神様のヒトミ

さとう

110・戦乱姫



 「ねぇアイト。どうやって行くの?」
 「ま、見てろ」


 ヘッジヴァイパへ続く街道を歩く2人。
 いつもと変わらず歩いているだけなので、ミコトの疑問は最もだった。
 そして街道からやや外れ、アイトは周囲を確認する。


 「とりあえず、人目には付かないかな······『開眼』」


 世界が一瞬で切り替わる。
 最近は忙しく、なかなか来る機会のなかった世界【黄昏世界アーヴェント】へアイトはやって来た。


 《あ、来た来た。やぁアイト》
 「おぉ、スパンダルマド。久しぶり、喋れるようになったのか」


 アイトの肩に、小さく黄色いアメンボがいた。
 前脚を上げ、まるで挨拶するかのような仕草を見せる。
 アイトは人差し指を近付け、前足にタッチ······出来なかった。


 「やっぱムリか······」
 《あはは。気持ちだけでも嬉しいよ。キミに触れて話せるようになったし、たまにはボクを呼んでくれると嬉しいな》
 「あー······、それは難しいな。お前の力を外で開放したら、世界が滅んじまう」
 《まぁ確かに。じゃあお話だけでも》
 「それならいくらでも。おぉ?」


 すると、アイトの周りに、小さなネコが集まって来た。
 どれも子猫で可愛らしい。


 《やぁアイト。遊ぼ》
 《ボクたちも外に出たいなぁ》
 《なんでも出来るよ、任せてよ‼》
 「そうだな。じゃあさ、空を飛ぶことって出来るか? 出来たらミコトを乗せて、ヘッジヴァイパまで」
 《当たり前じゃん。なんならデズモンド地域を100周くらい》
 「いやいや‼ そこまではいいって」


 アイトの考えは、空を飛んで進むことだった。
 舞空術を使えれば、かなり楽に進めると思ったのである。






 《空を飛ぶ、つまり風になる、それはつまり【嵐】······そう、つまり私の出番が来たようね‼》






 突如、そんな声が聞こえてきた。




 **********




 セピア色の上空から、それはやって来た。




 《天よ地よ光よ闇よ‼ 黄昏の世界に吹き荒れる【嵐】の女神‼ 【戦乱姫せんらんきアブラクサス】ただいま参上‼ なーっはっはっはぁっ‼》




 アホっぽい叫び声と共に現れたのは、鎧を纏った幼女だった。
 羽つきの兜からエメラルドグリーンの髪をなびかせ、人形のようにデフォルメされたポニーに跨っている。
 背中には突撃槍を背負い、まるで戦乙女のようだった。


 《アンタがヤルダバオトの継承者ね。ふぅん······なかなかのイケメンじゃん》
 「······誰?」


 アイトはスパンダマルドと足元の子猫たちに確認する。


 《この子は【戦乱姫せんらんきアブラクサス】だよ。ボクと同じ【黄昏の七ッ星トワイライト・セブンスター】の1体》
 「へぇ、ちっこいけど」
 《なんですって⁉ 誰がちっこいよ誰が‼》


 アブラクサスは背中の突撃槍を振り回すが、アイトには当たらない。
 オモチャのようなポニーに跨がるアブラクサスは、大きく見ても40センチほどしかない。


 「で、なんか用か?」
 《聞いたわよ。アンタ、スパンダルマドを解放したんですってね》
 「まぁな。ちょっとヤバかったけど」
 《ふっふっふ。なら、アタシも解放しなさい!!》
 「え、ムリ」
 《な、なんでよ!!》
 「いやだって、スパンダルマドの大きさを見てなかったのかよ。ちょっと動いただけで大陸が滅びるぞ」
 《む~っ!! アタシも外に出たいのにっ!! ずるいずるいずるいーーっ!!》


 アブラクサスは突撃槍を振り回しながらアイトの傍をビュンビュン回る。
 触れこそしないが、アイトは少しうっとうしかった。


 「わかったわかった、機会があったらな」
 《なんか適当ね……。なら、そーれっ!!》
 「おわっ、なんだ?」


 アブラクサスの突撃槍から光が溢れ、アイトを包み込んだ。
 そして、アイトの中に何かが芽生える。




 **********************


 神世かみよの 藍斗あいと ♂ 15歳


 【異能アビリティ
 1・《森羅万象しんらばんしょう大開眼だいかいがん
 ○見たモノの情報を見ることが出来る
 ○究極開示(レベル3)
 ○映像開示タッチパネルディスプレイ
 ○自身より格下相手の動きを完全に読み取る


 2・《万象神ばんしょうしんヤルダバオトのひとみ
 ○隣り合う世界に干渉することが出来る


 3・《泥蟲どろむしスパンダルマド》
 ○隣り合う世界に居る、【泥】に潜む魔虫を召喚する


 4・《戦嵐姫せんらんきアブラクサス》 NEW!!
 ○隣り合う世界に居る、【嵐】の姫君を召喚する


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 「……って、勝手なことすんなよ。おい」
 《いーでしょ。これならいつでも呼べるからね》
 「全く、このチビ助は……」


 アブラクサスはニヤニヤ笑い、風に乗って去って行った。


 《ゴメンねアイト。アブラクサスはワガママだからさ……》
 「いや、お前が謝ることじゃないって」


 アイトはスパンダルマドを慰め、改めて子猫たちに頼む。


 「話は逸れたけど、改めて頼む」
 《いいよ。じゃあボクたちを解放して、空を飛ぼうか》
 《やったぜ、外に出れるっ》
 《お出かけお出かけっ!!》


 子猫たちがアイトの中に吸い込まれ、アイトの身体が発光する。


 「じゃ、また来るよスパンダルマド。またな」
 《いってらっしゃい。楽しんできてね》




 アイトはミコトの待つ外へ出た。




 ***********




 「にゃう。アイト?」
 「よし、行くぞミコト」


 アイトはミコトをおんぶして、妖精たちを一気に解放する。


 「にゃ……、にゃぁぁ……!?」
 「おーし、行ける……」


 アイトの身体はゆっくり上昇し、まるで無重力の中にいる感覚に囚われる。
 移動はアイトの意思で自由に行えるし、どういうワケか寒くも暑くもない適温だ。


 「にゃぉぉ……すごい……」
 「よーし、飛ばすぞミコトっ!!」
 「にゃ、にゃうぅぅぅ!!」


 アイトはスーパーマンのように水平になり飛び出した。
 時速は200キロを越え、風景がめまぐるしく変わる。


 「うっひょーーーっ!! 気持ちいいーーーっ!!」
 「にゃおーーーっ!!」


 アイトは調子に乗り、きりもみ回転や急降下をして遊ぶ。
 その度にミコトがはしゃぎ、アイトも興奮した。


 「どうだミコトーーーっ!! 楽しいかーーーっ!!」
 「たのしいーーーっ!!」


 飛ばすこと1時間。あっという間に到着した。


 「見えた……、あそこがヘッジヴァイパだ!!」


 見えたのは、大きな外壁に囲まれた円形の国。
 森や川に囲まれた、美しい国だった。




 アイトはゆっくりとスピードを落とし、近くの林に着陸した。



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