神様のヒトミ

さとう

閑話・ライラとルカの勉強



 「それでは今日はここまで。また明日ね」
 「「「はーいっ!!」」」


 学校は順調に建設が進み、校舎は間もなく完成する。
 リュコスの指示で備品の発注を運搬も行われ、青空教室も終わりが近かった。


 「はーいっ!! 今日の訓練を始めるわよーっ!!」


 響き渡るルシェラの声。
 ルシェラは、子供達に剣の指導や傭兵の心得を指導している。
 アシュロンは専ら剣技の指導をし、子供達から尊敬の眼差しを受けていた。


 「アシュロン先生、手合わせねがいますっ」
 「……まだ早い。基本を身体に染みこませろ」


 アシュロンも満更ではないのか。しかし表情からはわからない。
 そして、身体を動かすことより、勉強好きな子供もいる。


 「リュコス先生、今日もいいですか?」
 「せんせ、わたしも」


 ライラとルカ。
 特にライラは勤勉で、毎日居残り勉強をしている。
 ルカは勉強もだが、言葉や発音を覚え始め、みんなと簡単な日常会話をこなせるまでになっていた。


 「がぅぅ~。ライラ、かーさま取っちゃダメ」
 「し、シア、ちがうって。わたしはお勉強を」
 「うぁ? ライラ、シアのおかーさんとるの?」


 リュコスは、騒ぐ子供達を見て苦笑する。


 「そうね、じゃあライラちゃんとルカちゃん、今日はウチにお泊まりする?」
 「わふ!? いいの!?」
 「するー!!」


 ライラのしっぽがブンブン揺れ、ルカの耳がピョコピョコ揺れる。
 お泊まりと聞いたシアも喜び、3人は抱き合って喜んだ。




 「さぁ、お家に帰りましょうか」




 ***********




 ライラとルカは、一度領主邸に帰り着替えを取り、シアの家に向かった。


 「リュコス先生、お勉強をお願いします」
 「おねがいします」
 「いいわよ。シア、あなたもおいで」
 「がぅぅ……、あたいはいい」


 羊皮紙を抱えたライラとルカ。
 シアは暖炉の前で丸くなり、ボールを転がして遊んでいた。


 「わふぅ。シア……一緒にやろ?」
 「やろ?」
 「がぅぅ……。ちょっとだけなら」


 シアはライラの隣に座る。
 リュコスがライラとルカの間に座り、優しく言う。


 「さて、お勉強が終わったら、みんなでお風呂に行きましょうか。そこでお夕飯も済ませちゃいましょう」
 「がう? おんせん?」
 「そうよ。領主邸じゃなくて、〔桜湯〕の方ね」
 「わふ。行ったことないです」
 「ないー」
 「じゃ、みんなで行きましょうか」


 
 こうして、ライラたちの勉強は始まった。




 ***********




 学校以外の勉強では、ライラは領土ごとの種族や文化、ルカは発声練習や文字の書き取りを勉強していた。
 特にライラは【風天領土】について興味を示し、リュコスにたくさんの質問をした。


 「【風天領土】は、ライラちゃんと同じ金犬人の住む地域で、広い草原地帯が特徴なの。それと、〔風の王国アディーヤ〕は渓谷に作られた王国で、風の吹き荒れる地域ね」
 「風……寒いの?」
 「いいえ。風は冷たくないけど、渓谷に流れる川は冷たいそうよ。そこの川に住む川魚は絶品で、王国の特産品にもなってるそうよ」
 「おさかな。ミコトが好きだって」
 「そうね。じゃあライラちゃんがアディーヤに出かけたら、お土産を買ってきてもらおうかしら?」
 「うん!!」


 リュコスはライラの頭をなでて、隣のルカを見る。
 ルカは書き取りを一生懸命こなし、真剣そのものだった。


 「ルカちゃん。わからないところはある?」
 「だいじょぶ、まだへーき」
 「そう、いい子ね」
 「あうー」


 頭をなでるとニッコリと微笑む姿が、なんとも愛らしい。
 シアは机に突っ伏して寝息を立てていた。


 「はぁ、シア、起きなさい」
 「きゅるる……」
 「シア、ほら」
 「きゅうん……あれ、かーさま?」


 リュコスはシアの頭をなで、オオカミ耳を揉む。
 時間は夕方に差し掛かり、そろそろ夕飯の時間だった。


 「さて、今日はこのくらいにして、みんなでお風呂に行きましょう。お風呂上がりに夕飯ね」
 「わんわんっ!!」
 「がうーっ!!」
 「あうぁっ!!」




 入浴準備を済ませ、4人は〔桜湯〕へ向かった。




 ***********




 受付で料金を払い脱衣所へ。
 財布などの貴重品は鍵付きロッカーへ入れ、リュコスの手には鍵のバンドを巻く。
 脱衣所は広いが、冒険を終えた冒険者や町の住人で賑わっていた。


