神様のヒトミ

さとう

109•露店



 「お、着いた着いた。ちょうど町の真ん中だ」
 「にゃ〜お。帰って来た」
 「とりあえず、ウルフィーナさんに許可をもらったら帰るぞ。店主さんには転移クリスタルを渡しておこう」


 露店の店主は、口を開けたままポカンとしていた。


 「お、おい兄ちゃん? ここは? なにが?」
 「ここはリアンの町で、転移魔術で来たんです」
 「てんい······転移か⁉ 魔術で転移って、マジかよ⁉」
 「はい。とりあえず店ごと転移しました。後で転移クリスタルを渡しますから、私物や引っ越しは自分でお願いしますね」
 「······えと」
 「えーと、まぁ詳しくは担当の者にお任せしますんで」


 すると町の中央なので注目を浴び、何人かの冒険者が集まって来た。


 「おい、クレープだってよ」
 「へぇ〜、甘いニオイねぇ」
 「食べてみよっか?」
 「おじさん、4つ下さいな」


 露店の設備はそのままで転移したので、営業は問題ない。
 まだ事態を飲み込めない店主だが、仕事となると話は別。素早い動きでクレープを完成させた。


 「おい、この果物はなんだ?」
 「甘くておいし〜‼」
 「緑色? 初めて見たわね」


 そして、露店にはいつの間にか行列が出来ていた。
 店主は忙しそうにクレープを焼き、アイトにメロの実を渡して言う。


 「よく分からねぇが仕事だ‼ ワリィが話は後で、メロの実は渡しておくからよ‼」
 「は、はい。じゃあ担当者を呼んで来ますんで」


 アイトはウルフィーナの元へ向かい、事情を説明した。
 ウルフィーナは店主の元へ向かい、住人の手続きやら細かい打ち合わせをしに行く。


 アイトはメロンを抱え、ミコトと一緒にラウルの農園へ向かう。


 「アイトが出かけても帰って来てたのって、お店の人を連れて来てたからなんだね」
 「ま、まぁな。まさか最初に立ち寄った露店をスカウトすることになるとは思わなかったけどよ」




 今日中に戻ろうと、アイトは誓った。




 **********




 アイトとミコトは、ラウルの家へ来た。
 そして気が付く。


 「あれ、看板がある」
 「にゃ?」


 看板には大きく〔ラウル農園〕と書かれていた。
 看板の隣が広く拡張され、まるで農園の入口になっている。
 ラウルの自宅も変化し、1階建ての平屋になっていた。


 アイトとミコトは家の裏に周り、驚いた。


 「なんか、狭いな」
 「にゃお? ホントだ」


 広かった農地は縮小され、畑があるだけになっている。
 最初は田んぼもあったはずだが、埋め立てられてビニールハウスに変化していた。


 「おや、アイト町長。こんにちは」


 ビニールハウスの中から、ラウルが現れた。


 「こんにちはラウルさん。あの、なんか変化してません?」
 「ありゃ、報告書を見てないんですか? 実は農園の規模を広げて会社を作ったんです。成長促進剤のおかげで作物の成長が早いので、私1人では対応出来なくて」


 ラウル農園は、一般的な野菜とコメ、そしてラウルの品種改良で作った野菜を販売する会社となった。
 それに合わせて従業員を雇い、田畑を町外れに移動して本格的な栽培を始め、自宅を改装して事務所にし、さらに事務所の裏を研究所にしていた。
 日々、新たな作物を作り出して、事務所裏の畑で試験的に植えて育て、商人ギルドの商人たちが売れると判断した場合、町外れの田畑で栽培をする。


 「商人ギルドの資金提供のおかげで、ここまでの会社を作れました。ははは、この町は最高ですよ」


 ラウルは満面の笑みを浮かべ、アイトの持つメロの実に注目する。


 「アイト町長、それは?」
 「あ、実はラウルさんに、このメロの実を育てて欲しくて」


 アイトはシュネクの町の出来事を説明し、リアンの町の中央でクレープ販売をしてる店主の話をする。


 「なるほど。面白い、メロの実ですか······では、一度クレープを食べに行ってきます」
 「はい。店主さんとも話をしてあげて下さい」
 「わかりました。ふふふ、楽しみだ」


 ラウルは駆け足で去って行った。


 「あとは任せて、シュネクの町に戻るか」
 「にゃお。お土産を買わないと‼」


 アイトはミコトと手を繋ぎ、シュネクの町へ転移する。
 一瞬の浮遊感を感じ、あっという間にシュネクの町へ戻ってきた。


 「さて、行くか」
 「うん‼」


 そして、気が付いた。




 「あ、クレープ屋の店主、名前を聞いてないや」




 **********




 それから数時間。アイトたちは買い物を楽しんだ。
 お土産用のフルーツクッキーや、装飾品屋で買った子供用アクセサリー、ライラたちが喜びそうなぬいぐるみなど、町を回って買い物歩きをする。
 もちろん、旅の物資の頂戴も忘れずする。
 アイトはイノシシ鍋用の野菜を購入し、シュネクの町を出たら鍋を作る約束をミコトとした。


 夕方。町の飲食店で豪華な夕食を取り、宿へ帰る。


 「にゃお、たのしかった」
 「ああ。でも次はもっと楽しいかもしれないぞ? なんて言っても王国だからな」
 「うん‼」


 ミコトの頭をなで、ベッドに入る。
 すぐに眠気に襲われ、アイトたちは眠りについた。




 次の目的地は、〔大蛇王国ヘッジヴァイパ〕



「神様のヒトミ」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く