神様のヒトミ

さとう

115・鉱石



 1人取り残されたアイトは、これからの予定を考えていた。


 「あ、そうだ。アスルルさんにハーブの苗を渡そう」


 ヘッジヴァイパで買ったハーブの苗や種。
 ミコトも育てたいと言うかも知れないので、全部は渡さないことにする。




 そういうわけで、アイトはアスルルの装飾品店へ向かった。




 ***********




 アスルルの装飾品店は、タイミングのいいことに定休日だった。
 アイトは店の入口をノックすると、店の奥からアスルルが顔を出し、アイトを見て目を輝かせドアを開けた。


 「あらおはようアイトちゃん。帰ってきてたのね」
 「おはようございますアスルルさん。その、アイトちゃんってのは……」
 「いいじゃない、カワイイんだもの」
 「えっと……」
 「ふふ、私に用事かしら?」


 アイトは諦め、異空間からハーブの苗を取り出す。
 種は袋に入っていたので、そのまま見せた。


 「お土産です。【伊舎那天領土】で買ってきたハーブの苗と種なんですけど」
 「あらあら、嬉しいわね」


 ハーブの苗は植木鉢に植えられた物で、アイトはそのまま渡した。


 「よかったらお茶でもどう? 乾燥させたばかりの美味しい茶葉があるの」
 「へぇ、興味あります」
 「うふふ、遠慮しないでどうぞ。そこのお二人さんも」
 「へ?」


 アイトは後ろを振り向く。すると


 「いやぁ、アスルルさんのお誘いとは。せっかくですしご馳走になります」
 「そうだな。あの、アスルルさん。土作人ドウェルグの故郷から取り寄せたハチミツパイなんですけど、よかったらお茶請けにどうですか?」
 「まぁ嬉しい。さぁ中へどうぞ、ベッコウさんホウテンさん、アイトちゃん」


 アイトの脇をすり抜け、2人の小さくてマッチョなヒゲオヤジが通って行く。


 「ほれアイト、さっさと入らんか」
 「そうだぞ、入れ入れ」
 「………」




 釈然としなかったが、アイトは店内へ入った。




 ***********




 「いや~、アスルルさんの紅茶は絶品ですね。ぼく、クセになっちゃうなぁ」
 「うんうん、毎日でも飲める。そう、毎日」
 「あらあら、嬉しい。ありがとう、ホウテンさん、ベッコウさん♪」
 「「でへへ、でへへへへ」」
 「………」


 アイトは無心で紅茶を飲み、ニヤけたヒゲオヤジと視線を合わせないようにしていた。
 が、それは無意味である。


 「おいアイト、武器の素材のことで頼みがあるんだがよ」
 「おお、確かに丁度いい」
 「え?」


 デレデレした気持ち悪い顔はナリを潜め、真面目な職人の顔をする2人。
 アイトは紅茶のカップを置き、ドウェルグの2人に向き合った。


 「実はよ、武器防具の素材になる鉱石なんだが、もう少し質のいい業者に切り替えてぇんだ。どっかにいいコネはねぇか?」
 「コネ、ですか? むしろそういうのはお二人の専門じゃ?」
 「まぁ、無い事は無いが、この【羅刹天領土】からじゃ遠いんだよ。運搬だけで3月は掛かっちまう。それでお前に頼んでるんだ」
 「は、はぁ……」


 とは言っても、アイトにそんなコネはない。
 すると、アスルルが言う。


 「そうね、それなら心当たりがあるわ」
 「「「え、アスルルさんがですか?」」」


 3人の声はキレイにハモった。


 「えっとね。私たち〔緑深人アールヴ〕は細工職人が多いの。それで、私の故郷には細工の元となる鉱山がたくさんあって、〔黄象人おうぞうじん〕たちが掘り出した鉱石を私たちが加工するの」
 「〔黄象人おうぞうじん〕って……、【獣王種族】ですか?」
 「ええ。私の故郷は【梵天ぼんてんブラフマー】が守護する【梵天領土ぼんてんりょうど】よ。ここからだと【伊舎那天領土いざなてんりょうど】の先ね」
 「へぇ、じゃあ以外と近いんですね」
 「ああ、こっから魔導車でも1月掛からん距離だな」
 「おう、じゃあ、アスルルさんの紹介があれば、取引できるかもな」
 「そうね。私の弟が鉱石採掘の会社を経営してるわ。よかったら紹介状を書くわよ?」
 「えっと……」
 「おうアイト、頼むぜ」
 「ああ、急ぎじゃないが早めに頼む」
 「や、やっぱり俺が行くんですか?」
 「当然だろ、業者の取引なんて分からんし、こーいうのは領主の仕事だ」
 「おう、いい武器防具が出来れば、評判を聞いた冒険者が集まるし、傭兵団の装備も強化出来る。町のためになる仕事なら、領主が直接交渉するべきだろ?」
 「………」
 「ふふふ、じゃあ紹介状を書くわね」


 アスルルは、楽しそうに一筆書き始める。
 羊皮紙にキレイな字を躍らせ、封筒に入れて印を押す。


 「じゃ、これを〔ヘレネド鉱石商会〕のアスレイに渡してちょうだい。きっと快く引き受けてくれるわ」
 「………はい」




 こうして、アイトの目的地の選択肢が増えた。



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