神様のヒトミ

さとう

117・クレープ



 アイトとラクシャーサは、町を見ながら歩いていた。


 「ふむ。発展途上だがいい町だね。それに、このペースで拡張を進めたら、町を超えて国として独立させるべきかもしれん。これは一度、魔王様に進言してみるか」
 「······ラクシャーサさん、何を言ってんすか?」


 流石にアイトでも分かる。
 自身の領土から町を独立させて国を作るなど、内部分裂を起こした反乱とも捉え兼ねられない。


 「いや、すでにキミという名領主は他の町や領土にも広がっている。実は他の領土の有名商会などからフェンリル国宛に貿易申請が何件か来ていてね、そこでこの町に拠点を築きたいと書状が届いてるんだ」
 「え⁉ マジすか⁉」
 「ああ。はっきり言って、この町のおかげで領土全体が潤い始めてる。この領土を任されてる者として、実に喜ばしいよ」
 「そ、それなら、独立国なんてしないほうがいいんじゃ······」
 「確かにな。だが、オレ1人だけ利益を貪るワケにもいかない。現に、商人大国である【毘沙門天びしゃもんてんヴァイシュラナ】の領土から使者が送られて来た。是非ともキミに会いたいと、ヴァイシュラナから招待を受けてね」
 「ま、また新しい幹部ですか······」
 「返事は保留してある。キミはまだまだ忙しいし、ヴァイシュラナも急がないと言ってたからね」
 「うぇぇ······」
 「アイトくんには悪いが、魔王様に進言はさせてもらうよ。オレ1人で利益を貪ってると思われたら、他の幹部にいい顔されないからね」
 「わかりました。でも、それじゃ俺は?」
 「申請が通れば、国王だね。デズモンド地域とヒューム地域を股にかける、中立国の王。〔中立王国リアン〕の初代王ってとこかな」
 「······ははは」
 「その時は対等な取引をさせてもらうよ。王としてね」
 「いやいやいやいや、決定事項みたいに言わないでくださいよ⁉」


 アイトは慌てて否定するが、ラクシャーサは楽しそうに笑う。
 アイトはラクシャーサを、歳の離れた兄のように感じていた。




 学校までの距離は、以外に近い。




 ********************




 学校は完成し、アイトが居ない間に始まっていた。
 生徒が増える事を考慮し、増築のためのスペースもまだまだある。これはウルフィーナの考えでもあった。


 間違いなく、学校は目玉となる。
 町の子供はもちろん、寄宿舎を作り他の町や村から入校を募集したり、リアンの町から1時間程度の距離の村町なら、スクールバス魔導車を出す案も出された。


 寄宿舎は建設中、スクールバスはシェスタ王国から奪った護送車を改造して使うこととなり、ガトナ村の子供たちも勉強をしにやって来るようになっていた。


 移住希望は相変わらず殺到し、移住者自身が他の領土から建築技師や職人を派遣して作らせるという、強引な事をする輩も出て来たが、傭兵団やギャング夫妻の厳しい審査を元に許可をして作らせることもあった。


 そもそも、アイトが守護する町では、不正は一切出来ない。
 以前、窃盗被害にあった商店だが、激しい頭痛に悩まされた犯人が自首してきた。  
 すると犯人の頭痛はさっぱりと消え、それが守護者の結界の範囲の広さを物語っていた。
 もちろん、子供のイタズラやケンカ程度では起きず、明確な悪意に反応する仕組みである。


 交通のインフラも整備され、新しい宿屋もいくつか開業し、町の発展は留まる事を知らない。




 リアンの町は、もはや全領土が注目をしていた。




 ********************




 校舎の建設は終了したが、建設は続いている。
 それぞれのクラスごとに学ぶ校舎を建設し、修練場や錬金術の実験室なども建築する。


 時間は放課後。子どもたちは外で遊んだり、稽古や魔術の練習をする光景が見えた。
 さらに、校舎脇には可愛らしく改造された護送車、もといスクールバスが停車している。
 ガトナ村から来てる子どもたちは約20人。これから1時間掛けて自宅へ帰るのだ。


 そして、【災禍の魔獣オーバーロード・ビースト】5人は、みんなでボール遊びをしていた。


 「ああやって見ると、最強の魔獣の化身とは思えませんね」
 「確かに、可愛らしい子どもたちにしか見えないな」


 シアが投げたボールをミコトがしっぽで打ち返し、帰って来たボールをルカがキャッチ。サラにパスしてサラはライラに投げる。
 リュコスがその光景を見守っていた。
 そして、ライラがアイトたちに気が付きライラが指差すと、子どもたちは走って向かって来た。


