神様のヒトミ

さとう

98・領主のお仕事④



 アイトはミコト達を連れて領主邸に戻り、暖炉の前で休んでいた。


 暖炉の前に座ると、ミコトが膝にじゃれつき、ルカが背中に寄りかかり、ライラが反対の膝を枕にしてスヤスヤ眠る。
 すると、膝にじゃれついていたミコトが聞いてきた。


 「アイト、おかーさんって……」
 「ん?」
 「……おかーさんって、どんな感じなの?」
 「え、お母さん……?」
 「うん。シア……すごく気持ちよさそうだった」
 「………」


 アイトはミコトのネコ耳を揉み、優しくなでる。
 どう答えようか迷っていると、入口のドアが開いた。


 「あ、ラクシャーサさん」
 「やぁ、アイトくん。話したいことがたくさんあるよ」
 「えーと、あはは······」


 ウルフィーナとギャングを連れて現れたラクシャーサの苦笑に、アイトは引き攣った笑いで返した。
 恐らく、アグニの事だろうと予想は出来た。


 「と、取り敢えず、領主執務室へ」
 「そうだね······」




 ミコトを開放し、アイトは立ち上がった。




 **********




 案の定、アグニのことだった。


 「使者は送るが、どうなるかは分からない。好戦的なアグニのことだ、これを好機に何かしら起こす可能性も無くはない」
 「すみません、勝手なことをして······」
 「いいさ、大事な人を貶されれば誰だって怒る。オレだって家族やシアを貶されれば、アグニだろうと許さない。まぁキミがアグニを降したのは驚いたがね」
 「はは、あの、シアは?」
 「今はリュコスと一緒に客間にいるよ。話すこともたくさんあるしね」
 「そうですか······あの、聞いて良いですか?」
 「······何かな?」


 アイトは、1つの可能性を感じていた。
 聞かずには居られなかった。


 「シアは······連れて帰るんでしょうか」


 今ならアイトにもわかる。
 ラクシャーサがシアを預けた理由は、母親の傍に居られないシアの為に、ミコトやライラがいるこの村に置いたこと。
 少しでも寂しくないように、友達を作らせようとしたこと。


 しかし、リュコスが快気した今、シアがここに居る理由はない。
 ラクシャーサの王国に戻り、母親と過ごす事が出来るだろう。


 「······実は、迷ってる」
 「え?」
 「ウルフィーナから細かな報告を受けたが、シアはこの村に来て本当に変わった。人を寄り付かせない、誰にでも噛み付くようなシアが、あんなにも笑顔になった。これも全てミコトちゃんたちのお陰なのだろうね」
 「それは、俺も思います」




 「だからこそオレは思うんだ。友達がいて、母親がいるこの村······いや、町こそ・・・、シアの幸せがあるんじゃないかってね」




 ラクシャーサは笑顔で言う
 アイトはその言葉の意味を理解する。


 「そ、それって······」
 「ああ。この町にリュコスを移住させてくれないか?」


 アイトは驚いたが、ウルフィーナが反論した。


 「し、しかし‼ フェンリル国に王妃が居ないことになってしまいます‼ 王妃が居ない国など······」
 「心配ない。療養として移住させたことにする。それに、転移クリスタルもあるから何時でも帰ってこれるしね」
 「で、ですが······、リュコス様はフェンリル国の頭脳と呼ばれたお方。業務に支障が出るのでは?」
 「平気さ。リュコスは病に倒れた後も手を打っていた。それに、国には優秀な人材が何人もいる」
 「う······」
 「それに、一番の理由は、シアから友達を奪いたくない。この町でシアには大きく育ってもらいたいから、かな?」


 その言葉にウルフィーナは脱力し、黙っていたギャングは静かに一礼、アイトは笑っていた。


 「·········あれ、そういえばラクシャーサさん」
 「何かな?」
 「さっき、この村を町って言いませんでした?」
 「あぁ、そうそう。ここを正式に町として認可するよ。リュコスの治療とは別に、その件でも来たんだ」




 ラクシャーサは、あっさりと言った。



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