 ライラたちは服を脱ぎ1つの脱衣カゴに3人分の服を入れる。
 走り出そうとするライラたちを押さえつけ、リュコスは服を脱いだ。
 その隣に、若い3人の少女たちが現れ、服を脱ぎ始める。


 「いやー今日はけっこう進んだねー」
 「そうね。55階層のポイズンドラゴンは、なかなかの強敵だったわ」
 「確かにネ。あのとき吐いた毒のブレス、まともに喰らってたら死んでたかもネ」
 「ま、毒を受けてもアステリアのアビリティで治療できるから問題ないでしょ。それより、明日は56階層だよ。気合い入れていこう!!」
 「ステラ、明日は武具の手入れをして補給の買い物って言ったじゃない。もう忘れたの?」
 「う、そ、そういえば……」
 「あはは、ステラは忘れっぽいネ」
 「うっさいよセーマ。ま、明日もがんばろー!!」


 冒険者グループらしき3人だが、リュコスは特に気にしなかった。


 「さ、いきましょう。走っちゃダメよ?」
 「「「はーい!!」」」


 リュコスは3人の少女を連れ温泉へ。
 まずは洗い場で身体を洗う。


 「さ、最初はだれ?」
 「がう。あたいがさいしょー」


 リュコスはシアの全身を洗い、しっぽもキレイに洗う。


 「ふふ。シアのしっぽはフワフワね。今はアワアワよ」
 「きゃぅんっ!! かーさまくすぐったいー」
 「はいはい。さ、次はライラちゃん、おいで」
 「わふー」


 シアと同じく洗い、ルカも丁寧に洗う。
 そしてリュコスも身体を洗い、まずは内湯へ浸かる。


 「さ、みんな大人しくしててね」
 「「「はーい」」」


 アイトが精霊の力を借りて作った温泉は、常に適温。
 そして効能も様々で、魔力と疲労の回復や肌や内臓の疾患などにもよく効いた。


 その後、泡風呂や露天風呂に浸かり、シアがのぼせ始めたので上がる。
 意外にもライラとルカは長湯だった事にリュコスは驚いた。


 「さ、身体を拭いて着替えたら、冷たいミルクを飲みましょう。その後はご飯ね」
 「わうー!! フルーツミルクがいい!!」
 「あたいはいちごミルク!!」
 「あぅ、こーひーみるく」
 「はいはい」


 脱衣所の一角に、ミルクの販売所が設けてある。
 これはアイトのアイデアで、風呂上がりに飲むミルクの素晴らしさを伝えるためと、ウルフィーナとギャングに直訴したから出来た物だ。
 当然ながら女性職員が販売し、数種類のミルクを販売している。


 リュコスたちは着替え、それぞれが好きなミルクを買い、飲み干した。


 「はぁ……おいしいわね。アイトくんの言った通りだわ」
 「かーさま、いちごミルクもおいしいよ」
 「フルーツミルクも」


 ミルクを飲み、リュコスたちは簡易食堂へ向かう。
 簡易食堂は人気があり、長蛇の列が並ぶこともあったので増築をした。
 今では立派な町の飲食店の1つとなり、従業員も増えていた。
 特に並ぶことなく店内へ入り、4人掛けのボックス席に座る。


 「わたしはオムライス!!」
 「あたいも!!」
 「わたしもー」
 「あらあら、みんなオムライスね。じゃあ注文するわよ」


 店員を呼び注文し、デザートにアイスも付ける。
 5分ほどでオムライスが運ばれ、ライラたちは美味しそうに食べ始めた。


 「わふ。ミコトもいれば楽しいのにね」
 「がうぅ。しょーがないよ、ボーケンチューだし」
 「あぅぅ、ミコト、あそびたい」


 そんな会話をしながらオムライスを完食し、デザートのアイスも食べる。
 食事が終わり、4人は〔桜湯〕を後にした。


 「わふぅ……おいしかった」
 「うん。おんせんもキモチよかった」
 「あう、こんど、ミコトも」
 「そうね。今度はミコトちゃんも一緒にね」


 外は真っ暗で、オレンジの街灯が町を照らす。
 酒場からは歌声が聞こえ、町を歩く人は上機嫌な者ばかり。


 「リュコス先生、帰ったらまたお勉強してもいい?」
 「あう、わたしも」
 「う~ん。それもいいけど、明日も明後日も時間があるし、今日はゆっくり休むのはどうかしら?」
 「あした、あさって……」
 「そう。焦らなくていいの、ゆっくり一歩ずつ、ね?」
 「あぅ……」


 リュコスはライラの頭に優しく手を乗せ、イヌ耳に触れた。


 「うん。わかった。今日はシアと寝る」
 「わたしもねるー」
 「がう。今日はお泊まりだし、いっしょのベッドで寝よ」


 リュコスは微笑ましい光景に、自然と笑顔になる。




 ライラたちの夜は、まだこれからだった。
 

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