイトは構える。
 左手は人差し指と中指を立て、右手の五指は開き固定。
 魔闘気を練り、全身をコーティングする。
 そして、ゴブリンとの距離が10メートルほどになり、アイトは静かに呟く。




 「『じん』の型『きわみ』───────『臥王がおう』」




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 【壊神拳かいじんけん】の3種の型


 第一種『じゅう』の型・魔獣用戦闘術技・『極』奥義『螺渦らうず
 第二種『じん』の型・対人用戦闘術技・『極』奥義『臥王がおう
 第三種『すくい』の型・【救世主】用戦闘術技・『極』奥義『太極たいきょく


 そして、ガロンから口頭でのみ聞いた、幻の第四種。
 わかるのは、【壊神拳】設立者であるガロンの曾祖父が編み出した、究極の技。
 【壊神拳】皆伝の者達はその技の解明をしたが、未だに分かってることは少ない。


 第四種『つい』の型・壊神戦闘術技・『極』奥義『天衣無縫てんいむほう


 アイトも皆伝を受け、なおかつガロンとの約束でもあったのでいろいろ模索していた。
 しかし、さっぱり分からない。
 魔獣を奥義で屠りつつ、少し休むことにした。


 「はぁ~……」


 アイトは持参したボトルの水を飲み、手に持っていた〔ポイズンハイゴブリン〕の魔核が大量に詰まった袋を地面に置いて、自身も座れそうな岩の上に座る。


 魔獣は、いくらでも沸いてくる。
 結界があるから町には入って来れないが、それでも危険には変わりない。
 それに、アイトは身体が鈍らないように定期的に狩りに来ていた。


 「魔核、売って資金の足しにするか……」


 ポイズンハイゴブリンはB+レート。採れる素材は魔核だけだが、質のいい魔核は武器にも防具にもなる。
 ポイズンハイゴブリンの魔核は毒を含んでいるので、毒の剣になるし、アクセサリに加工すれば、耐毒の加護を備えたネックレスにもなる。
 ミモバの森を歩くなら、ぜひとも欲しい装備だ。
 それに、ギルドに卸せば1コ5万コインほどの収入になる。


 アイトが狩ったゴブリンは20体。
 つまり、100万コインほどの稼ぎになった。
 簡単そうに見えるが、B+レートはB級冒険者でも手こずるレベル。20体も1人で狩れるほうがおかしい。


 「天衣無縫……か。ヒントでもあれば……」




 アイトは空を見上げ、帰るために立ち上がった。




 ***********




 あと数日、町で残務処理をしたらアイトは【梵天領土】へ向かう。
 同行者はクナイ。仕事は、アスルルの弟が経営する〔ヘレネド鉱石商会〕へ、鉱石の入荷以来をすること。
 出来る事なら、この町に支店を構え、安定した鉱石の供給を依頼したいところだ。
 そのためにアスルルの紹介状もあるし、旅の準備はクナイがバッチリしてくれている。


 クナイの薬屋は、臨時休業することになった。
 薬屋としてでなく、和菓子屋としても人気があったため、子供達からは悲しまれたが、クナイは徹夜して駄菓子の袋詰めを作り、来店した町の子供達に無料で配った。
 ポーション類に関しては、錬金ギルドが稼働したこともあるため心配は無い。


 出発は2日後。
 目的も移動ルートも確認し、旅の準備はすでに出来た。


 「……国王、か」


 アイトは考える。
 ラクシャーサが言った、国としての独立。
 15歳、もうすぐ16歳のアイトには想像も付かない世界だ。


 「はははっ、冗談だろ? 俺はタダの人間だ」


 自分に言い聞かせるように呟く。
 ボトルの中身は既に空。アイトはため息を吐き出す。
 立ち上がり、ミモバの森から出る。
 すると、リアンの町が見えてきた。


 アイトは、この町の墓地へやって来た。
 墓地は整備され、それぞれ立派な墓石が置かれ、丁寧に名前も彫ってある。 
 アイトは全ての墓に花を添え、オババとグリスとオピス、そしてガロンの墓に高級酒をぶっかけた。
 そして、ガロンの墓の前に座る。


 「ガロンさん、町はすっごくデカくなったよ。まだまだ大きくなりそうだ」




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 【リアンの町】 LEVEL45
 ● 領主・神世藍斗
 ●守護者・神世藍斗


 ●データベース
 ○住人 10521人 〔詳細〕
 ○家屋 2150軒  〔詳細〕
 ○商店  662軒  〔詳細〕


 ●敷地全体図   〔表示〕
 ●登録ギルド   〔表示〕 
 ●公共施設図   〔表示〕


 以下・未開放


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 住人は爆発的に増え続け、周辺の町や国もリアンの町の価値に気付き始めて居る。
 商店の開業申請、住居の建設は大規模なペースで進み、止まることのない温泉は多岐に分岐され、〔桜湯〕の2号店である〔梅湯〕の建設も進んでいる。


 道路や街道も整備され、魔導車が行き交う町は、ガロンたちがいた集落とは比べ物にならない。
 ウルフィーナの予測では、1年後の人口は5万を超えるとのこと。


 「ガロンさん、俺……頑張ってる。ミコトも元気だし、友達がいっぱい出来たよ……」


 アイトは立ち上がり、墓の前で構える。


 「俺、やれるとこまでやってみる。だから、見てて」


 アイトは踵を返す。
 出発まで出来る仕事はいくらでもある。
 領主邸に戻り、ウルフィーナとギャングの手伝いをするつもりだ。


 「お……」


 風が吹き、桜の花びらが舞う。
 何かが通り過ぎたような錯覚に囚われる。


 「……へへ」




 振り向けばガロンが笑ってる。そんな気がした。



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