神様のヒトミ

さとう

96・領主のお仕事②



 アイトが向かった先は、冒険者ギルド。
 まずはクロウリーの話を聞く。


 「こんにちは~」 


 のんきな声でギルド内へ入り、受付へ。


 「あ、領主様。こんにちは、ギルド長にご用事ですか?」
 「はい。ちょっと大事な話が」
 「ほう? 大事な話とな?」
 「ええ、実は······って、また背後に⁉」


 クロウリーはアイトの後ろにすでにいた。


 「かっかっか、修行が足りんぞ小僧。もっと精進せい」
 「うぐぐ。は〜い」
 「で、用事とは?」


 ここでようやく本題に。


 「実は、錬金術師のことなんです。クナイ1人で精製してる現状を何とかしたいんです」 
 「なるほど、ポーションの件か。確かに、クナイの嬢ちゃんだけじゃ賄いきれん。というか足りんな」
 「はい。そこでクロウリーさんの知り合いに、錬金術師が居ると聞いて」
 「なるほど。居ることは居るが、あの偏屈ババァと一緒に仕事はのぅ······」
 「お願いしますよ、クロウリーさん。村のピンチなんです」
 「むむぅ。······仕方ないのう」


 クロウリーは受付で羊皮紙を1枚貰うと、サラサラと何かを書く。
 羊皮紙を折り畳み、封筒に入れて封をすると、アイトに手渡した。


 「〔大蛇王国ヘッジヴァイパ〕に住んでるヒュドーラと言うババァを訪ねろ。この手紙を見せれば信用されるはずじゃ。それと、ラピスの知り合いでもあるから、彼女に話を聞いていけ」
 「おぉ、ありがとうございます」


 手紙を大事に仕舞い、アイトは一礼する。


 「ま、引退してヒマしとるだろうから、誘えば来るじゃろうな。あぁ見えて腕は確かな錬金術師じゃし、村の助けにはなるじゃろうて」
 「いやー助かります。今度お礼しますね」
 「······なら、1つ頼みがあるんじゃよ」
 「はい? 何でしょう?」


 クロウリーに引きずられ、アイトはギルドの端へ移動する。
 そのまま周囲を確認し、クロウリーは小声で言った。


 「······なぁ、村に娼館を造る許可を出してくれんかの?」
 「······は?」


 アイトは耳を疑った。


 「領主の許可が無くては経営が出来ん。実はな、経営準備は整っておるらしくての、あとはお主の許可だけなんじゃ」
 「······」
 「くくく、器量はもちろん技量もよしの優良物件が大量じゃ。どうかの?」
 「······はぁ」




 アイトはため息をつき、ギルドを後にした。




 **********




 アイトは、ラピスの酒場へやって来た。
 まだ準備中らしく、closeの札が掛かっている。


 アイトは裏口に回り、ドアをノックした。


 「あの、ラピスさん居ますか〜?」


 反応がない。
 アイトは控えめにもう一度ノックするが、やはり反応はない。
 仕方なく出直そうとしたとき、ゆっくりとドアが開いた。


 「······はい、あら? アイト」
 「あ、寝てたんですか、すみませんって、ちょ」


 寝間着なのか、薄いネグリジェを着たラピスは無防備で、肩紐がずり落ちかけていた。
 眠そうに開かれた目に、スタイル抜群の肢体、そしてずり落ちかけてるネグリジェ。
 アイトは視線を彷徨わせたが、ラピスはクスリと笑う。


 「ゴメンナサイね? すぐに着替えるから、中で待っててくれる?」
 「は、はい。その」
 「ふふ」


 アイトは裏口から、ラピスの自宅スペースへ向かう。
 簡易キッチンに椅子テーブル、そしてドアの向こうは寝室と、かなりシンプルな作りだった。
 アイトは椅子に座ると、寝室からラピスが出て来た。


 「お茶を淹れるから待っててね」 
 「お、お構いなくです」


 シンプルな無地のカップに紅茶が注がれ、ラピスはアイトの反対側に座ると、いきなり切り出す。


 「それで、用事って何かしら?」
 「えと、その、錬金術師のヒュドーラさんのことなんですけど」
 「ヒュドーラお婆様? 懐かしい名前ねぇ。もしかしてポーション不足の件かしら?」
 「あ、知ってたんですね」
 「ええ。お店に来る冒険者さんたちが言ってたのよ。ポーションの質は素晴らしいけど、数が足りないってね」
 「仰る通りで。それで、クロウリーさんに紹介状を書いてもらったんですけど、来てくれますかね?」
 「そうねぇ、もう100年近く会ってないけど······。そうだ、一度連れて来てくれない? 紹介状だけで不十分なら、私が説得してあげる」


 アイトが転移魔術を使えることは、ラピス以外にも知れ渡っている。
 特に隠し事をしているわけではないが。


 「わかりました。とりあえず一度、会いに行ってみます」




 アイトは紅茶を飲み干し、ラピスの家を後にした。
 

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