神様のヒトミ

さとう

114・納品



 「ほら、持って行きな」


 ヒュドーラたちがリアンの町に来た翌日の朝。
 錬金ギルドの入口には大きな木箱が10箱ほど積み上げられていた。
 それを見たアイトとウルフィーナ、そして商人ギルドから派遣されてきた商人が10人ほど。


 「こ、これは……。まさか、本当に……?」
 「小娘、あたしを疑うのかい? 品質にも問題はない、何なら確認しな」


 驚くウルフィーナの前に、ピンク色の液体が入った試験官を差し出すヒュドーラ。
 ウルフィーナはそれを受け取り、まるで科学者のように試験官を振る。


 「……これは、素晴らしい。こんなにも不純物のないエクスポーションは初めて見ました。フェンリル国の錬金術師が手がけるエクスポーションより、遙かに高い品質を持っています。アイト様、確認を」
 「え、いや、俺にはそんな品質とか……」
 「いえ、《眼》でご確認下さい」
 「あ、そっか」




 **********************


 【エクスポーション】 レア度10
 ●効果〔詳細〕
 ●推定価格〔詳細〕
 ●構成材料〔詳細〕


 以下・未解放


 **********************




 「おお、レア度10だって。すげー」


 アイトはエクスポーションの情報を読み取り、ウルフィーナに詳細を伝える。


 「推定価格は1本150万コインですね。やっぱ高いな」
 「それが普通です。エクスポーションの効果はハイポーションとは比べ物になりません。四肢が全て千切れた状態でも復元し、指くらいの部位なら復元してしまうほどです」
 「そ、そんなのが1000本……、す、すげぇ」
 「ふん。いいからさっさと持って行きな。昨日も言ったが今回はサービスしてやる」


 すると、商人たちが手分けして木箱を運ぶ。
 これから卸先のギルドや商店を回り、納品しに行くようだ。


 「お疲れのところ申し訳ありませんが、これから運営に関する打ち合わせを」
 「ああ、さっさと終わらせな。疲れたし1杯引っかけに行きたいんだよ、ラピスやクロウリーのジジィに挨拶したいしね」
 「え、こんな朝から飲むんですか?」
 「なんだい、文句あるのかい?」
 「い、いえ。滅相もない」


 アイトは慌てて否定した。
 オババに似ていると感じたアイトだが、脅しつけるような怖さはひと味違った。


 「あの、サラは?」
 「ああ、そこのソファで寝てるよ。子猫も一緒にね」
 「ミコト、やっぱり泊まったのか……」


 アイトはカウンターの奥にあるソファを覗くと、2人で仲良く寝てるミコトとサラを見つけた。


 「ちょうどいい。アイト、サラに町を案内しておくれ。ついでに朝食も食べさせてやっとくれ。サラ!! 起きな!!」
 「ふぁぁっ!? す、すみませんお師匠様っ!!」
 「にゃふっ!?」


 驚いて飛び起きたサラに、サラに驚いてミコトが起きた。


 「あ、あれ? ここは?」
 「サラ、アイトに町を案内してもらいな。それと、納品が終わったから1週間は自由だ。自分の研究をするのもいいし、遊んでもいい。新薬が出来たらいつでも見てやる」
 「は、はい? 休み……あ、そっか。のうひん」
 「寝ぼけんじゃないよ、返事は!!」
 「はぃぃっ!!」


 サラはシュバッと立ち上がり礼をする。
 ミコトは背伸びをし、アイトに擦り寄ってきた。


 「あいと、ごはん~……」
 「はいはい。よし、行くぞサラ」
 「は、はい」


 アイトの背に引っ付くミコトに、隣に立つサラ。
 移動はしないのか、ミコト達が寝ていたソファーにヒュドーラは座り、ウルフィーナに言った。


 「さーて、まずは商人ギルドに加入してる薬草薬品の取引業者を見せな。それと薬草のサンプルと値段もだ」
 「はい。ではまず……」




 ヒュドーラたちの話を最後まで聞くことなく、アイトは外に出た。




 ***********




 朝。すでに冒険者たちは活動を始め、カバンや手提げ袋を持った子供達も走って行く。
 朝食は〔桜湯〕の近くに建てられた、おにぎりの専門店〔おむすび桜〕で、焼きおにぎりと炊き込み握りを買って食べる。
 サラは初めての味に感動し、アイトとミコトも久し振りのおにぎりに感動していた。


