神様のヒトミ

さとう

閑話・無限光の減光。さらば勝利



 エルが消えて数日。ハニエルは仕事をする気になれず、部屋でひたすらダラケていた。
 ハニエルの仕事はいくつかあるが、その中の1つに【救世主】たちの戦闘指導がある。が、とてもそんな気分にはなれなかった。


 寝間着のままベッドに転がっていると、部屋のドアがノックされる。


 「ハニエル、入るわよ」
 「······なに、ヴァージニア。あたし眠いんだけど」


 入って来たのは、20歳ほどの女性。
 長い金髪を括り、肩から胸元に流している。
 服装は胸元の開いたワンピースに、白いマント。
 顔立ちは美人そのもので、少女のようなあどけなさを残していた。


 彼女は、【無限光の11人アインソフオウル・イレブンティファレト】・ヴァージニア
 ハニエルと同じデューク王国幹部であり、最高戦力の1人である。


 「悪い知らせよ。それと、シェキナおばさんが城にいる幹部を集めて話をしたがってる。行くわよ」
 「パス」
 「ダメ。それに、貴女にとってはいい話よ。こんな言い方するのはダメだけどね」
 「······なに? エルが見つかったの」
 「残念だけど違うわ」


 ようやく興味を示したハニエルに、ヴァージニアは告げる。




 「シャダイが死んだわ。その件でシェキナおばさんがみんなに話を聞きたいんですって」




 ハニエルは、ようやくベッドから身体を起こした。




 **********




 城の会議室に、幹部たちは集まった。
 デューク王国にいない幹部を除き、集まったのは6人。


 【無限光の11人アインソフオウル・イレブン王冠ケテル】エヘイエ
 【無限光の11人アインソフオウル・イレブン知恵コクマー】ヨッド
 【無限光の11人アインソフオウル・イレブンティファレト】ヴァージニア
 【無限光の11人アインソフオウル・イレブン勝利ネツァク】ハニエル
 【無限光の11人アインソフオウル・イレブン王国マルクト】シェキナ
 【無限光の11人アインソフオウル・イレブン知識ダアト】アドナイ


 エルは行方不明、シャダイは死亡。そして残りの3人はデューク王国の加盟国へ出向いている。
 彼らの座る円卓には、椅子が11脚あるが、内5脚は空席だった。


 皆を集めたシェキナが、さっそく本題を語る。


 「さーて、忙しいからちゃっちゃと済ませるよ。触りの部分は話したけどもう一度。シャダイが死んだ」


 始めから静かだったが、さらに深く静寂になる。


 「期日になっても連絡1つよこさない。そこまではいつもと変わらなかったんだがねぇ。強制転移をしたら、帰って来たシャダイは死体だった。だが、死因がよくわかんないだよ」
 「よ、よくわからないとは? はい」
 「言葉の通りさ、ヨッド。全身の骨が砕けて内臓がケツの穴から飛び出してたのさ。まるで、巨大な何かでプレスされたようなねぇ」
 「う······」


 ヴァージニアが口に手を当てた。
 そして、アドナイが言う。


 「ふむ? 【火天アグニ】とはどのようなアビリティを持ってシャダイを?」
 「それがねぇ。どうも交戦した感じがしないんだよ。身体はキレイだし、まるで突然巨大な何かに押しつぶされた、って言うほうがしっくり来る」
 「じゃ、じゃあ、シャダイさんは【火天】に会うことなく死んだ、ということですか⁉」


 ヨッドが汗を流しながら叫ぶ。  
 懐からハンカチを取り出し、流れた汗を拭き取っていた。


 「恐らく。まだ詳しい情報が来てないからなんとも言えんが、恐らくは【裏切りの救世主】が絡んでる可能性があるさね」
 「確か、アイト? とかいう少年でしたね」
 「ふーん。あの子か」


 ヴァージニアの呟きに、ハニエルは反応した。
 この中でアイトと面識があるのは、ハニエルだけだ。


 「問題ない。【救世主】とはいえ1人、こちらにも【救世主】は居る。さらに我らも居る。シャダイを失ったのは仕方ないが、戦力的には問題ない」


 エヘイエの発言は、間違いではない。
 デューク王国の兵力に加え、加盟国の戦力もある。
 そして、【無限光の11人アインソフオウル・イレブン】の存在と【救世主】


 現状維持。という妙な結論で会議は終了した。
 引き続き【救世主】の育成と魔帝族の情報を集め、来たる戦争に備えるという結論に。


 だが、この時から既に間違っていた。
 エヘイエは愚か、誰も知らない。




 スパンダマルドが現れれば、デューク王国どころか世界が終わると。




 **********




 ハニエルは、自室の整理をしていた。
 着替えを集め、今まで稼いだコインを集め、旅支度を整える。
 ハニエルの作り出した異空間に、全てを収納する。


 ハニエルのアビリティの1つ、【密室空間ディメンションルーム
 それは空間を操り、異空間に収納スペースを作り出す。


 ハニエルは空間制御に特化したアビリティを操る。
 見えない空間を作り出したり、空間に閉じ込め押しつぶしたり、巨大な質量の空間を生み出し壁を作ったりと、出来ることは様々だ。
 アイヒの《立入禁止キープアウト》は、ハニエルの空間制御からヒントを得て作り出した物である。


 「さーて、こんなモンか」
 「珍しいじゃない。貴女が掃除なんて」
 「ありゃ、ヴァージニアじゃん。まだなんか用なの?」
 「違うわ。貴女を見送りにね」
 「······バレてたか」


 ハニエルは、【無限光の11人アインソフオウル・イレブン勝利ネツァク】を辞めて、旅に出るつもりだった。


 「ま、そろそろ潮時かなって。お金も稼いだし、【救世主】はもうあたしの手には負えないし」
 「確かにね。あの子たちの相手をまともに出来るのって、今じゃエヘイエとラフィーくらいだしね」
 「うん。確かにありゃ【救世主】だわ。でも、な〜んか魔帝族に勝てる気しないんだよねぇ」
 「······どういうこと?」
 「う〜ん、なんとなく」


 ハニエルの微笑みに、ヴァージニアに釣られて笑う。


 「ヴァージニア、一緒に行く?」
 「······それも楽しそうだけど、遠慮するわ」
 「そっか。ざ〜んねん」


 本気ではなかったのだろう、声色は変わらない。


 「エヘイエのことだし、どうせシャダイやエル、ついでにあたしの代わりはいるでしょうね」
 「ええ、すでに候補は何人かいるわ」
 「そっか。ま、それなりに楽しかったわ」
 「これからどうするの?」
 「う〜ん。デズモンド地域を回って、エルを探してみる。情報屋の調べだと、こっちの地域にはいないみたいだしね」
 「そう。気を付けてね」
 「うん。ありがと」


 ハニエルは窓を開け、ふわりと舞う。
 空間を固定し足場を作り出し、空中を歩き出した。


 「じゃあねヴァージニア。今度はエルを連れて遊びに来るから、ちゃんと予定を開けて置きなさいよ」
 「はいはい。全く······」


 ハニエルは、風のように去って行った。




 その姿が見えなくなるまで、ヴァージニアは見送った。



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