 「とーさまっ‼」
 「おっと、おかえりシア。楽しかったか?」
 「うん‼」


 シアのしっぽはブンブン揺れていた。
 ラクシャーサに飛び付き、その胸に顔を埋めている。
 アイトはミコトたちの頭を順番になでていた。


 「にゃう、アイト」
 「そろそろ帰ろう。よし、帰りにメロンクレープでも食べるか?」
 「にゃお⁉ いいの⁉」
 「ああ。もちろんみんなでな」
 「わふ、食べたーい‼」
 「ルカもたべるっ」
 「よしよし、もちろんサラもな」
 「わ、私もいいんですか?」
 「ああ。食べたことないだろ? 甘くて美味しいぞ?」
 「ご、ごくり。しゃぅぅ······」


 アイトはラクシャーサを見ると、リュコスと話している最中だった。


 「ラクシャーサさん、先に行ってますね」
 「わかった。オレはリュコスを待ってから行く。シアはどうする?」
 「がう? 今日はとーさまとゴハン?」
 「ああ。アイトくんの家でみんなで一緒にな。先に行って待ってるか?」
 「がうぅ〜······」


 シアは悩んでいる。
 ラクシャーサとリュコスの家族で行くか、ミコトやアイトたち友達と行くか。


 「がうっ‼ とーさまと行くっ‼」
 「そうか。じゃあ母さんを待ってような」
 「うんっ‼」


 ラクシャーサとシアに別れを告げ、アイトたちは町の中心へ。
 そして、クレープ屋に到着した。


 クレープ屋は繁盛しているようで、店舗が少し広くなり、いつの間にか若い男性がクレープを包んでいた。
 アイトの存在に気が付くと、店主が手を挙げて挨拶した。


 「おーう領主様‼ いらっしゃい‼」
 「どうも。繁盛してますね」


 クレープ屋の傍にはオシャレなイステーブルが設置され、まるでオープンテラスのようになっていた。


 「へへへ、クレープは大当たりでよ、実は借金して店を買ったんだ。今は内装を改築中で、若い冒険者狙いのオシャレなカフェとしてスタートするぜ‼」
 「おお、じゃあこの店員さんは?」
 「へ、もちろん雇ったのさ。早い内からクレープを覚えさせて、開店してすぐに戦力として使えるようにな。それに、クレープだけじゃなくてメロの実を使った新メニューも考案中だ。それで領主様よ、アイデアはないかい?」
 「メロン、いやメロの実か。ケーキとかジュースは?」
 「ほほう、いいね」
 「それと、料理の相談なら〔ロゼオ〕のルエラさんにしたらどうですか? あの人なら的確なアドバイスをくれると思いますよ」
 「ふむふむなるほど。サンキューな。へへへ、ラウル農園との契約も取れたし、安定したメロの実の入荷ルートも手に入った。いやー領主様に会えて良かったぜ。あとそっちの子猫ちゃんにもな」
 「にゃう、あたしはミコト‼ それよりクレープ食べたいっ‼」
 「わんわん、わたしもーっ‼」
 「ルカもー」
 「え、えっと、わ、私も」
 「ハッハッハッ、おっちゃんに任せな。今日はオレの奢りだ」
 「えぇ⁉ いや、悪いですよ」
 「いーのいーの、さぁてクリームたっぷりサービスしてやるぜ‼」


 店主はメロンクレープを作り、ミコトたちに渡す。
 席に座りクレープを食べ始めると、ミコトたちは美味しそうに完食した。
 特にサラは感動したのか、ずっとうっとりしてた。


 「はぁ〜、あまくて美味しかったです〜。これがクレープですかぁ〜」
 「おいサラ、大丈夫か?」
 「はぃ〜」


 すると、急にハッとしたサラは立ち上がる。


 「あ‼ 私、帰らないと。お師匠様が待ってるかも‼」
 「えぇ〜⁉ ごはん食べに来ないの⁉」
 「やだーっ‼」
 「サラ、いっしょ」
 「あ、あぅぅ······」


 ミコトたちはサラに纏わりつき、帰れないように拘束していた。
 すると、アイトが言う。


 「う〜ん。ヒュドーラさんに許しを貰えば来れるかな。よし、ちょっと行くか」
 「え、えぇぇっ⁉」


 そして、タイミングよくラクシャーサ家族が現れる。


 「あ、ラクシャーサさん。ちょうど良かった、頼みがあるんです」
 「やあ。どうしたんだい?」
 「くんくん、がう⁉ みんなあまいニオイするーっ‼」
 「にゃふふ、クレープを食べたのだ‼」
 「いいなーっ‼ かーさま、買って買ってーっ‼」
 「はいはい、ちょっと待ちなさい。それでアイトくん、頼みって何かしら?」
 「は、はい」


 アイトはヒュドーラに許可を貰いに行くから、ミコトたちを連れて帰って欲しい旨を伝えた。
 もちろん了承され、ミコトたちをラクシャーサに預けた。




 アイトとサラは、ヒュドーラの元へ向かった。



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