 「あ、もう学校の時間か」
 「学校……ですか?」
 「ああ。ミコト、どうする?」
 「にゃう、明日からでいい……」
 「まぁ、帰ってきたばかりだしな。その代わり、明日はちゃんと行けよ?」
 「はーい。あ、サラも?」
 「い、いえ、私はギルド職員ですので。それに、自分の研究も進めたいし」
 「研究?……何を研究してるんだ?」
 「その、新薬の開発を……」


 サラは恥ずかしそうに俯いた。


 「わ、私はその、安価な万能薬の研究をしています。万能薬はあらゆる状態異常を治す効果がありますが、使う素材が高価な物で、なかなか手が出ません。でも、毒消しや抗麻痺剤、覚醒薬などは安価で手に入りますが、混ぜると効果が打ち消されてしまいます。なので、安価な材料の配合と調整方法の法則を見つけて、安価万能薬を作る研究を」


 サラは恥ずかしそうだが饒舌だった。
 ミコトは首をかしげ、アイトも聞くだけになっていた。
 そして、我に返ったサラは顔を赤くして俯く。


 「す、すみません……。つまらないですよね」
 「そんなことないぞ、立派じゃんか」
 「にゃう、サラは頭いいね。おべんきょーって得意?」
 「勉強ですか? まぁお師匠様に習っていたので、少しは」


 何気ない会話をしていると、向こうから見知った顔が来た。


 「あ、アイトーっ!!」
 「がうーっ!!」
 「あうーっ!!」


 リュコスに連れられ、ライラ・シア・ルカがやって来た。


 「にゃお、みんなーっ!!」
 「ミコト、おかえり!!」
 「ひさしぶりっ!!」
 「あう、みこと」


 ライラたちは嬉しそうにミコトにじゃれつき、アイトにもじゃれつく。
 そして視線は青い髪のショートカット少女、サラへ向く。


 「わふ? だーれ?」
 「えっとね、新しくともだちになったサラ。これから町に住むんだって」
 「がう。あたいはシア、よろしくね」
 「あう。わたしルカ」
 「わたしはライラだよ。よろしくサラ」
 「あ、あの……、さ、サラです。よろしくおねがいします」


 サラは照れてるのか俯き、サラを囲むようにライラたちが質問をする。
 そしてアイトの隣にはリュコスが来た。


 「おはようアイトくん。この子は?」
 「はい、新しく出来た錬金ギルドの……、従業員です」
 「まぁ。こんなに小さい子が?」


 アイトは簡潔に事情を説明し、リュコスは納得した。


 「なるほど、それで今は何を?」
 「はい。町を案内しようと思って。それと申し訳ないんですが、ミコトも一緒に連れて行くんで、学校は明日から……」
 「わかったわ。帰ってきたばかりだしね」


 リュコスは苦笑し、そろそろ学校へ向かうと言った。


 「アイト、あたし学校に行くね。サラも一緒に」
 「え、いいのか?」
 「うん。町の案内はあたしたちでするから。ねー」
 「わん。まかせて」
 「がう。サラに〔ひみつきち〕を見せたいし」
 「あう、さらとあそぶ」
 「え、えっと。すみませんアイトさん」
 「い、いや、行ってこいよ」


 ミコト達は競争するように学校へ向かった。


 「ふふふ、残念だったわね、お兄ちゃん」
 「リュコスさん……」




 リュコスは微笑み、アイトの肩を軽く叩いた。
 

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