神様のヒトミ

さとう

111・大蛇都市ヘッジヴァイパ



 ヘッジヴァイパ国の検問を抜け、アイトとミコトは入国した。


 「おぉ、やっぱ賑わってるな」
 「うん。なんかヘンなニオイー」
 「ニオイ?」
 「うん。クナイのお店みたいな、くすりのニオイする」
 「ああ、ここは錬金術師の集まる国だし、薬や薬草なんかを扱ってる店が多いからだな」
 「にゃう。これからどうするの?」
 「とりあえず宿を確保かな」


 2人は歩き出し、買い食いしながら宿を探した。


 「アイト、この香草クッキーっておいしいね」
 「だな。お土産に買っていくか」


 アイトは露店で買った香草クッキーを箱で買い、異空間に入れる。
 それ以外にも、ハーブティーやハーブの苗などを買い、異空間に収納した。


 「ははは、いい土産ができたな」
 「にゃあ。そんな葉っぱどうするの?」
 「そうだな。アスルルさんに育て方を聞いて、自分で育ててみるか。それともミコトがやってみるか?」
 「う~ん……かんがえとく」


 ミコトをなでて再び城下町を歩き、1軒の大きな宿を取る。
 受付を済ませ、部屋に入ると、ミコトがベッドにダイブした。


 「にゃっふぅっ!!」
 「こーら、あんまり暴れるなって」
 「にゃーお。は~い」
 「さて……」


 アイトはここで、《映像開示タッチパネルディスプレイ》を開いた。




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 【大蛇都市ヘッジヴァイパ】 LEVEL93


 ● 国王・【伊舎那天いざなてんイシャーナ】 
 ●守護者・【伊舎那天いざなてんイシャーナ】 


 ●データベース
 ○住人 61005人 〔詳細〕
 ○家屋  9105軒 〔詳細〕
 ○商店  1056軒 〔詳細〕


 ●敷地全体図   〔表示〕
 ●登録ギルド   〔表示〕 
 ●公共施設図   〔表示〕


 ●検索【       】


 以下・未開放


 ********************




 「あ!! こないだのキラキラだ!!」
 「人目に付くからな。まずはマップを見て検索してみよう。わかってるのは、錬金術師で、名前はヒュドーラ……」


 アイトは検索の欄をタッチすると、キーボードが浮かび上がってきた。
 ローマ字方式の入力に苦笑しつつ、「ヒュドーラ」という文字を入れる。


 「お……、よしビンゴ!! ヒットしたぜ」
 「にゃう。難しくてわかんない」


 マップにアイコンが表示され、住んでいる場所が表示された。


 「おかしいな、錬金術師なのに、店を構えてるワケじゃない……普通の家屋みたいだ」
 「とりあえず行ってみる?」
 「そうだな。ちょっと待って……」


 アイトはラクシャーサから貰った城下町の地図に、アイコンが表示されてるポイントを書き込む。


 「それにしても恐ろしい能力だな。隠れても隠れられないぞ、こりゃ」
 「でも、はやく見つかってよかったじゃん」
 「まぁな……」




 地図を握りしめ、アイトとミコトは宿から出た。




 ***********




 「ここ、だよな」


 住宅街の端、城壁を背にしてその家はあった。
 日当たりは最悪の一言に尽き、小さいながらも庭がある。
 見た目は普通の2階建ての家で、煙突からはモクモクと煙が吐き出されていた。


 「にゃ……なんか怖い」
 「待ってるか?」
 「ううん、行く」


 アイトの背中にミコトは飛びつき、アイトの肩から顔を出す。
 ネコ耳がアイトの耳をくすぐり、アイトはくすぐったい気持ちになった。


 「よし、行くぞ」


 アイトはドアをノックし、反応を待つ。


 「………」
 「にゃ?」


 もう一度ノックをする。


 「………」
 「………」


 無反応。だが、アイトとミコトは人の気配を感じていた。
 家の中には間違いなく誰かがいる。


 「すんませーん!! ヒュドーラさん居ますかーっ!!」
 「にゃーーっ!!」


 ミコトも鳴くが、それでも反応はない。
 少しイラついたアイトはドアをガンガン叩き、もう一度言う。


 「あのー、クロウリーさんの手紙を預かってきたんですけどーっおぉっ!?」


 すると突然ドアが開き、アイトは思わず下がった。


 「………クロウリーだって? なんだい、懐かしい名前だねぇ。あと、ドアが壊れるだろ? ガンガン叩くんじゃないよ、あとデカい声で騒ぐんじゃない」
 「……す、すみません」


 出てきたのは、見た目80代ほどの老婆だった。
 しわくちゃの顔に白い髪を頭頂部で団子にして纏めている。
 そして首筋から見えるのは、蛇のような鱗。
 手には細いキセルを持ち、かなり酒の匂いがした。


 「ふん。入りな、手紙と話くらいは聞いてやるよ」
 「にゃう……」


 ミコトも少し怯えていたが、アイトと一緒に家の中に。
 暖炉の前には揺り椅子とサイドテーブルがあり、テーブルの上には飲みかけのテキーラが置いてあった。
 老婆ことヒュドーラは椅子に腰掛け、飲みかけのテキーラを煽る。


