神様のヒトミ

さとう

101・教師



 バーベキュー翌日の朝食終了時。アイトはラクシャーサに色々聞いていた。
 女性陣は既に仕事に出かけ、居間に居るのはアイトとラクシャーサ、リュコスとシア、ミコトとルカとライラの7人である。
 ちなみにウルフィーナとギャングは執務室で仕事をしている。


 「あの、ラクシャーサさん。【伊舎那天いざなてんイシャーナ】ってどんな人ですか?」


 ヘッジヴァイパに行くのはアイトとミコトだが、直ぐに出発するわけではない。
 可能な限りの情報を集め、やれるべき仕事を終わらせ、旅の支度をしてからの出発である。


 「イシャーナか。彼女は【魔帝十二神将】で最も優れた錬金術師で、多くの錬金術師の弟子を抱えている。〔大蛇王国ヘッジヴァイパ〕の女王でありながら、王国に錬金術師の学校を作り、毎日休まず教鞭を振るっているそうだ」
 「女王……。女性なんですね」
 「ああ。ちなみに【魔帝十二神将】の5人は女性だよ。イシャーナみたいに研究や魔術に特化したアビリティを備えてるのが殆どだけどね」


 すると、シアを抱っこしていたリュコスが言う。


 「あら、スーリヤ様みたいに戦闘に秀でた方もいらっしゃるわよ? ふふふ、また狙われないといいけどね」
 「う……」
 「へ? なんかあったんですか?」
 「い、いや。気にしないでくれ」


 ラクシャーサは苦笑し、紅茶を啜る。
 シアはリュコスの膝から降りると、ラクシャーサの膝に座った。
 アイトの膝にはルカが座り、いつの間にか眠ってる。
 ミコトはアイトの隣でジュースを飲み、ライラはじっとリュコスを見ていた。
 アイトは気になったことを聞く。


 「あの、ヘッジヴァイパにも……、その、いるんですよね?」


 アイトは、ルカを抱きしめ頭をなでながら聞く。
 ルカは気持ちよさそうに鳴いた。


 「ああ。青蛇人の少女はいるだろうけど、どういう扱いを受けてるかはわからない。イシャーナならそこのルカちゃんみたいな扱いはしないと思うが……」
 「そう、ですか……」
 「そもそも、【獣王種族】に出来る子供が【災禍の魔獣オーバーロード・ビースト】とは限らない。アグニなんかは何人もの熊人の妾を取り、生まれてきた子供が普通の熊人だったらしい。そのうちの子供の1人が熊人と結婚して生まれてきたのがそこのルカちゃんだからね」
 「じゃあ、ルカは普通の熊人の子?」
 「いや、薄いがアグニの血も入っている。たまたま出産の時期と【災禍の魔獣オーバーロード・ビースト】の誕生の瞬間が重なったんだろう」
 「そうなんだ……。じゃあ、ルカのホントの両親はいるんだ」
 「………ああ。だが、会わせないほうがいい」
 「え?」
 「……普通の熊人の両親から生まれた、真っ赤な毛を持つ赤熊人。調べたが、どうやらルカちゃんは売られたようだ。それでアグニの研究施設で実験を」
 「あなた。子供の前で……」
 「……すまない」


 リュコスが止め、ラクシャーサは黙った。
 ミコトもライラもシアも、難しいのかよく理解していない。
 少し空気が重くなったが、思い出したようにリュコスが言う。


 「アイトくん。お願いがあるの」
 「はい? なんでしょうか」
 「実は、昨日の夜にいろいろ話を聞いたの。シアやミコトちゃんたちの生活」
 「はぁ、毎日楽しく過ごしてますね」
 「ええ。秘密基地や追いかけっこ、美味しいお菓子や住人の子供達のふれあい。シアがこんなのも笑顔でいられるなんて、素晴らしい町ね」
 「がぅ~♪」


 シアは嬉しそうに笑い、ミコトやライラも微笑む。
 ラクシャーサは何故か苦笑し、アイトは首をかしげた。




 「でも、そろそろお勉強もしなくちゃいけないわね?」




 ピキリ、と空気が凍り付いた。




 ***********




 「アイトくん。私もこの町で暮らす以上、お仕事が必要なの。ラクシャーサの話だと学校を建設中だとか……。私を教師として雇ってくれないかしら?」
 「え、マジすか?」


 ミコトとシアは凍り付き、ライラは目を輝かせる。


 「はーいっ!! わたしお勉強したいっ!! わんわんっ!!」
 「にゃーっ!! お勉強いやーっ!!」
 「がぅぅーっ!! あたいもイヤーっ!!」
 「うぁっ!? あぅぅ?」


 いきなりの大声に、ルカが起きた。


 「あはは。ライラちゃんはお勉強がしたいんだね?」
 「うん!! いっぱいお勉強して、アイトと旅に出るのっ!!」
 「にゃぅぅ……」
 「きゅぅん……」
 「あぅぅ?」


 ラクシャーサはアイトに言う。


 「リュコスは元はオレの秘書でね。国政からギルドの運営、デズモンド地域の歴史や文化まで詳しいのさ。フェンリル国の歩く図書館みたいなモンさ」
 「あなた、それは言い過ぎよ」
 「そんなワケないさ。病に倒れた後も仕事を続けたおかげで、国は傾かず済んだし、その間に後継者の育成も出来た。キミには感謝してるよ」
 「もう……」


 若干蚊帳の外のアイトだが、確認はする。


 「え~と、学校はまだ完成してないですけど」
 「大丈夫。完成までは学校敷地内の外でやるから」
 「うん。それなら大丈夫だろう」
 「わかりました、じゃあリュコスさんに学校の教師をお願いします」
 「任せてね。ルカちゃんもちゃ~んと言葉を教えてあげる」
 「あぅ?」




 こうして、新任教師のリュコスが住人となった。



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