神様のヒトミ

さとう

100・新たなる目的地

 
 リアンの町誕生と、リュコスの快気祝いは大いに盛り上がった。
 アイトたちは普段は飲まない酒に軽く手を出し、意外にもエルは酒豪という事に気が付いた。


 食事が終わり、片付けも終わると、アイトはラクシャーサに言う。


 「よかったら家族で温泉にでもどうぞ。シアとリュコスさんと3人で」
 「いいのかい? それは嬉しいな」
 「ええ、こんなに楽しいのも久し振り。ねぇシア」
 「うん。とーさまとかーさまが一緒に居てくれるなんて、ひさしぶり」


 シアの尻尾はブンブン揺れ、そのままラクシャーサに飛びつく。
 その様子を、ミコト達が羨ましそうに見ていた。


 「ミコトたちは、ミレイたちとだな」
 「にゃう。アイトと一緒がいい」
 「わたしも」
 「あぅあ」
 「え」


 意外な言葉にアイトも驚く。
 そこでアイヒがフォローした。


 「ダーメ。ミコちゃんたちは女の子なんだから、男の人と一緒に入るのはダメなの」
 「にゃあう、アイトはあたしの家族だもん」
 「わたしだって家族ですー」
 「かぁじょくー」
 「う、それを言われると……。ねぇアイト」
 「う~ん。俺は別にいいけど」
 「じゃあ私も入る。アイト1人じゃミコト達を洗うのは大変」
 「では私も。主殿のお手伝いを」
 「あ、私も入りまーす」
 「ちょ、あぁもう、じゃあみんなで入るしかないじゃない!!」


 こうして、ラクシャーサとリュコスとシア、アイトたちというグループに分かれて入浴をする事になった。
 片付けが終わると、ウルフィーナとギャングは自宅へ戻り、アイトたちは寝間着に着替えて温泉に。
 領主邸の温泉は男女に分かれているので、ラクシャーサたちとアイトたちで分かれる。


 脱衣所に入り、服を脱ぐ。


 「わーい!! みんなでオフローっ」
 「わぉーん!!」
 「うぁーう!!」
 「ほら走るなっての、危ないぞ!!」


 アイトも服を脱ぎ、腰にタオルを巻いて浴室へ。
 素っ裸のミコト達を捕まえ、そのまま洗い場へ向かった。


 「ほら、ミコト」
 「にゃうぅ、シャンプーにがて」
 「アイト、ライラは私が」
 「ルカちゃん、おいで」
 「お、おぉ……」


 ライラはミレイが、ルカはエルが身体を洗う。
 2人は腰にタオルを巻き、上半身は裸だった。
 アイトは視線を逸らし、ミコトに集中する。


 「ミコト、耳を閉じて」
 「にゃお……、ふぁぁ」


 ミコトの長い銀髪を丁寧に洗い、ネコ耳にアワが入らないように優しく洗う。
 そのまま背中を洗い、腕を洗い、シャワーでアワを流した。


 「前は自分で洗えよ」
 「はーい。ごしごし」


 アイトもミコトの隣に座り、身体と頭を洗い始める。
 すると、アイトの背中にスポンジの感触がした。


 「主殿、お背中を」
 「あ、うん……、お願いします」


 思わず振り向くと、アイトの目の前にクナイの乳房が飛び込んできた。
 アイトは勢いよく前を向き、シャワーを冷水にして股間に当てる。
 ミコトは自身の身体を泡まみれにして、ライラに見せていた。


 「見てライラ、あわあわ」
 「わふ、わたしもやるっ」


 ルカは大人しく、エルが全身を泡まみれにしていた。
 どうやらルカは温泉が好きらしい。


 「はいルカちゃん。あわあわ~」
 「あわあわ~♪」


 ルカは少しずつだが、言葉を覚え始めている。
 いい教師がいれば、すぐに覚えるだろう。


 身体を洗いシャワーですすぎ、そのまま全員で湯船に。
 クナイが調合した濁り湯の入浴剤が効いているので、湯船の中は見えない。
 ミコトとライラのお湯の掛け合いを止めさせ、全員でまったり浸かる。
 ルカは仰向けで湯船に漂い、アイトの傍まで来るとそのまま抱きついた。


 「おっと、ははは、きもちいいのか?」
 「きもち、いい」
 「そうだ、気持ちいい。だ」
 「きもちいい、きもちいい」
 「よし、いい子だ」
 「あう~」


 アイトは思う。こんなに笑う少女が、あんなクマのバケモノに変身したのかと。
 再び湯船を漂うルカを見送ると、アイヒが言う。


 「アイト、次の目的地はドコ? そろそろ行くんでしょ?」
 「ああ、次は【伊舎那天イシャーナ】の領土に行って、錬金術師を探す。っていうかアテはある」
 「……すみません。私の腕が足りないばかりに、とんだ無駄足を」
 「アホ、錬金ギルドは町に必要だ。それに、お前が倒れたら全員が悲しむ」
 「………はい」


 クナイは目元を拭い返事をする。


 「じゃあ、誰を連れて行くの?」
 「そうだな……」


 アイヒは一緒に行ったばかりなのでパス、クナイは当然ながらパス、エルも診療所を外せないのでパス、ミレイも飲食店が忙しいのでパス。
 つまり、消去法で……、アイト1人。


 「あたしが行くっ!! 冒険したーいっ!!」
 「あ、わたしもーっ!!」
 「あうぁーっ!!」


 アイトの傍にミコト達が集まるが、アイヒに止められる。


 「ダメ。外は危ないからね」
 「あたしは平気だぞっ、アイトと一緒によく山に登ったし、マッドコングと戦ったこともある」
 「わたしは……、ない」
 「あぅぅ」


 アイトは考える。
 奴隷だったライラ、実験動物扱いだったルカ、そしてアイトと山で鍛えたミコト。
 確かに、ミコトなら問題ない気がするとアイトは思った。


 そして、ミレイたちの意思を確認する。


 「私は……その、もう〔ロゼオ〕のシフトが決まってる……」
 「アタシも帰ってきたばかりだし、服屋の仕事を休むのは……」
 「……申し訳ありません、主殿……」
 「う~ん、私もちょっとなぁ。建設会社の作業員さんたちが、よくケガをするから」


 4人は全員がダメ。
 アイトはミコトたちに聞く。


 「ライラ、今回は悪いけどミコトを連れて行ってもいいか?」
 「くぅん……、わたしは?」
 「悪いけど、ライラは【風天ヴァーユ】の領土に向かうときに一緒に来てもらう。それまでに、多少なり外の世界の知識を付けておいてくれ。ルカはまずは言葉からだな」
 「わふぅぅ……、わかった」
 「あぅぁ……」


 ミコトはガロンやオババから外の知識は付けて貰っている。
 多少なり体術の心得もあるし、ネコのように機敏でもある。


 「にゃあ、じゃああたしが一緒にいくの? いいの?」
 「ああ。久し振りに行くか?」
 「にゃおーん!! 行く、ぜったい行く!!」
 「わふぅ、いいなあ」
 「ごめんねライラ、ルカ、お土産買ってくるね。もちろんシアの分も」


 ミコトはきゅっとライラに抱きつき、ほっぺをペロペロ舐めた。
 ルカにも同じ事をすると、ライラはようやく笑顔になった。


 【伊舎那天イシャーナ】の領土に向かうのは、アイトとミコト。
 錬金術師のヒュドーラの住む、〔大蛇王国ヘッジヴァイパ〕に向かう。




 新たな目的地に胸を躍らせ、アイトはお湯で顔を洗った。
 

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