 「手紙、よこしな」


 据わった目でアイトに言う。
 歓迎されるワケでなく、立ったままアイトは手紙を差し出した。


 「ふん、汚い字だ。変わってないねぇ……」


 封を開け、羊皮紙に目を通していく。
 アイトはゴクリとツバを飲み、ミコトはじっとヒュドーラを見ていた。


 「………ふむ。錬金術師ねぇ」
 「あ、あの」
 「黙ってな」


 ヒュドーラはニヤリと笑い、読み終えた手紙を暖炉に投げた。


 「ちょ!? な、何を」
 「慌てんな小僧。手紙はもう読んだ」
 「え」
 「なるほど、【救世主】の領主ねぇ。それに、このアタシをスカウトとは……」
 「あ、あの」
 「面倒な話は抜きだ。アンタの町に行ってやってもいい。クロウリーには借りがある……というかあのジジィ、「死ぬ前に借りを返せ、老い先短い残りの人生で返せるほど安い借りを貸したつもりはない」とかヌカしやがるわ」
 「あー……、そうですか」
 「ふん。アンタの町の錬金ギルドのギルド長のなってやる。その代わり、仕事は弟子に任せるが、それでいいね」
 「弟子?」
 「ああ。一通り仕込んであるけど、まだ20人分の仕事しか出来ないヒヨッコだ。が、ギルド1つ分くらいの仕事は出来るくらいは使えるハズさ」
 「に、20人って……」
 「ふん。アタシは1人で1000人分の仕事が出来るさ。それに比べたら20人なんてヒヨッコどころか受精卵さ」
 「は、はぁ。その、お弟子さんはどこに?」
 「地下室でエクスポーションを作らせてる。練習ではまだ10本程度しか作れないから、一度に最低500本は作れるようになって貰わないとね」
 「ご、500!? そ、そんなのムリなんじゃ……」


 アビリティを駆使したクナイですら、1日に20本が限度だ。
 それを500本。どう考えても不可能だ。


 「舐めんじゃないよ。ポーション類の調合は薬品と薬草、魔力の調節で全てが決まる。逆に言うと、それさえ完璧なら、アビリティなんぞなくたって完璧なポーション類を作れる」
 「で、でも」
 「いいか、覚えておきな。知識と経験は時にアビリティをも越える」
 「あ……」


 その時のヒュドーラは、何故か鬼人のオババと被って見えた。


 「アタシは一度に1000本のポーションを調合出来る。もちろんアビリティなんぞ使わない。知識と経験で薬品を調合し、魔力で味付けする。まぁここまでになるのに2500年は掛かったけどね」
 「に、にせんごひゃく……? にゃう?」


 ミコトは首をかしげる。
 そして、地下室への扉が開き、中から人影が現れた。


 「失礼します。お師匠様、ポーションの確認を……」
 「遅い。調合から魔力込めまで何分掛かっているんだい?」
 「す、すみません……しゃう」


 現れたのは、小さな女の子。
 ミコトと同年代だろうか、ディープブルーの髪はショートカットに切りそろえられ、顔立ちはとても愛くるしい。
 魔帝族なのか人間なのかわからないが、俯いてしょんぼりしてる。


 「ふん。ポーションをよこしな」
 「は、はい……」
 「早く」
 「は、はい!!」


 少女は試験管に入ったピンクのエクスポーションを差し出す。
 緑がポーション、青がハイポーション、ピンクがエクスポーションと、素材の純度や種類、魔力を込める分量で性質が変化する。


 「……ふん、まだまだだね。素材に問題はないのは間違いない。なら、お前が込める魔力にムラがある。もと集中しな」
 「は、はい。わかりました、お師匠様」
 「それと、引っ越しをするから荷造りしな。この工房から新しい工房に引っ越すよ」
 「はい………、え? えぇぇっ!?」
 「早く、準備しな」
 「ひ、引っ越しって? え?」
 「アイト、説明しな」
 「え、俺ですか!?」


 突然すぎるのはアイトも同じで、思わず少女と目が合った。


 「にゃう。こんにちは、あたしミコト!!」
 「しゃう!? あ、あの、サラです。はい」
 「えへへ、キレーな髪の毛だね、さわっていい?」
 「ふぁ!?」


 ミコトはサラに近づくと、頭をサワサワなでる。
 子供同士、引かれるのか、アイトも取りあえず事情を説明した。


 「え、えと、つまり、お兄さんの町のギルドで働くということですね?」
 「そう。いきなりで申し訳ないけど」
 「は、はい。ですが……私のポーションで、いいのでしょうか」


 サラは少し俯き、悲しそうな顔になる。


 「サラ、その後ろ向きな考えは止めろと言ったハズだよ」
 「す、すみません……」
 「アイト、あんたはイシャーナの所へ行って、サラを連れてく報告をしな」
 「え、イシャーナって……、【伊舎那天いざなてんイシャーナ】ですか!? な、なんで!?」
 「そりゃサラがイシャーナの親戚だからさ。アタシがサラを預かってるのも、イシャーナに頼まれたからだしね」
 「え!? じゃあサラって、【獣王種族】なんですか!?」
 「そうさね。青蛇人さ」


 アイトは思わずサラを見た。


 「にゃあ。サラ、町に着いたらともだちを紹介するね」
 「ともだち?」
 「うん。ライラにシアにルカ。みーんな仲良しだよ」
 「そ、そうなんですか」
 「うん。あ、これあげる」
 「これは?」
 「鈴カステラ、おいしーよ」
 「ふわ、甘い匂い……あむ……。おいしい!!」
 「ね?」


 ミコトと楽しくお喋りするサラは、やはりそうだった。










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 【サラ】♀ 7歳 青蛇人


 ◎【異能アビリティ
 《蛇神転身サラスヴァティ・コンバージョン
  ○魔蛇サラスヴァティへ変身する


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