神様のヒトミ

さとう

116・招待

 
 アイトは一度、領主邸に帰ってきた。
 そして執務室に向かい、仕事でもしようと考える。


 「って、俺まだ15だぞ。仕事するかって考えはおかしい」


 アイトは3月生まれなので、まだ15歳のはず。
 時期的にはそろそろ誕生日が近いはずだった。
 だが、身体は執務室へ。仕事という町の改革は楽しく、日々成長する町の手伝いをするのは、アイトにとって苦にならない仕事だった。


 「お疲れさまです、アイト様」
 「やぁ、アイトくん」
 「え、ら、ラクシャーサさん!?」


 執務室の来客用ソファに座るラクシャーサと、お茶のお盆を抱えたギャングが立っていた。
 どうやら来たばかりらしく、ギャングが煎れた紅茶は湯気が立っていた


 「お疲れさまです、今日はどうしたんですか?」
 「キミに用事があってね。いや、お願いかな」


 ラクシャーサは対面側のソファを勧め、アイトは腰掛ける。
 するとギャングがすかさず紅茶をアイトに出した。


 「実は、毎年フェンリルで領主たちによる総会が開かれる。そこで是非アイトくんにも出席してほしい」
 「そ、総会ですか?」
 「ああ。領主というか守護者だね。この【羅刹天領土】にある村や町の守護者の集まりかな。実はキミを注目してる守護者はけっこういてね、丁度いい機会だし、フェンリルにも一度来て欲しい」
 「あー、確かに。ラクシャーサさんの領土なのに、本国には一度も行ってないですね」
 「そういうことだ。頼めるかな?」
 「わかりました。開催はいつですか?」
 「一月後だね。詳細は追って連絡するよ」
 「はい。あ、それと質問していいですか?」
 「ん? なんだい?」


 アイトは、アスルルからの紹介状とベッコウとホウテンの話をした。


 「なるほど。ブラフマーの領土か」
 「はい。一応、【梵天ブラフマー】のことを教えてもらおうかと」
 「ふむ……。ブラフマーは、一言で表すなら『豪快』かな」
 「ご、豪快ですか?」
 「ああ。彼はジッとしてるのが大の苦手でね。常に身体を動かしてる。有名な話では、とある鉱石採掘の会社を視察の名目で入社して、そのまま数ヶ月山に籠もって採掘をしていたそうだ。おかげでブラフマーの守護する〔岩石王国ロックドラム〕は混乱、ブラフマーの死亡説まで流れたって話さ」
 「うぇぇ……、なんか会いたくないな」
 「ははは、そうだな、また紹介状を書こう。ブラフマーの領土に入るのに役立つはずだ」
 「あ、ありがとうございます。でも、ブラフマーには会わないと思いますよ?」
 「それはどうかな? キミは【魔帝十二神将】と縁がある。この【羅刹天ラクシャーサ】に始まり、【火天アグニ】に【伊舎那天いざなてんイシャーナ】 と、すでに3人の幹部に接触してる。人間族でここまでの交友関係を築いた事例は殆ど無いんじゃないかな?」
 「そ、それってフラグですよ?」
 「ふ。それに【災禍の魔獣オーバーロード・ビースト】が5人……。オレの予想だが、この町に12人揃うような気がするよ」
 「……ラクシャーサさん、シャレになってないっすよ」


 アイトはげんなりした。
 別に集めようなんて微塵も考えていない。
 ミコトに始まり、ライラとシアとルカ、そしてサラ。
 全ては偶然であり、いい友達が出来た程度の考えだ。


 「とにかく、フェンリルでの総会は後日連絡する。それで、学校はどうだい?」
 「はい。ようやく稼働を始めました。まだ稼働してないクラスもありますけど」
 「ふふふ、キミのアイデアか……。実に楽しみだ」


 現在稼働してるクラスは、まだ予定ばかり。
 アイヒはメリノの洋服店に辞表を出し、教師として本格的に指導に入る。




 **********************


 ●冒険者クラス・教師
 クロウリー(予定)


 ●魔術クラス・教師
 アイヒ


 ●傭兵クラス・教師
 ルシェラ・アシュロン(臨時)
 その他傭兵が交代で指導


 ●錬金クラス・教師
 ヒュドーラ(予定)


 ●総合クラス・教師
 リュコス・フォクシー


 ●商人クラス・教師
 フォクシー


 ********************** 




 ちなみに商人クラスは、フォクシーたっての希望で新設されたクラスである。
 腕のいい、自分好みの商人を育てたいということだが、ウルフィーナが難色を示し説得に時間が掛かったらしい。
 教師の数はまだ足りず、希望者がいればウルフィーナとギルド長で採用試験を行うそうだ。


 「町の移住希望がまた増えて、住宅が予約待ちの状態なんです。もっと職人や大工を増やさないといけませんね」
 「確かにね。わかった、周辺の町の建築会社に依頼を出しておこう。建築会社の受け入れや資材については、そちらに任せていいかな?」
 「ええと、大丈夫ですかね、ギャングさん」
 「は、お任せを」


 ギャングは一礼する。
 実に頼りになる狼人だとアイトは思った。


 「話は以上だ。ところで、シアやリュコスは元気かい?」
 「ええ。リュコス先生は町や子供たちの評判もいいし、シアは毎日走り回ってますよ」
 「そうか、なら挨拶していかないとな」
 「はい。よかったらみんなで夕食でもどうですか? シアも喜びます」
 「そうだね、じゃあ頂こうか」


 それから他愛の無い話をし、ギャングが作ったサンドイッチを食べながら町の話をした。
 そして、学校が終わる時間が近づく。


 「せっかくだし、シアを迎えに行きませんか? 俺もミコトたちを迎えに行きたいですし、ちょっとしたサプライズも込めて」
 「迎えか。そうだね、せっかくだし行こうか」




 2人は立ち上がり、ギャングに見送られて学校へ向かった。



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